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» 2012年01月10日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:スマートフォンがもたらす通信危機

スマートフォンの急速な普及に伴う通信量の急増で、回線不足への懸念が強まっている。果たしてスマートフォンがもたらす通信危機は乗り越えられるのか。

[松岡功,ITmedia]

業務利用も着実に広がるスマートフォン

 昨年来、急速に普及しつつあるスマートフォン。その勢いは今後も加速しそうだ。MM総研の予測によると、2011年度の国内スマートフォン出荷台数は1986万台に達し、全携帯電話出荷台数の49%を占めるまでになる。そして2015年度には3000万台と74%に急拡大する見通しという。

 また、国内の携帯電話契約に占めるスマートフォン比率でみると、2010年度末の8.8%から、2015年度末には57.1%まで急拡大する見通しという。

 携帯電話の通信事業者最大手であるNTTドコモでは、2012年度は年間40機種程度投入する新製品の8〜9割をスマートフォンにする計画のようだ。こうなると、普及にさらに勢いがつくのは必然だろう。

 こうした状況から、最近発表されたスマートフォンの利用動向調査にも注目が集まっている。IDC Japanが先頃発表した企業での導入実態調査の結果を紹介しておくと、14.6%がすでに導入済みで、31.2%が導入に前向きだという。

 スマートフォンを導入した企業の18.6%は、企業内の基幹システムと連携したアプリケーションを活用できるモバイルソリューションをすでに導入しており、これは回答した企業全体の2.7%にあたる。スマートフォンを導入した企業がモバイルソリューションの導入を考えている比率は41.2%に達し、全体の6.0%にあたるとしている。

 また、これからスマートフォンおよびモバイルソリューションを導入しようと考えている企業が全体の21.2%に達していることから、これらを合わせると、モバイルソリューションは全体の29.9%まで広がるビジネス機会があるとしている。

 IDC Japanによると、「スマートフォンを導入した企業は、平均すると4人に1人の割合で支給しているが、2010年から比べると80%以上の社員に支給していると回答した企業の比率が上がっている」という。つまりは、外勤者や特定の部門だけでなく、全社的にスマートフォンを導入する動きも起こり始めているということだろう。

 ただ、こうしたスマートフォンの急速な普及に伴って、通信業界を揺るがす深刻な問題が浮かび上がってきている。通信量の急増で回線不足への懸念がここにきて一気に強まっているのだ。まさしくスマートフォンがもたらす通信危機が、目の前に迫ってきているのである。

2014年に回線がオーバーフローする可能性も

 スマートフォンはパソコンと同じように、ネット経由で画像や動画を見たり、ゲームを楽しんだりできるが、大量のデータを扱う結果、通信量は従来型携帯電話の10倍以上にもなる。通信危機が懸念されるのは、そんなスマートフォンの急速な普及に回線をはじめとした通信インフラの対応が追いつかない可能性があるからだ。

 総務省の調べでは、昨年9月の国内の移動体通信のデータ量は5万テラバイトと、一昨年と比べて2倍になった。今後もスマートフォンの急速な普及などで加速度的に増大し、2015年度のデータ通信量は2011年度の10〜12倍に達するとみられている。

 スマートフォンの急速な普及に伴う通信トラブルは、すでに起こり始めている。年末年始にNTTドコモのスマートフォンで、誤ったアドレスでメールが届いたり必要なメールを送れなかったりした通信トラブルが多発したのは、まさに象徴的な出来事といえる。

 もちろん、通信業界もさまざまな対策を講じている。携帯電話の通信事業者はこぞって2012年度の設備投資を拡大し、高速基地局や基幹通信網の増強を急ぐ構えだ。また、高速大容量通信サービス「LTE」への移行や、総務省が今年割り当てる新たな周波数帯の確保も大きな焦点になる。さらに通信機メーカー大手も、通信網を大容量化する技術の実用化を急いでいる。

 だが、予断は禁物だ。携帯電話の通信事業者の首脳が先頃行った講演で、こんな窮状を訴えていた。

 「スマートフォンのデータ利用量は従来の携帯電話の10倍だが、収入は30%しか増えず、設備投資をカバーするのは難しい。現在すでにトラフィックの60%以上がスマートフォンで占められている。LTEを考慮に入れたとしても、このままでは早ければ2014年にもオーバーフローを起こしてしまいかねない」

 この発言は、まさしくスマートフォンがもたらす通信危機への警鐘である。

 最後に、この問題における筆者の個人的な意見も添えておきたい。通信業界には危機打開に懸命に取り組んでいただくとして、この現象は、ひいてはエネルギー対策をはじめ、さまざまな社会問題とも関係していく出来事だと考える。

 物理的なものが足りなくなる可能性がある中で、技術でそれを乗り越えようというだけでいいのか。自戒も込めていえば、ネット上には、くだらない情報も少なくない。もちろん、表現の自由を損ねてはいけないし、強制的な規制があってはならない。しかし、節電と同様に、情報を発信する際のモラルについても、良い加減をもって醸成していけないものか。そんな視点も持ち続けておきたい。

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