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» 2011年01月31日 08時55分 UPDATE

リーダーシップと実現力:自分の役割を楽しもう――シスコ流のコミュニケーション実践術 (1/2)

個人の目標と組織の目標が“シンクロ”すれば仕事に対する意欲は高まる。理想的だが、現実にはなかなか難しい。シスコの平井康文社長は、チームと個人の関わりが明確になった目標達成型の組織づくりに挑む。

[聞き手:國谷武史,ITmedia]

 どんなに過酷な挑戦でも、目標と一致すれば、個人の能力はいかんなく発揮される――そのような個人の集合体である組織を作ることがリーダーの役割だとされる。だが、育った環境も文化も異なるさまざまな人間が集まる組織で、個人の目標と組織の目標を一致させることは簡単ではないだろう。2010年8月にシスコシステムズ社長に就任した平井康文氏は、徹底したコミュニケーションの実践でこの難題に挑んでいる。

日本発のコミュニケーション術

―― これまで日本IBMやマイクロソフトで数多くのリーダーとビジネスを手掛けてきたと思いますが、その経験からリーダーシップとはどのようなものだと考えていますか。

平井 企業の規模や事業の中身に関係なく、組織として価値観を共有すること、これに尽きると思います。価値観には、「顧客価値」や「株主価値」「シチズンシップ(企業市民)」といったさまざまなものが挙げられますが、このような価値観を社員と共有できるようにすることがリーダーシップです。言い換えれば、リーダーの仕事とは「人づくり」そのものですね。

 今シスコでは経営品質の向上に取り組んでいますが、「すべては個人と組織の能力開発に帰属する」と考えています。個人と組織が価値観を共有できるようにするには、徹底的に対話を積み重ねて、お互いが心の底のレベルで自分と相手の考えを理解する必要があります。

 新しい目標や方針、戦略を社員に伝える際に文章で示すことがよくありますが、これは一方通行の通知や通達でしかありません。価値観を共有するには、文章の行間を埋めるコミュニケーションを経営陣とマネジャー、社員といったあらゆるレイヤで徹底しないといけない。自分の考えを文章にするだけでなく、その文章を自分の言葉で発信することで、ようやく相手は自分の考えの70%を理解してくれるといわれます。できれば、ひざとひざとを向かい合わせてできると良いですね。

―― コミュニケーションにはいろいろな形がありますが、シスコではどのような形を実践していますか。

 最も力をいれているのがビデオです。年頭に私を含めた経営陣から各部のマネジャーまで登場するビデオメッセージを社内ポータルに公開しましたが、ここでは組織や各自の目標を英語で語ってもらいました。

 シスコでは「V(Vision)・S(Strategy)・E(Execution)・M(Measure)」というフレームワークを使用しています。会社や組織としての方向性を定義し、そのための戦略の立案し、戦略を実行し、効果を測定するというもので、1年の取り組みがA4用紙1枚にまとめられて、本社から私に、私から執行役員に、執行役員から事業部長に、事業部長から各チームリーダーにという流れで伝達されます。会社の目標が1つのラインできれいに伝達されるように見えますが、紙にまとめられた文字だけを読んでも、心の底から完全に理解できるわけではありません。

 そこで、各人が抱いている目標や戦略を自らの言葉で語ってもらい、それをビデオメッセージにしました。照れくささから何度も撮影をし直す人や、コスチュームを着ておどけたりする人もいましたね。撮影作業にはかなりの時間と労力をかけましたが、紙だけで伝えることから1歩踏み出して、自分の考えを自分のスタイルで相手に伝えていこうという意識が高まったと思います。

ciscoint01.jpg 「人材」を「人財」に変えることがリーダーの役割。一歩間違うと「人在」(居座るだけの人間)や「人罪」(迷惑な人間)になってしまう――平井康文氏

 例えば、定期健診などのメッセージはメールで十分ですが、方針や戦略といった非常に重要なものは、それを発信する人間の表情や仕草、話し方の1つ1つが相手により共感される形で伝わる手段でないといけません。ビデオメッセージを通じて、自らの言葉で語ることが価値観の共有に大きな効果を上げますし、メッセージを見た相手から本人にフィードバックがある点も重要です。

―― とてもユニークな試みですね。米国やほかの拠点でも取り組まれているのですか。

平井 部長一人ひとりがビデオメッセージを発信しているのは、実は日本だけですよ(笑)。

 現代のようにビジネスの環境が次から次へと変わるような状況では、視覚的なコミュニケーション手段を持っていないと組織としての価値観の共有が非常に難しいですね。日本人同士であれば「阿吽(あうん)の呼吸」が美徳とされますが、国籍も文化も多様な人間が集まるところでそうしてしまうと、お互いに理解したつもりでいても、実は全然違っていたということがあります。ビデオメッセージのような手段を活用することで、文字以上にコミットメントやビジョンを相手に伝えることができるでしょう。

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