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» 2012年10月15日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:オピニオンリーダーが示すクラウドの実態と行方

日本HPが先週、クラウドに関する説明会を開いた。そこで出た話をもとに、クラウドコンピューティングの実態と行方について考察したい。

[松岡功,ITmedia]

日本HPの小出社長が語ったクラウドの実態

 「クラウドをめぐる市場競争は、日本でもいよいよ“空中戦”から“地上戦”に入った」

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の小出伸一社長は10月9日、同社が開いたクラウド事業戦略に関する説明会で、最近の顧客とのやりとりからこう実感していると語った。しかし、一方で顧客はクラウドについて、次のような悩みも抱えていると指摘した。

 会見に臨む日本HPの小出伸一社長 会見に臨む日本HPの小出伸一社長

 小出氏がまず挙げたのは、「お客様の7割はクラウド利用のメリットを理解しているが、そのうちの7割はリスクも強く感じている」という点だ。リスクとは、自社の重要なデータを外部に出すことにおけるコンプライアンスの観点をはじめ、セキュリティ対策、ベンダーロックインの危険性などが挙げられるという。

 また、「コントロールできない“サイロクラウド”が出現するようになってきた」とも。これはさまざまなパブリッククラウドサービスを、個々のエンドユーザー部門が独自に導入してしまうことで起こるという。そうなると、「かつてクライアント/サーバシステムがエンドユーザー部門にどんどん入り込んだ結果、さまざまなサーバが散在してしまい、システム全体を把握できなくなったケースがよく見受けられた。クラウドでもそれと同様のことが起こり得る」というのが小出氏の見解だ。

 そして、そうなった場合、「全社的なITガバナンスが効かなくなってしまう」と心配顔の顧客が少なくないという。これをして小出氏は、「市場競争が本格化してきた一方で、こうしたお客様の悩みを払拭できていないところがあるのもクラウドの実態だ」との認識を示した。

 こうした現状を打開するため、HPは今春から「HP Converged Cloud」と呼ぶソリューションを打ち出している。これは、プライベートクラウド、パブリッククラウド、マネージドクラウド、そしてオンプレミスのシステムを適材適所で選択肢ながら、オープンなアーキテクチャに基づくクラウド環境を構築・運用できるようにするものだ。しかも、そうした異なる環境に対して統合的な管理およびセキュリティ機能を提供するとしている。

 日本HPの説明会における詳しい内容は、すでに報道されているので関連記事等をご覧いただくとして、ここからは小出氏が示したクラウドの実態、およびHP Converged Cloudに関連する話題を2つ取り上げておきたい。

進化するコンピューティング環境の行方

 小出氏によるクラウドの実態の話を聞いて頭に思い浮かんだのは、ガートナージャパンが先頃発表した「日本におけるテクノロジーのパイプサイクル2012」での「クラウドコンピューティング」のポジションである。パイプサイクルは、ガートナーが先進のテクノロジーにおける普及過程を独自の視点で明示したもので、それによるとクラウドは「過度な期待のピーク期」から「幻滅期」に移行したところだという。

 ガートナーではクラウドについて、「多くのユーザーは未だ基本の確認を続けている状態で、幻滅期においてはユーザーが冷静な判断を行い、本物と偽物が区別されることになる。中長期的には本物が生き残り、安定成長に向かう」と分析している。

 表現は異なるものの、示唆しているメッセージは小出氏の発言と同質のものを感じた。

 一方、HP Converged Cloudのコンセプトに関連して頭に思い浮かんだのは、かつて次世代コンピューティング環境について聞いた話だ。通産省時代の「前川レポート」で知られる前川徹サイバー大学IT総合学部教授が講演で語っていた話だが、非常に興味深い内容なので、以前にも一度取り上げたが、あらためて紹介しておきたい。

 前川氏によると、コンピューティング環境の進化は今、「第4の波」を迎えているという。第1はメインフレーム、第2はパソコン、第3はWebを中心としたインターネット、そして第4はクラウドという変遷だ。クラウドは2008年頃から波が起こり始めたとしている。

 最も興味深いのが、その4つの波を、「集中 vs. 分散」「分断 vs. 接続」という観点で、4象限に分けた図の意味するところだ。4象限のうち、右側を集中、左側を分散、また上側を接続、下側を分断とすると、4つの波は図のように分類される。それぞれの象限の下にあるベンダー名は、いわゆるメインプレーヤーである。

 コンピューティング環境の進化の変遷(前川徹サイバー大学IT総合学部教授の講演資料より) コンピューティング環境の進化の変遷(前川徹サイバー大学IT総合学部教授の講演資料より)

 図を見ると、メインフレームを起点として4つの波は時計回りに移り変わってきている。では、4つの象限を回ったコンピューティング環境の進化は、これからどうなるのか。果てしなくクラウドの成熟へと向かうのか。それとも……。

 もし、コンピューティング環境の進化がこの4象限を時計回りで移り変わるサイクルだとしたら、クラウドはいつしかメインフレームになってしまうかもしれない。そこであらためて考えてみたい。例えばHP Converged Cloudは、この図でいう「集中&接続」の進化形ととらえてよいのか。「分断」の恐れはないのか。

 「集中 vs. 分散」「分断 vs. 接続」という観点は、テクノロジーだけでなく、ビジネスもしくはユーザーの視点でもとらえたいところだ。そこから、進化するコンピューティング環境の行方が見えてくるような気がする。

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