クラウド型経費管理サービスは進化するかWeekly Memo

経費管理のクラウドサービスを手がけるコンカーが先週、新サービスを提供開始すると発表した。これを機に、企業システムにおける経費管理のあり方について考えてみたい。

» 2013年03月04日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

コンカーが新クラウドサービスを発表

 米Concur Technologiesの日本法人であるコンカーが2月26日、クラウド型経費管理サービス「コンカー」の新サービスを提供開始すると発表した。

 会見に臨む米Concur Technologiesのマイケル・ヒルトン上級副社長(左)と同社日本法人コンカーの三村真宗社長 会見に臨む米Concur Technologiesのマイケル・ヒルトン上級副社長(左)と同社日本法人コンカーの三村真宗社長

 Concurは経費管理をクラウドサービスで提供する専業ベンダーで1993年に設立。同社のサービスは現在、全世界で1万5000社以上、180万人のユーザーに利用されており、SaaSプロバイダーとしては米Salesforce.comに次いで世界第2位の規模に位置付けられるとしている。

 その日本法人として2011年2月に設立されたコンカーでは、2012年2月に経費精算の運用管理サービス「コンカーエクスペンス」を提供開始し、現在までに国内で230社の導入実績を上げてきた。

 同社のサービスの大きな特徴は、経費管理の作業効率化と精度向上を図れるとともに、経費伝票単位での低額課金によるクラウドサービスのため、初期導入の手間やコストを大幅に抑えることができる点にある。

 さらに、日本で提供しているコンカーエクスペンスには、ICカード交通乗車券対応や経路検索ソフトの連動などのローカルニーズに応じた機能拡張も施されており、国内市場での関心も急速に高まっている。

 こうした動きに、米国本社から発表会見に出席したマイケル・ヒルトン上級副社長も、「当社にとって今、日本市場が最も成長を遂げている」と、日本市場に一層注力していく構えを見せた。

 コンカーが今回発表した新サービスは「コンカーインボイス」。水道光熱費や通信費、消耗品などの間接費を請求書に基づいて支払い処理を行うためのサービスである。事業部門が支払い依頼を登録すると、社内規定への準拠確認やサプライヤー登録の有無などのチェックが自動的に行われ、さらに組織や費目、金額に応じて自動で承認ワークフローが起動する仕組みだ。

 これにより、経理部門は従来のExcelのデータ入力や紙から会計システムへの入力などを行うことなく、事業部門からの支払いにおける依頼確認や処理を行うことができるとしている。

 コンカーの三村真宗社長は、「間接費は少額での処理が多く、不規則に発生し、経理のプロではなく一般の従業員が利用者となる。そのためERPでは対応しにくく、システム化のホワイトスペースになっていた」と指摘。その上で、「今回の発表によってエクスペンスとインボイスが出揃い、コンカーのサービスですべての間接費の領域をカバーできるようになった」と力を込めた。

企業システムにおける経費管理の理想形

 コンカーのビジネスは、まさにどの企業や組織にもある経費管理業務に対して、クラウドサービスならではの改善提案を行ったものである。ビジネスモデルとしては、特に経費伝票単位での課金という発想がユニークだ。使用した用紙にサービス料を課金するコピー業界の発想に近い。

 ヒルトン氏によると、米Concurの2012年度の売上高は前年度比26%増の413億円、営業利益は同17%増の81億円(いずれも1円=94円で換算)。これらの高成長率もさることながら、競合他社と比べて目を見張るのは約20%という売上高営業利益率の高さだ。同氏は「売上高が伸びれば営業利益率も上がる」というが、最大の秘訣はどうやら課金の仕組みと投資バランスにありそうだ。

 こうしたコンカーのビジネスモデルについては、また取材を重ねて解説する機会をつくりたい。それとともに、今回のコンカーの会見で筆者がぜひ聞いてみたかったのは、企業システムにおける経費管理のあり方である。

 というのは、筆者がこれまで取材してきたユーザー事例の中で、企業システムにおける経費管理のあり方として理想と感じた仕組みがあるからだ。それは、ワークフローとスケジューラーをフロントエンドにした経費管理である。申請・承認・決裁といった業務の流れをつかさどるワークフローと、従業員の動き(移動)がわかるスケジューラーを連動させれば、まさしくリアルタイムで不正のない経費管理ができるようになる。

 そこで、会見の質疑応答でそうした筆者がいう理想形についてどう考えるか、と聞いたところ、三村氏はこう答えた。

 「ワークフローやスケジューラーと経費管理との連携・統合は、経費の発生源の情報を補足するという意味で非常に重要だ。当社のサービスでもワークフローの仕組みはビルトインされている。さらに、当社のサービスはSalesforce CRMと緊密な連携をとり、営業活動と経費の情報を結び付けて扱うこともできるようになっている」

 どうやら、コンカーは筆者がいう理想形については、Salesforce CRMと緊密な連携によって実現を図っているようだ。日本法人の設立にあたってSalesforce.comのマーク・ベニオフCEOが出資しているのも、そんな背景があるのだろう。

 だが、あえて指摘しておきたい。本当にリアルタイムマネジメントを実現するならば、経費管理のIT化においては経費伝票でなく、ワークフローやスケジューラーでの情報入力が起点になるべきである。そう考えると、コンカーの今のサービスは電子化・クラウド化という過渡的なプロセスにあるのかもしれない。

 経費管理のリアルタイム化は、まさしく経営改革そのものである。そこへ向けてコンカーのサービスが今後、どのように進化していくのか、しないのか。大いに注目しておきたい。

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