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» 2013年11月11日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:「クラウドOS」を掲げるマイクロソフトの覇権への野望

「クラウドOS」というビジョンを掲げるマイクロソフトが、その実現へ向けて強化策を打ち出した。このビジョンには、クラウド市場の覇権を目指す同社の野望がありそうだ。

[松岡功,ITmedia]

マイクロソフトが掲げる「クラウドOS」とは

 日本マイクロソフトが11月7日、このほど販売を開始したサーバOSの新版「Windows Server 2012 R2」および管理ソフトウェアの新版「System Center 2012 R2 」の製品概要と、昨年発表した「クラウドOS」ビジョンの実現へ向けた取り組みについて記者説明会を開いた。

 製品概要については関連記事を参照いただくとして、ここではクラウドOSビジョンに焦点を当ててみたい。

 説明に立った日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部の吉川顕太郎 本部長によると、クラウドOSビジョンとは、顧客が所有するオンプレミスを含めたプライベートクラウド、サービスプロバイダーが提供するクラウド、そしてマイクロソフトが提供するパブリッククラウドに対して、一貫したプラットフォームを提供しようというものだ。

 クラウドOSビジョンを実現する主要な製品・サービスは、Windows Server 2012、System Center 2012、そしてPaaSの「Windows Azure」からなり、このほど2つの製品を「R2」として機能強化したことにより、クラウドOSビジョンをさらに具現化させた格好だ。

 吉川氏の説明で興味深かったのは、Windows ServerとWindows Azureの中身は既に完全な対称形となっており、シームレスなハイブリッドクラウドとして仮想マシンの相互利用、データベースの同期、アプリケーションの接続とメッセージング、サーバ間のVPN接続、そして共通のツールで統合的に管理できるようになっているという。

 さらに、サーバ関連の技術開発は今やパブリッククラウドであるWindows Azure上で行うことが前提となっており、これによってこれまで3〜4年かかっていた開発サイクルを1年に短縮できるようになったという。実際にWindows Server 2012が1年でR2に強化されたのも、こうした開発手法が奏効したからだとしている。

 これをして吉川氏は、「これからのプラットフォームの技術革新は、パブリッククラウドの開発現場から生まれる。ここにきて競合他社もパブリッククラウドに力を入れ始めているのは、そのことに気付いたからだ。マイクロソフトはいち早くそうした開発体制を整えており、競合他社を大きくリードしていると自負している」と自信をのぞかせた。

「クラウドOS」は顧客の囲い込み戦略

 吉川氏の説明を聞いていると、どうやらクラウドOSビジョンの“扇の要”はWindows Azureのようだ。今後、パブリッククラウドが一層普及していくのは必然。そう考えると、Windows ServerとWindows Azureをシームレスな環境にしたのも、マイクロソフトならではの顧客の囲い込み戦略といえる。

 さらに、Windows Azureにおいては、パブリッククラウドならではの顧客の囲い込み戦略が展開されようとしている。その一端を垣間見ることができるのは、マイクロソフトがWindows Azureの普及戦略として一時、積極的に進めていたユニークな協業形態をここにきて転換しようとしている動きだ。

 ユニークな協業形態とは、マイクロソフトがWindows Azureにおいて富士通、さらにはHP、Dellと戦略的提携を結び、同PaaSを運用できるシステム基盤を開発するとともに、3社のデータセンターからそのシステムを活用したクラウドサービスを提供できるようにしたことだ。マイクロソフトにすれば、Windows Azureサービスの運営そのものを委託する格好で、これは取りも直さず、クラウドサービスにおけるデータ管理のあり方を根本から変えるものともいえる。

 マイクロソフトが3社と戦略的提携を結んだのは、Windows Azureの実行環境として同社が提供するアプライアンスを組み込む形になるPCサーバのグローバルシェアにおいて、上位を競うのがこの3社だからだ。さらに、3社とも自社のデータセンターのグローバル展開に注力している。その展開力が、マイクロソフトにとってはWindows Azureを普及させる上で必要になると見ていたようだ。

 その中でも、マイクロソフトはHPやDellに先行して、富士通との協業サービス展開を2011年6月に発表。両社の緊密ぶりが目立っている。ちなみに現在、富士通の国内データセンターから提供されている「Fujitsu Global Cloud Platform FGCP/A5 Powered by Windows Azure」(略称、FGCP/A5)には、既に多くの顧客企業が名を連ねている。

 ところが、マイクロソフトはどうやら、この協業形態を転換するようだ。業界筋の話によると、同社は運営委託の協業形態を取りやめ、Windows Azureサービスの基盤はすべて自前のデータセンターで運営する形にする構えだ。結局、HPとDellとの協業は何も進まないまま消滅したようだ。

 注目されるのは、富士通との関係だ。マイクロソフトと富士通は近く、グローバルなクラウド事業での協業を拡大するとみられているが、Windows Azureサービスの運営委託については何らかの変更があるものと推察される。

 では、なぜマイクロソフトは自前のデータセンターでの運営にこだわるのか。それはパブリッククラウドならではの特徴で、顧客のデータを自前のデータセンターで管理することによって、顧客と直接コンタクトを持てるようになるからだ。言い換えれば、これ以上の顧客の囲い込み戦略はない。

 そう考えると、Windows Azureを“扇の要”としたクラウドOSビジョンの実現は、まさにマイクロソフトのグローバルなクラウド市場での覇権をかけた大いなる野望といえそうだ。

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