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» 2013年04月01日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:IIJの社長交代にみるIT業界の転換期

IIJが先週、社長交代を発表した。次期社長が大物の財務次官OBとあって注目を集めているが、一方でこの動きは日本のIT業界の転換期を象徴するものともいえそうだ。

[松岡功,ITmedia]

緊急会見で語られた社長交代の理由

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は3月28日、財務省の前事務次官で同社特別顧問の勝栄二郎氏(62)が6月末に社長兼COOに就く人事を内定したと発表した。創業者で現社長の鈴木幸一氏(66)は会長兼CEOに就き、ともに代表権を持つ2頭体制となる。

緊急会見に臨む鈴木幸一現社長(右)と勝栄二郎次期社長 緊急会見に臨む鈴木幸一現社長(右)と勝栄二郎次期社長

 財務次官OBが金融機関などを除く上場企業の社長に就任するのは極めて異例のことだ。しかも勝氏は「大物財務次官」と評されてきただけに、IIJが同日開いた両氏による緊急会見にはテレビや一般紙の記者の姿も目立った。

 会見の全容については既に多くの報道がなされているので他稿に委ねるとして、ここでは今回の社長交代の背景と目的にフォーカスしながら、その意味について考えてみたい。

 会見ではまず鈴木氏が社長交代の背景と理由についてこう語った。

 「今年で創業21年目を迎えたIIJは、当初国内に存在しなかったインターネットを持ち込んで商用化し、この分野でイニシアティブを取り続けてきた。途中、関連会社の頓挫など紆余曲折もあったが、創業20年で売上高1000億円を超える規模へと成長した」

 「ただ、同時期に誕生したNTTドコモほどには大きくなれなかった。携帯電話よりインターネットのほうが技術革新のインパクトは大きいという確信は今も変わらないが、ドコモほどになれなかった点については、経営者として忸怩たる思いがある」

 「そうした思いとともに、今クラウドに代表されるようにインターネットの世界がさらに大きく発展していく中で、IIJは次のステップに向けてあらためて世界的にも技術的にも確固たるイニシアティブを取るべき時期が来た。勝さんを迎えたのはそのためだ」

 こうした鈴木氏の発言を受けて勝氏は、「IIJには技術力の高さとそれに裏打ちされた顧客からの信頼の厚さがある。常に時代の要請に応えた技術や製品、サービスを提供し続けるのは非常に難しいことだと思うが、IIJは20年間、高い技術力を維持してきた。優秀な技術者と先見の明がある経営者がいることでそれを実現している」と、特別顧問として4カ月余り見てきたIIJの印象を語った。

日本のIT業界に求められる「見識」

 両氏の役割分担については、鈴木氏が会長兼CEOとして引き続き事業全体を統括するとともに、技術開発分野を主管。SDN(Software Defined Network)などをはじめとする新たな技術基盤やサービス開発、技術者の育成などを主導しながら、将来、世界標準となるような革新的な技術の創出を目指した研究開発と事業化の指揮をとる。

 一方、勝氏は社長兼COOとして事業拡大のための戦略、事業運営における対外交渉、事業執行運営などを所管。国際派としての経験と豊富な海外人脈を生かし、グローバルな事業展開も加速していくとしている。

 こうした両氏による会見で筆者が最も注目したのは、鈴木氏が勝氏への期待を語ったコメントだ。インターネットが従来の技術革新と異なる点として、情報の受発信の構造を変えて、政治や産業、社会、生活に至るまで大きな影響を与えていることを挙げた上で、同氏はこう語った。

 「IIJとしてはこれまで技術革新に注力して進めてきたため、この技術でこんなことができるようになりますよ、といった話はできるものの、それで政治や産業、社会、生活がどう変わるのか、どんな仕組みに変えていけばよいのか、という見識はあまりなかった。勝さんはこれまでの豊富な経験から、そうした見識を持っている」

 さらに鈴木氏はこう続けた。

 「米国では今やIT産業がメインインダストリーになっている。日本も早晩、そうなるだろうし、そうしていかなければいけない。そのためには、勝さんが持つ見識や仕組みごと変えていく発想が必要になる。これからIIJが、さらには日本のIT業界が取り組むべき方向性を、技術屋の発想ではないところから広げていってもらいたい」

 鈴木氏が勝氏を評して語った「見識」や「仕組みごと変えていく発想」はIIJにとどまらず、まさしく今の日本のIT業界に最も求められているものではないだろうか。

 言い換えれば、今の日本のIT業界はそうした見識や発想を持つことができるかどうかの転換期にあるのではないか。今回のIIJの社長交代は、そんな日本のIT業界の現状を浮き彫りにした動きではなかろうか。会見を聞いていて、そう強く感じた。

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