ガートナー ジャパンとIDC Japanが、2012年以降のIT市場のトレンド予測をそれぞれ発表した。そこから見えてくるものは――。
まずは、ガートナー ジャパンが12月14日に発表したレポート「Gartner Predicts 2012」を見てみよう。同レポートは米GartnerがグローバルIT市場における2012年以降のトレンドを予測したもので、以下の11項目が挙げられている。
1. 2015年までに、低コストのクラウドサービスがアウトソーシング大手企業の収益の最大15%まで食い込む
2. 2013年には消費者向けソーシャルネットワークへの投資バブルが、2014年にはエンタープライズ・ソーシャル・ソフトウェア・ベンダーへの投資バブルがはじける
3. 2016年までに、企業における電子メールユーザーの少なくとも半数が、デスクトップクライアントではなくブラウザやタブレット、モバイルクライアントを利用するようになる
4. 2015年までに、スマートフォンとタブレットをターゲットにしたモバイルアプリケーションの開発プロジェクトがネイティブPCプロジェクトを上回り、その比率は4対1になる
5. 2016年までに、企業の40%が全てのタイプのクラウドサービスの利用に際し、独立した機関によるセキュリティテストの結果をクラウド選定条件にする
6. 2016年末には、Global 1000企業の半数以上が顧客に関する機密データをパブリッククラウドに格納するようになる
7. 2015年までに、ほとんどの企業においてIT支出の35%がIT部門の予算枠外で管理されるようになる
8. 2014年までに、米国で消費されているアジア調達の完成品およびアセンブリの20%が、北米・中南米にシフトする
9. 2016年までに、新たな脆弱性を狙ったサイバー犯罪により、経済的損失は年間10%の割合で増加する
10. 2015年までに、80%のクラウドサービスの価格にグローバル燃料サーチャージが含まれるようになる
11. 2015年までを通じ、Fortune 500企業の85%以上が、ビッグデータを競合優位性確保のために効果的に活用することに失敗する
その上でGartnerでは、企業におけるITのコンシューマ化やクラウド化が、IT投資の仕方やIT部門の役割を変えていくとし、その変化にどう対応するかが大きな課題になる、としている。
11項目の中で筆者が気になったのは、警告ともいえる2と11。2については市場の競争激化で淘汰が始まるとし、11については技術面と管理面の両方においてビッグデータを効果的に活用するにはまだ時間がかかるのではないか、というのが、それぞれの根拠のようだ。
一方、IDC Japanが12月15日に発表したのは、2012年の国内IT市場に関するトレンド予測である。以下の10項目が挙げられている。
1. 国内IT市場は復興財政支出政策の影響を受け、スマートフォン、ITサービス、ソフトウェアが市場を押し上げる
2. 国内クライアント市場は「マルチデバイス」時代に入り、モバイルデバイスが国内IT市場の成長をけん引し続ける
3. クラウドサービスがITのモダン化を加速させ、「モダンPaaS」を創生する
4. ハイブリッドクラウド時代を迎え、クラウドサービス向けIT市場のフレームワークが形成される
5. 事業継続/災害対策ソリューションは仮想化技術の進展とクラウドサービスの成熟によって再構築が進む
6. モバイルデバイス、3.9G/LTEサービスの早期展開によって、通信事業者によるネットワークインフラ市場が活性化する
7. 2012年はビッグデータ活用型アナリティクスビジネスのリーダーの座をかけた競争のスタートダッシュの年になる
8. 国内企業の海外ITシステム構築・運用をめぐる国内/グローバル/オフショアベンダー間の競争が激化する
9. センサーネットからインターネットに接続する「スマートデバイス」が増え、デバイスの「ソーシャル化現象」が起きる
10. 次世代の最初の10万のスマートシティソリューションは「第3のITプラットフォーム」上に構築される
IDC Japanによると、ITのプラットフォームには過去2回の大変革があったとし、メインフレームおよびPCの登場が過去2回を指すとしている。そして、2012年にはモビリティ、クラウド、ソーシャルネットワーク、ビッグデータアナリティクスが新たに「第3」のITプラットフォームとして台頭し、今後25〜30年にわたる企業の成長の柱になると予測している。
今回ご紹介したガートナー ジャパンとIDC Japanの予測については、両社とも各項目についてさらに詳しい説明を行っているので、ご興味のある方は両社のサイトに掲載されているレポートをご覧いただきたい。
ちなみに、毎週連載の本コラムの内容を通じても2012年のITトレンド予測としてキーワードだけピックアップしてみようと、今年後半(7月以降)に掲載された25回分のタイトルと中見出しから、登場回数の多い言葉を挙げてみた。
結果、クラウド関連が12回、スマートフォンなどのモビリティ関連が11回、バックアップやサイバー攻撃などのセキュリティ関連が10回だった。ただ、11月以降、ソーシャルメディア(3回)、ビッグデータ(2回)も登場するようになり、今後一層増えてくる予感がある。
「サイバー攻撃にどう立ち向かうか」(10月31日掲載)、「スマートフォンがもたらす音声の復活」(11月21日掲載)、「スマートデバイスとソーシャルメディアの融合がもたらすビジネスの進化」(11月28日掲載)などが、最近の本コラムではトレンド予測の参考にしていただけるかと思うので、関連記事に記しておく。
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