かつては若者のあこがれだったPC。最近はスマホが席巻している。この先、PCやスマホと人の関わりはどうなっていくのだろうか。
皆様、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
今回は、PCやスマートフォンが今後数年の年に、人間にどう影響していくのかについて予想してみたい。もしかしたら「大外れ」になるかもしれないが、数年後に「萩原さんの予想は外れましたね」というメールは送らないでいただければ幸いだ(笑)。
昔は「パソコンおたく」の若者がいた。それが、いつの間にかだんだんとPCに興味を示さなくなっていった。秋葉原のPCショップは多くが赤字経営になり、有名ショップが倒産したり、やむを得ず事業を縮小したりする店も多い。なぜだろうか。その原因は多々あると思うが、大きな要因が、最近の若者のPC離れだと考えている。
筆者の自宅から徒歩数分の場所に、PC教室が2店ある。新年早々の新聞の折り込みチラシに最も近い教室の広告があった。2月末まで何回受講しても1講座(50分)800円だという。しかも、入会金を大幅に割引して500円などと表示していた。もう1つの教室は既にお客が途絶えているらしいようだ(潰れたかどうかは不明)。通りすがりに教室の中をうかがうと、受講者は2人から多くて5人ほどだ。中高年が多い。もう1つの教室は小中学生をターゲットにしていたようだが、その目論見は外れてしまったようである。
銀行員時代にベンチャー企業の経営者や技術者を面談したことがある。生粋の銀行員が苦手としていたIT技術がビジネスに与える将来の影響についての評価のためだった。その経験から言えることは、PC教室のようなビジネスは、新宿や渋谷、ビジネス街の神田や新橋なら採算性は高い(筆者の感覚だが)。
だが、筆者の住む埼玉の小さな町では厳しい。ターゲットはPCに不慣れな中高年やお年寄りであり、学生は一部でしかない。WordやExcelなどをほとんど使いこなせない主婦やお年寄りが一番のお客だろう。PC教室の周囲が建年数の相当経過した大型団地や巨大マンション群なら採算性は向上するだろが、一戸建てが中心だったり、築年数の比較的新しいマンションだったりでは人口が多くとも採算性は低いだろう。若い所帯の20代から40代なら、PCの操作自体にあまり慣れていなくとも、一応の作業はできるレベルにある。ちょっと前までなら、どんな立地でもPC教室のニーズは大きかった。現状を10年前に予想していた人はあまりいなかったものである。
多少長くなったが要するに、
となっていくだろう。
ちょっと前であれば、理科系に強い小中学生のほとんどがPCに興味を持ち、PCの動向を良く知っており、PCを自作する学生も多かった。しかし今、そうした学生は急速に少なくなっている。
昨年にある企業の新人教育で、PCについてヒアリングして驚いた。一応皆、大学時代にはPCを触っており、研究室でPCを利用している。しかし、その関与度が明らかに昔よりも薄い。「現在、注目のグラフィックボードは?」「自作経験は?」「自分の好きなチップセットは?」などを質問してみると、6、7年前にヒアリングをした当時の内容と大きく違うのだ。
この違いは今後ますます大きくなるだろう。昔、秋葉原のPC専門店や独自のBTOブランドを持つショップの店内は学生たちのたまり場だった。現在は「萌え」系学生は急増しているものの、PC店、特に自作者にとって重要なパーツショップでは学生風の若者をあまり見かけない。中高年の割合が急増しているようにも思う。今でも週1回は秋葉原に通っている筆者の実感である。
数年後、たぶんPCは今の「独占的王者」の座から降りるしかなくなる。だが、PCが無くなるとは思えないし、3〜7年後ではまだ王者で有り続けるかもしれない。「PC」という名前だけになっているかしれない。年々、PC、スマートフォン、タブレットの敷居が低くなっている。もっと先には融合してもおかしくはない。だんだんと増加しているネット家電もその中に含まれていくだろう。
2年ほど前、アイ・オー・データ機器が「挑戦者シリーズ」として「Rocktube(YouTubuの動画をテレビで楽しめる機器)」を発売した。発売当初、筆者も興味があって購入し、使ってみた。確かに最初は「すごい」と感じたものだ。そのWebサイトを見ると、今でも「アイオープラザ」では販売している。PCを使わずにテレビ(インターネット接続テレビではなくても、無線LAN経由で使える。コンバーターが必要)からYouTubeを視聴できるのだが、挑戦者シリーズはその注意書きに「上級ユーザーを対象にしており製品保証もサポートも一切行なっておりません。紙のマニュアルも一切同梱していません」と記載している。
この「壁」を平気で乗り越えて商品を購入し、YouTubeにつながらない時には情報交換サイトなどで自分の手で解決を試みる――こういう若者が減っていると感じるのは筆者だけではないだろう。ましてやBTOのPCをどんどんと改造してしまうような若者は、いったいどこにいったのだろうか。秋葉原のショップで「CPUのクロックアップの仕方を尋ねる若者が10年前に比べて少なくなった」と店長がグチをこぼしていた。
これが現実である。嘆いていても仕方ない。時代の流れがそうなっている。そこを理解できない昔の「パソコンおたく」の一部は自分の世界に閉じこもり、ノスタルジーに浸る。自らのPC技術は高まっていくかもしれないが、世の中から取り残されてしまうのではないだろうか。
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