ニュース
» 2010年12月21日 08時00分 UPDATE

会社を強くする経営者のためのセキュリティ講座:第8回 Winnyによる情報漏えいのその後――経営者が考えるべき対策 (1/2)

年末年始の休暇はWinnyなどP2Pソフトによる情報漏えいのリスクが高まります。今回は年末年始における注意喚起として、経営者が考えるべき「P2P対策」を解説します。

[萩原栄幸,ITmedia]

「私、学校に行けないの……」

 知り合いの依頼を受けて情報漏えいの調査を行うことがあります。従業員の自宅に出向き、PCなどの状況を調べるという具合です。今回は、その調査の後で私がつらい思いを経験した出来事から紹介しましょう。

 この事件は、30代後半になる従業員が自宅でWinnyを利用しており、自宅に持ち帰った社内資料をWinny経由でインターネットに流出させたというものでした。私は、知人であるその会社の経営者から依頼を受けて作業を行い、流出の証拠を収集して帰宅しました。その時、その被疑者である従業員の自宅に私物を忘れてしまったのです。知人の了解も得て、その5日後に顧問弁護士と彼の自宅を訪問することにしました。

 当日は予定の時間より早めに到着しました。「私物を受け取るだけだから」と、私が顧問弁護士の到着を待たずに玄関でブザーを鳴らすと、夫人がやつれた表情で応対に出られました。私はその様子を見て、「しまった! もっと気を配るべきだった」と内心後悔しました。応接間で私物を受け取ると、私はどうにも居心地が悪く、顧問弁護士が到着する前に帰ろうと考えました。

 その時、柱の陰に隠れていた小学生の女の子が私の前に現れ、「学校に行けないの。何も悪いことしていないのに学校に行けないの。おじさんのせいなの?」と涙をいっぱいに浮かべながら話したのです。その言葉を聞いて、私は居たたまれない感情でいっぱいになってしまいました。夫人が泣きながら「お客様に失礼よ、謝りなさい」と叱ったものの、彼女はじっと私の顔を見つめていました。

 顧問弁護士が到着するまで、事件後のことを伺うことになりました。家族がこのようになってしまったのは、その事件が新聞に掲載されてしまったことが原因だと言います。通常、情報漏えい事件では新聞に氏名が掲載されるケースはあまりありません。しかし、この事件は漏えいした文書から横領事件の疑いがあるとして刑事事件に発展し、従業員の氏名が掲載されてしまいました。

 私が調査をした数日後に、従業員の家族はさらに深い闇へと落とされたのです。夫人は買い物に出かけるだけでも周囲の注目を浴びることになり、子供は学校で「いじめ」の対象になってしまいました。いじめがあまりにもひどく、学校側との相談で当面の間(家族は引っ越しを決めていました)は他の学区に通学することを決めたばかりだといいます。子供にも夫人にも何も罪はありません。それでも周囲の無責任な人間は、「あの子と話してはダメよ」「あいつの家は犯罪者だ」というレッテルを貼ったのです。実に不快なことです。

 Winnyなどの利用は非常に危険だと社会で問題視されながらも、「自分だけは大丈夫」と考え、平然と使い続ける人間がいます。もし情報漏えいを起こし、身内がつらい目に遭ったら本人はどのように感じるのでしょうか。「覆水盆に返らず」ということわざもあります。

 情報漏えいによって、従業員とその関係者が悲惨な状況に遭わないようにするためにも、また、会社の信用問題に発展させないためにも、経営者は事件を未然に防止することに注力していただきたいと思います。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -