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» 2012年03月12日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:最新調査にみる企業のBCP対応の実態

東日本大震災から1年。企業にとっては、事業やITの継続性に対する取り組みが改めて問われた1年でもあった。最近発表された2つの調査からその実態を探ってみる。

[松岡功,ITmedia]

半数以上の企業がBCPを未整備

 まず1つ目は、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が2月22日に発表したユーザー企業におけるBCP(事業継続計画)の策定状況の調査結果から。調査期間は2011年10月下旬から11月下旬にかけて行われ、調査全体として約1000社から有効回答を得たという。

 それによると、東日本大震災で直接または間接の被害があり、自然災害に対するBCPを策定している企業(有効回答411社)にBCPが機能したかどうかを聞いたところ、「十分機能した」が11.7%、「おおむね機能したが、問題があった」が54.7%、「ほとんど機能しなかった」が33.6%となった。

 この結果は、7割弱(66.4%)の企業では何らかの形でBCPの効果があったとみられる一方で、9割弱(88.3%)の企業ではBCPに何らかの問題を抱えており見直しが求められている、ともいえる。

 実際のところ、ユーザー企業のどの程度の割合がBCPを策定しているのか。また、どういったリスクを想定しているのか。それを表したのが下の図である。

想定されるリスク別にみたBCPの策定状況(出典:日本情報システム・ユーザー協会) 想定されるリスク別にみたBCPの策定状況(出典:日本情報システム・ユーザー協会)

 図からも分かる通り、半数以上の企業でBCPを策定していないことが明らかになった。「策定済み」の割合が最も高いのは「システム障害」を想定したBCP。それでも「策定済み」の割合は半数を下回る46.2%で、「策定中」(15.0%)を加えてやっと半数を超える状況だ。「策定予定なし」という企業も23.1%ある。

 自然災害に関連するBCPの策定割合は、システム障害をやや下回る。「策定済み」の割合をみると、「自然災害(直下型地震による局所被害)」が37.1%、「自然災害(大規模地震による広域被害)」が33.6%だった。いずれも「策定中」を加えて約半数といったところだ。

 想定されるリスクは自然災害だけではない。2011年は「ターゲット攻撃」のようなサイバー攻撃もクローズアップされた。しかし、それらを想定したBCPの策定はほとんど進んでいないようだ。「風評被害(Webサーバへのアクセス集中など)」や「テロ、サイバーテロ」のリスクを想定したBCPを「策定済み」の割合はいずれも1割強にとどまった。

 IT部門がBCPを策定または見直す場合のポイントは何か。下の図が調査結果である。

BCPの策定・見直しのポイント(出典:日本情報システム・ユーザー協会) BCPの策定・見直しのポイント(出典:日本情報システム・ユーザー協会)

 最大のポイントは「外部データセンターの活用」で、「導入済み」がおよそ4割(39.7%)となった。「導入済み」の割合が高い順にみると、これに「ネットワークの多重化」「自家発電設備の設置または増設」「バックアップセンターの準備」が続いた。

 また、導入は進んでいないものの「検討中」の割合が最も高かったのは「クラウド・コンピューティングへの転換」で、38.0%が「検討中」と回答した。これは今後、BCPにおけるクラウドの活用が広まる可能性を示したものといえそうだ。

危ういデータセンターの首都圏集中

 そして2つ目は、IDC Japanが2月21日に発表した国内データセンターアウトソーシング市場の地域別予測から。それによると、関東地方にあるデータセンターの2011年の割合は、国内市場の72.3%(金額ベースで4582億円)に達し、東京都23区内で34.5%を占めることが分かった。

 ユーザー企業のサーバをデータセンターで監視・運用するデータセンターアウトソーシングには、サーバの設置場所を貸し出す「コロケーション」と、データセンター事業者が所有するサーバをユーザー企業に提供する「ホスティング」があるが、この調査はコロケーション市場を対象にしたものだ。

 大規模なデータセンターは、東京都23区内を中心とした関東地方に数多く存在しているため、国内市場における関東地方の割合が高くなっている。また東京都23区内には、サイト運営やネット通販などの企業の本社が数多く存在しており、これらの企業が自社に近いデータセンターを大規模に利用していることも、東京周辺のデータセンターの割合が高い理由となっている。

 IDCによると、東日本大震災後に首都圏で電力供給事情が悪化したことで、首都圏以外のデータセンターを利用することへの関心が高まっているが、大規模データセンターの新設は依然として首都圏内で継続しており、首都圏のデータセンター市場の成長率は高い水準が続くとみている。

 とくに東京都23区の外側での大規模データセンター新設が相次ぐ2012年から2013年には、同エリアの割合が拡大すると予測。関東地方のデータセンターの市場規模は、2011年から2015年まで年間平均成長率4.6%で拡大するとみている(下図参照)。

国内コロケーション市場のデータセンター所在地別売上額予測:2010〜2015年(出典:IDC Japan) 国内コロケーション市場のデータセンター所在地別売上額予測:2010〜2015年(出典:IDC Japan)

 業界関係者によると、データセンターは郊外での開設が増える一方で、東日本大震災に伴いBCPの観点から中枢オフィスの徒歩圏といった至近の立地も見直されているという。

 例えば、東京・大手町。地価が高いデメリットもあるが、大手通信事業者などの中核拠点が集まっていることもあって通信回線の選択肢が多く、高速で安定した回線が使える。都市近郊のデータセンターに比べると利用料金は割高だが、国内の大手企業の本社などが集中する日本の中枢であり、他の地域に比べて電力の安定供給も望めるという。

 とはいえ、関東地方、さらには東京都23区内にこれだけデータセンターが集中すると、やはり危なっかしい気がする。もし首都圏直下型地震が起きた場合、BCPが機能する状況にあるのか。先に紹介したJUASの調査結果と照らし合わせると、何とも心許ない気がしてならない。改めて万全の対策を求めたい。

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