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» 2013年05月10日 08時00分 UPDATE

萩原栄幸の情報セキュリティ相談室:社長の使うOffice 2010が怪しい それって違法ですか? 合法ですか? (1/2)

ある企業のトップが使っていたMicrosoft Office。そのパッケージの箱には中国語が書かれていて、海賊版のように思えたが、実は正規版だった。ライセンス利用に関する事案を紹介する。

[萩原栄幸,ITmedia]

 相談を寄せた企業は、四国にある中堅の製菓会社だった。相談内容は、経営者であるA社長個人に関するものである。「萩原さんは法人をターゲットにお仕事をされているので、A社長の個人的問題は対象外かもしれないが、会社に関わるかもしれない……」ということで、筆者に依頼してきたということだった。

 これまでの案件とは異なり、今回はその企業とはあまり関係が無いので解説も最小限にとどめている。会社側の希望は、A社長(30歳代で2代目)の個人の「情報セキュリティ」上の問題について専門家の立場から指摘し、改善を促したいということであった。通常は、企業が経営者の個人的な問題でこうした依頼を専門家にすることはあり得ない。相談主は経営者の父親、つまり会長であり、経営者のオムツを替えていた経験もあるという専務の2人からであったが、よほどの事態なのかもしれないと相談に応じた。

(編集部より:本稿で取り上げる内容は実際の事案を参考に、一部をデフォルメしています。)

事例

 異例の相談であったことと、A社長にこの相談事を知られたくないという相談主の希望で、ある土曜日に新橋のホテル内のレストラン(個室を予約)で面談した。同席したのは会長と専務、そして社長の息子さんである小学生のBくんの3人である。

事案

 A社長はソフトウェアライセンスという概念を軽視しており、違法コピーもしている。実は、社長が自宅で作成している社内文書のWord、Excelのソフトに違法性があるようだ。その入手方法と違法性について、専門家の立場から次回の役員向け情報セキュリティ教育の場でさり気なく伝えしてほしい。企業が作成する経営者の文書が違法に入手されたソフトによるものであるという事実は、ぜひとも避けたい。

 会長からその問題の経緯について話があった。詳細は割愛するが、発覚したきっかけは、A社長がAmazonで購入したとみられるソフトが自宅のPCの側に置いてあったことだった。偶然にもBくんが発見したのは、ソフトのパッケージ1箱と領収書である。領収書に書かれた価格は約3000円、パッケージ箱には「Microsoft Office 家庭和学生版2010」と記されていた。中国版のOfficeであることは、パッケージですぐに分かったという。

 現物を持参してきたのでパッケージを読むと、どうやらWord 2010、Excel 2010、PowerPoint 2010、OneNote 2010の4種類が梱包され、ライセンス数が3つある。A社長はこれを購入後、Bくんに「おまえが使っているノートPCにOffice 2010をインストールしてやるからもってこい」と話したそうだ。

 疑惑のOffice 2010をインストールしたというノートPCも持参してきたので、その場で起動してみた。確かにOffice 2010がインストールされ、実行してみると、サクサク動いた。ある程度動かしてみたが問題はなく、そこでの印象は日本語の正規版というイメージである。筆者はそのパッケージとノートPCを借りた。「来週までに結論がほしい」ということだったが、1週間ではその他の作業も有り困難だとお伝えし、2週間後の土曜日に同じ時間、同じ場所で会う約束をして別れた。

 本件での問題点は次の2つである。

  1. A社長はそもそも違法行為をしたのか?
  2. A社長はこの中国語版のパッケージからどうやって日本語正規版と思われるようにしたのか?

 まずは事実確認である。Bくんが持参したパッケージは、Amazonから業者に発注されたものだ。AmazonのWebサイトでは多数の業者が同じパッケージを販売していた。どういう訳か、値段はバラバラで、しかも差が大きい。最安値と最高値では数倍の開きがあった。筆者はその中から無作為に商品を選択してみた。数日で自宅に届く。まずは使用していない古いノートPCにインストールしてみた。インストールはうまくいったが、当然ながら、パッケージに「中文版」と記載しているので中国語のMicrosoft Officeであった。これではBくんから借りたノートPCと同じではない。

 それではどうすべきか。同梱された紙と別添のDVDに答えがあった。別添の日本語言語パックを使用すればいいという。そこで指示通りに作業してみると、何と日本語環境になった。ちなみにパッケージ内部の中国版を日本語に対応させてみると、純正の日本語版とは思えない、どころか中国語表記のままになった。どうやらパッケージ内のDVDを利用するのではなく、米国サイトから評価版のOfficeをダウンロードして、日本語言語パックを利用する仕組みであることが判明した。

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