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» 2012年11月26日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:見えてきたスマートフォンの正体

急速に普及するスマートフォンが、従来型携帯電話にとどまらず、異分野の既存市場を次々と侵食しながら利用領域を広げているようだ。その実態を探ってみた。

[松岡功,ITmedia]

異分野の既存市場を次々と侵食

 調査会社のMM総研が先頃発表した2012年度上期(2012年4〜9月)の携帯電話端末の国内出荷状況を調査した結果によると、総出荷台数は2049万台で前年同期比1.0%増にとどまったが、スマートフォンの出荷台数は同41.6%増の1422万台と伸び、全体に占める比率が69.4%に達した。

 同社では2012年度下期も安定したスマートフォン需要が続くと見ており、2012年度通期の総出荷台数は前年度並みの4240万台となり、そのうちスマートフォンの出荷台数は前年度比28.7%増の3110万台と、全体に占める比率が73.3%に達するとしている。

 同社による調査では、2009年度にわずか7%だったスマートフォンの比率が、2011年度に56.6%と過半数を超えた。2012年度以降2016年度にかけては、総出荷台数が年間4200万〜4500万台の間でほぼ横ばいに推移すると見ており、その中でスマートフォンの比率は2013年度80.3%、2014年度82.6%、2015年度84.6%、2016年度85.6%と予測している。

 この調査結果からすると、国内の携帯電話市場は4年ほどで従来型からスマートフォンに入れ替わることになりそうだが、スマートフォンの威力はそれだけにとどまらず、異分野の既存市場を次々と侵食しながら利用領域を広げているようだ。侵食されつつある既存市場を以下に列記してみる。

 まず挙げられるのが、デジタルカメラだ。例えば、米Appleのスマートフォン「iPhone 5」のカメラの有効画素数は800万画素。高画質化が進んだ上、画像をメールで送ったりSNSなどに投稿しやすかったりといったこともあり、特にコンパクト型が影響を受けている。カメラ映像機器工業会によると、2012年のコンパクトデジタルカメラの国内出荷台数は、前年比7.5%減の740万台に落ち込むとしている。

 同じくカメラ分野では、ビデオカメラもそうだ。スマートフォンの動画撮影性能は急速に高度化しており、こちらもデジタルカメラと同様、コンパクト型が影響を受けている。電子情報技術産業協会によると、ビデオカメラの国内出荷台数は、2010年の約175万台をピークに減少へと転じ、2012年は約165万台、2016年には約151万台まで落ち込む見通しだ。

スマートフォンは“ブラックホール”?

 また、「携帯型」と名の付く専用機器もスマートフォンに市場を侵食されつつある。携帯音楽プレーヤー、携帯型カーナビゲーション機器、携帯型ゲーム機、携帯型テレビなどである。

 携帯型音楽プレーヤーの国内市場規模は2011年以降、縮小傾向にある。この分野では東芝などの大手が相次いで撤退し、現状ではAppleとソニーが市場をほぼ二分しているが、今後は両社の戦いもさることながら、スマートフォンがどれだけ侵食するかが注目の的となっている。

 また、携帯型カーナビゲーション機器は既存のカーナビより低価格なことが支持され、2009年まで前年比1.5倍のペースで市場が拡大してきた。ただ、GPS(全地球測位システム)や地図機能を備えるスマートフォンが普及した2011年以降は一転、縮小傾向にある。

 携帯型という意味では、これまでさまざまなところで使われてきた業務用の携帯情報端末もスマートフォンに入れ替わる可能性がある。

 業務用としてちょっと変わったところでは、スマートフォンをPOSレジ代わりに使う決済サービスも出てきている。1台のスマートフォンでクレジットカード決済や売り上げ集計、在庫管理などができ、従来の据え置き型POSレジよりも初期費用が安いのが利点だ。店舗スペースの有効利用にもつながるため、中小の小売店や飲食店を中心に、今後導入が進む可能性がある。

 このように、スマートフォンはさまざまな機能を備え、これまで既存の市場を形成してきた異分野の製品の垣根をいとも簡単に乗り越えつつある。今後、デバイスとしての性能向上が一段と進み、ネットワークの高速化との相乗効果によって、そうした異分野の既存市場をどんどん侵食していくのは想像に難くない。

 さらに、高速通信サービス「LTE」によるテザリングが普及すれば、屋外や車内でもスマートフォンで各種機器をネット接続することができる。そうなると、ますます利用領域が広がっていくだろう。

 これまで仕事柄30年余りにわたって、さまざまな電子機器の進化を見てきたが、異分野の既存市場を片っ端から丸呑みするかのようなものがこれまでにあっただろうか。このコラムを書くにあたってずっと考えてきたが、こんな“ブラックホール”のような存在は思い浮かばなかった。

 電子機器に限らず、全く違うジャンルだと同じような進化を遂げたものがありそうな気がするが……。それが見つかれば、スマートフォンの次なる進化を見通すことができるかもしれない。

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