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» 2012年11月05日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:日本IBMがみせた地域展開の「本気度」

日本IBMが先週、仙台でプライベートイベントを開いた。その取材を通じて、このところ全国地域での営業展開に力を入れる同社の「本気度」を探った。

[松岡功,ITmedia]

日本IBMが仙台でイベントを開催

 「IBMの総力を挙げて東北地域の震災復興を支援したい。それが私どもの使命だと思っている」

 「IBMリーダーズ・フォーラム東北」で話す日本IBMのマーティン・イェッター社長 「IBMリーダーズ・フォーラム東北」で話す日本IBMのマーティン・イェッター社長

 日本IBMのマーティン・イェッター社長は11月1日、同社が仙台市内のホテルで開いたプライベートイベント「IBMリーダーズ・フォーラム東北」でこう力を込めて語った。さらに同氏は東北地域についてこんな見解を示した。

 「東北地域は日本のGDPのおよそ10%を占めている。その規模は海外でいうと、世界で21位のスウェーデンに匹敵しており、影響力は大きい。したがって、私どもにとっても非常に重要な市場である」

 このイェッター氏の言い回しは、同社が9月に東京都内で開いた事業戦略説明会でも聞いたことがある。そこで同氏は日本のIT市場について、「米国に次ぐ世界第2位の市場で、IBMにとっては非常に重要だ」とし、ドイツ、フランス、中国を合わせた市場規模があると語った。

 そして、今後は中堅・中小企業を対象とした営業展開を強化するとし、そのために関西(大阪)、中部(名古屋)、九州(福岡)、東北(仙台)に地域を統括する支社を7月1日付けで新設したことを説明した。

 この全国4地域での支社の新設は、今年5月に日本IBMの社長に就任したイェッター氏が初めて目に見える形で実施した事業強化策である。そして、具体的なアクションとしてプライベートイベントを企画し、10月26日の関西(大阪)を皮切りに今回は東北(仙台)、残り2地域も向こう1カ月ほどの間に開催する予定だ。

 こうしてみると、このプライベートイベントはイェッター氏率いる日本IBMの4地域へのいわば“出陣式”である。そこでまず同氏が強調するのは、冒頭で紹介した発言にもあるように「IBMの総力」だ。すなわち、世界170カ国で43万人の社員が働き、創業100年を超える歴史と伝統に培われてきた実績、知見、ノウハウなどである。

 さらに地域に対しては、IBMが2009年以来、積極的に推進しているスマーターシティ事業が強力なソリューションとなる。イェッター氏は仙台でも「IBMは世界中で2400件ものスマーターシティプロジェクトを推進してきている。その経験やノウハウは東北地域でも必ず役立つと確信している」と強調していた。

 また、イェッター氏は仙台のイベントで、東北大学との災害情報分析における共同研究や、岩手県久慈市との情報流通連携基盤の水産物トレーサビリティ情報における実証実験など、東北地域での実績についても幾つか挙げ、同地域へのIBMの力の入れようを印象づけた。

日本IBMの「本気度」を感じたシーン

 これまでイェッター氏の発言を中心にIBM側の話ばかりを紹介してきたが、プライベートイベントはむしろIBM側の発信よりも地域ごとに抱える課題やその取り組みなどについて、地域の有力者による講演やパネルディスカッションがメインとなっている。地域の企業経営者などを招待して「リーダーズ・フォーラム」と銘打ったIBMらしい企画といえる。

 「IBMリーダーズ・フォーラム東北」で行われたパネルディスカッション 「IBMリーダーズ・フォーラム東北」で行われたパネルディスカッション

 ちなみに仙台では、仙台市長の奥山恵美子氏が挨拶に立ち、その後、「東北地域の活性化に今求められる変革とは」と題してパネルディスカッションが行われた。パネリストとして登壇したのは、石巻市長の亀山紘氏、河北新報社社長の一力雅彦氏、内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官 宮城復興局担当の郡和子氏、フィデアホールディングス社長の里村正治氏の4人である。

 印象に残った発言を幾つか紹介しておこう。

 「最大の被災地となった石巻にとって今、喫緊の課題は人口の減少。これを食い止めるには、住宅の再建、働く場所の確保、そして災害に強いまちづくりを推進していく必要がある」(亀山氏)

 「東北ではまだ34万人が自宅や故郷を失って仮設住宅などでの不自由な生活を強いられており、この人数は昨年末から変わっていない。東北は今なお非常時のままだ」(一力氏)

 「復興に向けて産・学・官がしっかりとスクラムを組み、東北から新しい知見を発信していけるようになりたい。そうすれば被災で苦労したことも少しは報われると思う」(奥山氏)

 最後にもう一度、IBM側の話をしておきたい。本コラムのタイトルにある「日本IBMがみせた地域展開の本気度」を感じたのは、イェッター氏の熱弁や、地域の話題を主体にしたユニークなイベント企画もあるが、もう1つ象徴的なシーンがあった。

 それは、イェッター氏が自身のスピーチの最後に、日本IBMの全役員に声をかけて来場者に紹介したことである。その中には、9月中旬から日本に駐在している米IBM幹部のスティーブ・ソラッゾ氏の姿もあった。同氏は全世界の中堅・中小企業向け事業を統括する責任者である。つまり、東北の中堅・中小企業の声を米IBMの当該事業責任者が直接聞く機会を設けたのである。

 どうやらイェッター氏の強い意向のようだが、日本IBMがこんな動き方をしたことはこれまでなかったのではないか。筆者には、このソラッゾ氏とともに日本IBMの全役員が来場者に向かって揃って一礼しているシーンに、同社の「本気度」を強く感じた。

 ただ、日本の地域のIT化については、実際のところ国産ベンダーがガッチリとシェアを握っており、日本IBMがこれまでなかなか入り込めなかった領域だ。だからこそイェッター氏は伸ばせる領域と判断したとみられるが、果たして市場を大きく揺さぶることができるか。同氏の手腕に注目したい。

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