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» 2013年05月23日 08時15分 UPDATE

松岡功のThink Management:企業のBCP対策は進んだか

東日本大震災から2年余り。企業にとっては、事業やITの継続性に対する取り組みが問われた期間でもある。最近発表された2つの調査から、その実態を探ってみる。

[松岡功,ITmedia]

BCP策定済み企業は震災前の1.5倍に

 東日本大震災をきっかけに、企業の間ではリスクマネジメントの一環として、BCP(事業継続計画)およびBCM(事業継続管理)に取り組む気運が高まっている。

 震災からおよそ2年を経て、その実態はどうなのか。NTTデータ経営研究所とプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が先頃、それぞれに興味深い調査結果を発表したので取り上げておきたい。

 まず、NTTデータ経営研究所がまとめた「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査」は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「gooリサーチ」登録モニターを対象として今年1月に実施したものだ。

 それによると、調査時点でBCP策定済みの企業は全体の40.4%。策定中まで含めると70.3%となった。ただ、策定済みの企業を上場と未上場に分けると、上場は58.0%に達する一方、未上場は34.8%にとどまっていることが分かった。

 策定済みの企業を業種別に見ると、早くからBCPの取り組みを進めてきた金融・保険業が75.6%と群を抜いており、策定中も含めると9割を超えている。一方で、教育・医療・研究機関や、商業・流通・飲食業においては策定済みが4分の1程度にとどまっている状況が浮き彫りになった。

 この調査で特に注目されるのは、震災発生以前のBCP策定状況を尋ねた前回調査(2011年7月実施)との比較だ。前回の回答者に対して行った追跡調査では、前回24.6%だった策定済みが今回37.0%と約1.5倍に増加した。

 追跡調査において策定済みの企業を業種別に見ると、早くからBCPの取り組みを進めてきた金融・保険業に加え、通信・メディア・情報サービス業が前回の28.1%から今回54.7%と約2倍に、教育・医療・研究機関が前回の9.2%から今回23.1%と約2.5倍に増加。これをして同研究所では、震災をきっかけに社会インフラの担い手となる企業・団体のBCP策定意識が急速に高まったことがうかがえるとしている。

求められる事業継続のマネジメント

 次に、PwCがまとめた「IT-BCPサーベイ2013」は、日本国内の上場および有力未上場の企業約500社を対象に、企業の情報システムの継続性維持管理の実態を調査したものだ。調査は2012年11月から12月にかけて実施したという。

 それによると、日本企業のIT-BCP策定率は69%、およそ7割という結果が出た。前述のNTTデータ経営研究所の調査とは一概に比較できないが、策定中まで含めた数字(70.3%)と同じ意味合いがあるかもしれない。

 また、グローバルで事業を展開している企業のうち、「海外拠点のIT-BCPの状況を本社が把握していない」、もしくは「対応を各拠点に任せている」と回答した企業が、合わせて65%に及んでいる。

 さらに、策定したIT-BCPの訓練については、本番機を利用した訓練を実施していない企業が83%に達する一方、ユーザー部門を巻き込んだ訓練を実施していない企業も63%に及ぶなど、実効性を確保するための訓練が実施されていないことが浮き彫りになった。加えて、内部監査部門において「過去にIT-BCPの監査を行ったことはない」と回答した企業が47%に上ったことも明らかになった。

 こうした結果から、PwCでは、「情報システムに関わるリスクマネジメントの見直し」「訓練計画の策定や訓練実施方法の見直し」「内部監査の見直し」「グローバルを含めた企業全体での対応」といった4つの取り組みが求められると提言している。

 中でも訓練に関する見直しについては、「事業継続の戦略においては、策定したIT-BCPを形骸化させないために訓練の内容について見直しを実施し、年間を通じた訓練計画を策定することが必要となる。また、訓練内容についても事業継続を目的としたシナリオを策定する必要があり、情報システムの観点のみならず企業全体を巻き込んだ訓練シナリオを策定することも必要となる」と説明している。

 これはPwCも以前からその重要性を説いているが、まさしくBCMへの取り組みである。改めて説明しておくと、BCMとは、BCPにおいて定められた対策や教育訓練を確実に実行、および評価し、BCPを継続的に改善し維持管理するための経営管理プロセスのことだ。つまり、事業継続に関するPDCAサイクルを通した継続的な活動そのものである。

 BCPの策定もさることながら、企業にとって本当に大事なのはBCM、すなわち事業継続のマネジメントへの真剣な取り組みである。改めてそのことを強調しておきたい。

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