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» 2013年07月29日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:IBMがメインフレームを出し続ける理由

日本IBMが先週、メインフレームの新製品を発表した。同市場が縮小傾向にある中で、なぜIBMは新製品を出し続けるのか。

[松岡功,ITmedia]

メインフレームはIBMのプレミアム製品

 「本日はたいへん重要な発表をさせていただく」

 日本IBMのマーティン・イェッター社長は7月24日、同社が開いた新製品発表会でこう切り出した。発表したのは、次世代メインフレームと銘打った「IBM zEnterprise BC12(zBC12)」。同社が昨年夏に発表したハイエンドモデル「IBM zEnterprise EC12(zEC12)」の技術を踏襲したミッドレンジモデルで、新たに基幹アプリケーションをモバイル端末で利用できるようにしたという。

 会見で質問に答える日本IBMのマーティン・イェッター社長 会見で質問に答える日本IBMのマーティン・イェッター社長

 zBC12は従来製品「IBM zEnterprise 114」と同じ価格帯でありながら、4.2GHzで動作する32nm/SOI技術によるCMOSプロセッサを搭載することで、コアあたりの処理速度が36%向上、筐体あたりの処理能力向上で統合可能な仮想サーバ台数が最大62%増加したとしている。処理能力は50〜4900MIPSをカバーし、価格は最小構成で790万円からとなっている。

 zBC12の詳細については関連記事等を参照していただくとして、ここでは、もはやメインフレームの時代は終わったと言われて久しい中で、なぜIBMは新製品を出し続けるのか、について探ってみたい。

 イェッター氏は会見で、IBMのメインフレームについてこう強調した。

 「メインフレームは古いと言われるが、それは違う。IBMのメインフレームは来年で50周年を迎えるが、これまで投資を怠ったことはなく、たゆまぬ技術革新を続けてきた。その理由は、メインフレームが担う基幹システムに対して、高度な信頼性や可用性、拡張性を求める確固たる顧客ニーズがあったからだ」

 「例えば、世界中の主要な銀行や保険会社のほとんどが今も変わらずIBMのメインフレームを使い続けていることからしても、信頼性や可用性が実証されているのは明白だ。さらに技術革新では、IBMが開発した最新技術をメインフレームにいち早く適用するとともに、オープンアーキテクチャにも柔軟に対応してきた。そうした技術の集大成である今回の新製品は、まさしくIBMのプレミアム製品である」

基幹システムに求められている要件

 イェッター氏に続いて説明に立った日本IBMの宇田茂雄テクニカル・リーダーシップ担当取締役執行役員は、zEC12発表後およそ1年経過した状況を示した上で、今、基幹システムに求められている要件について語った。

 まず、zEC12は発表後、約1年が経った現在、2500万円以上のハイエンドサーバ市場で40%のシェアを獲得して第1位となっており、MIPSベースでは前年比27%の成長、複数のOSを利用したハイブリッドシステムの出荷台数では同71%の成長を遂げているという。

 こうした好調ぶりを踏まえた上で、宇田氏は基幹システムに求められている要件について、「オペレーショナル・アナリティクス」「規模による効率化」「セキュリティと事業継続」という3つのキーワードを挙げた。

 1つ目のオペレーショナル・アナリティクスは、基幹の業務データを分析して有効活用したいというニーズ。2つ目の規模による効率化とは、システム資源を100%使い切ることができるメインフレームによって分散化したさまざまなサーバを取り込んで効率化を図りたいというニーズ。そして3つ目のセキュリティと事業継続は、まさしく信頼性や可用性に裏打ちされるニーズだ。

 zEC12はこれらの要件に応えることができているからこそ、受け入れられていると宇田氏は強調した。今回の新製品であるzBC12はこれにモバイル対応を加え、ミッドレンジモデルとしてその裾野をさらに広げていくものとなるわけだ。

 とはいえ、メインフレーム市場が縮小傾向にあるのは明らかだ。IDC Japanの調査によると、2012年に1022億円だった国内のメインフレーム市場規模は2017年には723億円に縮小する見通しだ。それでも新製品を投入するのはなぜか。会見の質疑応答でこう問われたイェッター氏は、おもむろにこう答えた。

 「市場は縮小傾向にあるかもしれないが、高い信頼性や可用性、コスト効率に対する顧客ニーズはここにきて改めて高まってきている。IBMのメインフレーム事業はグローバルでみると伸びており、日本市場も含めてまだまだポテンシャルがあると考えている」

 そしてこう強調した。「IBMはメインフレーム事業において、多くの顧客の基幹システムに責任を持っている。メインフレームの信頼性や可用性の高さは、他のシステムでは代替できない。従ってこれまでと同様、IBMはメインフレームに投資をし続け、たゆまぬ技術革新を行っていくことをコミットしている」

 「変わらないで生き残るためには変わらなければならない」とは、名作映画「山猫」で有名になった台詞だが、イェッター氏の発言を聞いた筆者の頭にはこの言葉が思わず浮かんだ。

 ただ、こうしたソリューションとしての進化とともに、IBMにはメインフレームを出し続ける理由がもう1つある。それは、同社にとってメインフレーム事業が重要な収益源の1つになっているからだ。事情通によると、「メインフレームは粗利益が6〜7割ともいわれる高収益事業。最近では市場競争の中でその割合も下がりつつあるようだが、オープン系システムに比べるとまだまだ高水準なのは明らかだ」という。

 その意味からも、イェッター氏の冒頭の言葉通り、今回の発表はIBMにとってたいへん重要なものに違いない。

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