OSSを活用した受託開発に注力するゼンク田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

オープンソースを核にしたサービスで競合との差別化を図るのが、25人ほどの社員で事業を運営するゼンクだ。

» 2012年12月11日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 オープンソース・ソフト(OSS)を活用したシステム開発事業に力を注ぐ中小IT企業が増えている。神奈川県川崎市に本社を置く従業員約25人のゼンクはその1社だ。同社の増田芳憲代表取締役は「競合他社との差異化を図れる」とし、OSSの適用範囲を受託開発から業務アプリケーション用へと広げている。

インフラ構築から業務アプリへとビジネスを拡大

 日立電子サービス(現日立システムズ)に勤めていた増田氏が、ゼンクを設立したのは2005年4月のこと。当初は、サーバやネットワークなどのインフラ構築、パソコンのセットアップなどを中心に事業展開していた。その後、導入サポート、データベース技術者などをユーザー企業に送り込むなどし、事業を拡大させていった。ところが、リーマン・ショック後、大型システム案件の凍結、延期によって技術者が派遣先から戻ってきた。

 増田氏は「社員の仕事がなくなる」と危機感を募らせた。そこで、大手ITベンダーの商品を扱うことを検討するが、先立つ資金がなかった。「コストをそれほどかけずにやれることはないか」と思案していたところ、「OSSなら資金がかからない」と思い立った。「技術を研鑽するために、これまでに作ったものをPHPなどで作り直して、オープン化したりした」(同)。

 問題は、OSSをどのようにビジネス化するかだ。そのようなことに悩んでいた折、オープンソース・ビジネスを推進する団体「OSSコンソーシアム」に参加する機会を得た。「コンソーシアムで議論する中で、横とのつながりができるようになり、メンバー会社から当社の得意とするインフラ構築の仕事を紹介してもらえるようにもなった」(増田氏)。例えば、Linux環境によるメールやWeb、ファイル共有の構築案件などだ。

 ゼンクはOSSをベースにした受託開発に力を入れるとともに、「人月のビジネスを続けていても、売り上げを飛躍的には伸ばせない。少人数でも請け負えるようなOSS系の業務アプリケーションをクラウドで提供する」(増田氏)ことを考えた。その第一弾として、2012年4月から顧客管理ソフトウェア

「SugarCRM」のサポートに乗り出した。

 増田氏によると、ユーザーはOSSのインストールを比較的、容易にできるものの、必要のない機能までインストールしてしまうことがある。そこにビジネスチャンスがある。ユーザーに必要な機能を選択してあげることだ。例えば、Sugar CRMを名刺管理に使いたいユーザーがいたら、その機能だけをインストールする。使い勝手のいい画面に作り直したり、教育も請け負ったりする。「1社1社の取引は小額だが、こうした年間サポート契約を結んでくれるユーザーを増やしたい」(同)。

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