セールスフォースに特化、海外成功に自信を見せるテラスカイ田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

クラウドの将来性を信じた佐藤社長がセールスフォースを飛び出して創設した企業がテラスカイだ。

» 2013年01月16日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 セールスフォース・ドットコム(SFDC)のクラウド環境を利用するIT企業が増えている。いち早く名乗りを挙げた1社が、2006年4月に設立したテラスカイだ。同社の佐藤秀哉社長はSFDCの日本法人設立に参画し、営業責任者を務めるなどSFDCの特長をよく理解する1人。クラウドの将来性を確信し、事業化に乗り出した。海外市場の開拓にも着手したところだ。

クラウド事業を展開するハードル

 佐藤社長は「SFDCの社員が世界で100人規模の時代に入社したので、マーク・ベニオフ氏(SFDC CEO)が何を考えて、どこに進もうとしているのか分かっているつもりだ。クラウドの黎明期から携わり、多くのユーザーと接し、このビジネスは成長すると思った」と、SFDCに特化したIT企業を立ち上げた背景を語る。

 テラスカイは現在、売り上げの9割をSFDC関連で占める。従業数は2012年3月の56人から同年11月に83人と、毎月数人が入社するほどのスピードで増えている。同社によると、SFDCの技術者60人弱は業界で2番目、ユーザー数は国内で最も多い約650社(累計約1000社)を獲得した(2012年11月時点)。最近はアマゾンのクラウド環境の活用も始めている。

 佐藤社長によると、IT企業がSFDCを利用したクラウド事業を展開するのは、乗り越えるハードルがあるという。ERPなど大型案件の導入支援を手掛ける大手IT企業にとって、SFDC関連の案件金額は小さく、開発期間も3カ月から6カ月と短い。つまり、人月ビジネスを展開する企業にとって、クラウドサービスは大型案件ほど儲からないということ。技術者の稼働率低下も懸念される。

 解決策の一つは、ある案件が終わったら、次の案件に技術者をすぐにアサインすること。そのため、テラスカイは営業担当者を15人(営業10人、テレセールス1人、マーケティング1人、営業事務3人、11月時点)配置し、顧客獲得を進める。これだけの営業人員を抱える開発主体のIT企業は極めてまれである。その一方で、技術者を効率的に配置するリソース会議を開くなど、稼働率を上げる工夫も凝らしているという。

 中小IT企業にチャンスがありそうだが、積極的に新しい技術を習得したり、磨き上げたりしなければならない。顧客開拓に意欲的に取り組む必要もある。こうしたことを苦手にする中小IT企業は少なくない。技術者の稼働率問題に耐えられなければ、人月ビジネスに戻ってしまう。佐藤社長は「ここで、飯を食うぞ、という覚悟がいる」と話す。

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