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» 2012年08月13日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:Googleが描くエンタープライズ事業戦略の勘所

Googleがエンタープライズ事業に一段と注力し始めた。その戦略の勘所はどこにあるのか。同社日本法人の同事業責任者に聞いた。

[松岡功,ITmedia]

エンタープライズ事業で収益モデル転換へ

 米Googleがここにきてエンタープライズ事業を一段と強化している。6月28日に米国で開催した年次開発者会議「Google I/O 2012」では、IaaSモデルのクラウドサービス「Google Compute Engine」や地理空間情報(GEO)ソリューションの強化などを発表した。

 その後、7月に日本の3都市(東京、大阪、名古屋)で開催した法人顧客向けの「Google Atmosphere on Tour」でも、米国で発表した新サービスの説明や各種サービスの活用事例などを盛りだくさんに披露した。

 Googleのエンタープライズ事業は当初、検索機能を企業向けに提供した「Enterprise Search」から始まった。ただ、同事業が本格的に動き出したのは、2004年(日本では2007年2月)にSaaSモデルの「Google Apps for Business」(以下、Google Apps)を提供開始してからだ。同サービスの全世界での導入実績は現在、500万社、5000万ユーザーに上るという。

グーグルの阿部伸一エンタープライズ部門マネージングディレクター グーグルの阿部伸一エンタープライズ部門マネージングディレクター

 こうしたエンタープライズ事業をさらに加速させようと、ここにきてGoogleは一気にギアチェンジしたようだ。その戦略の勘所はどこにあるのか。先週、Google日本法人であるグーグルのエンタープライズ事業を統括する阿部伸一エンタープライズ部門マネージングディレクターに取材する機会を得たので聞いてみた。同氏はまずGoogleのエンタープライズ事業についてこう表現してみせた。

 「Googleのエンタープライズ事業を端的にいうと、これまでコンシューマー向けに提供してきたGoogleの各種サービスを、業務にも使っていただけるように必要な機能を強化して提供していこうというものだ」

 さらに、「収益モデルの観点から、現状として収益の大半を占める広告モデルだけでなく、企業へサービスを提供することで対価を得る、いわゆるB2Bモデルをしっかりと構築していくのがエンタープライズ事業の使命だ」とも語った。

 すなわち、Googleにとってエンタープライズ事業を強化することは、収益モデルの転換につながるわけだ。同社の直近の四半期(2012年度第2四半期:4-6月期)決算をみると、広告以外の収入は前期比42%増との高伸長したものの、全体の比率では4%とまだまだ小さい。この比率をいかに拡大するか。経営的にはここに戦略の肝があるようだ。

企業システムのコンシューマー化を先導

 では、そうした経営上の目論見を果たすために、具体的にこれからどのように事業を強化していくのか。阿部氏は日本市場での戦略展開を踏まえてこう語った。

 「当社のエンタープライズ事業はもともと、Google Apps、Enterprise Search、GEOの3分野を柱として展開してきたが、ここにきて新たにCloud PlatformおよびChrome Deviceにも本格的に力を入れている。Cloud PlatformはIaaSとPaaSの領域でGoogleが持つ技術やリソースを企業のお客様に利用していただけるようにしたサービス。また、Chrome DeviceはGoogleの各種サービスをChromeブラウザ環境において最適化した形で業務に利用できるデバイスを提供するものだ」

 Googleはかねて、外部の開発者などにアプリケーションやWebサイトの構築、データの保存や分析に同社のクラウド環境を活用できるように、PaaSモデルの「Google App Engine」、ストレージサービス「Google Cloud Storage」、データ分析サービス「Google BigQuery」などを提供してきた。

 Cloud Platformはこれらに加え、先に紹介したGoogle Compute Engine、GEOの一部、さらにはGoogleがこれまで自社開発してきた各種APIなどをプラットフォーム用サービスとして整備し、提供するものだという。

 阿部氏によると、このCloud Platformは、Amazon Web Services(AWS)が提供するサービスとは対極にあると強調する。なぜならば、「IaaSの領域だけをみれば競合する部分もあるが、Cloud PlatformではGoogleが培ってきた技術やリソースを利用して、お客様がそれぞれの用途に合わせて最適で利便性の高い仕組みを迅速に構築していただけるように配慮している。その豊富なリソースと使いやすさが差別化ポイントになる」としている。

 このCloud PlatformとChrome Deviceについては、欧米に続いて日本でも順次サービスを整備していく構えだが、もう1つ、阿部氏は近々日本で発表する予定として、Google Appsの機能強化を挙げた。詳細は聞けなかったが、どうやら目玉となるのは、セキュリティを中心としたソーシャルメディア対応への強化のようだ。ちなみにSNSについては、Googleは自前の「Google+」を前面に押し出しているが、例えばFacebookとの連携については協業パートナーが対応しており、すでにその実績もあるようだ。

 Google Appsのソーシャルメディアへの対応強化と聞いて、以前、ある有識者からこんな話を聞いたのを思い出した。

 「企業は今後、社外活動においても社内業務においてもソーシャルメディアを活用することによって、『企業システムのコンシューマー化』が進んでいくのではないか」

 それ以来、企業システムのコンシューマー化については、あちこちで最新のトレンドとして聞くようになった。考えてみると、阿部氏が最初に語った「これまでコンシューマー向けに提供してきたGoogleの各種サービスを業務にも使っていただけるように」という方向は、まさしく企業システムのコンシューマー化ではないか。とすれば、Googleはそれを見越して、ここにきてエンタープライズ事業を大幅に強化しているように見て取れる。

 阿部氏は取材の中で「ゲームチェンジ」という言葉を何度も使った。クラウド化もそれに当てはまるだろうが、企業システムのコンシューマー化はエンタープライズ事業を展開するベンダーのゲームチェンジに直結するだろう。それこそ事業戦略の勘所ではないか。Googleはそのゲームチェンジを虎視眈々と狙っている。

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