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» 2014年01月23日 08時00分 UPDATE

サイボウズが目指す「M2M2H」とは何か

企業のクラウド導入が進む中、その使われ方も多様化しつつあるようだ。2011年にクラウド事業に乗り出したサイボウズの青野社長は「M2M2H」とも言える導入事例が生まれていると話す。

[本宮学,ITmedia]

 企業のクラウド導入が本格化しつつある。IDC Japanが2013年9月に行った調査によると、情報システムの構築にクラウドを利用している国内企業はすでに17.3%を占め、導入を検討している企業は19.0%に上るという。

 「クラウド利用企業のすそ野が広がっている」――こう話すのはサイボウズの青野慶久社長。同社が2011年11月から提供しているクラウドサービス「cybozu.com」の有料契約社数は約2年で5000社を突破し、その後も月間200〜300社のペースで増え続けているという。「クラウドは今まさに普及期にある」と話す青野社長に、ユーザー動向や2014年の展望について聞いた。

クラウド化に意欲的な“2つの顧客層”とは

photo 青野社長

 cybozu.comは、グループウェア製品「サイボウズ Office」「Garoon」やカスタムデータベース作成ソフト「kintone」などをクラウド経由で利用できるサービス。従来のパッケージソフトと異なり専用サーバが不要なほか、初期費用なしの月額料金で使えるなどの特徴がある。

 青野社長によれば、cybozu.comの利用が拡大している理由は大きく2つ。まず1つ目は、これまでパッケージ製品に手が出せなかった小規模ユーザーの利用が広がっていることだ。「5〜10人くらいの企業がグループウェアの専用サーバを立てるのは難しい。その点クラウドなら申し込んだその日から使えるので、利用者のすそ野が広がっている」

 そして2つ目は、パッケージ版ソフトを使ってきた大企業のクラウド移行ニーズが高まっていることだという。「例えば数千人のユーザーを抱える企業が数年分のグループウェアのバックアップを取ろうとすると、莫大な手間と時間がかかる。クラウドならそうした一切の負担から解放されるため、移行に前向きな顧客が多い」

 こうした小規模/大企業のクラウド導入ニーズを取り込み、サイボウズは2013年度にグループ全体で前年度比15%増の売り上げを見込む。「予想外だったのは、クラウドが売れてもパッケージ版の売り上げが下がらなかったこと」と青野社長。実際、cybozu.comを導入する企業のうち約4割は、パッケージ版からの乗り換えでない新規ユーザーという。

サイボウズは「M2M2H」の会社へ

 こうした新規ユーザーの増加は、グループウェアなどの利用方法にも変化を及ぼしているようだ。その1つが、企業と顧客の枠組みを超えたコラボレーションの広がりである。

 サイボウズは2013年にkintoneをアップデートし、企業や組織をまたぐ情報共有を可能にする「ゲストスペース」機能を追加した。青野社長によれば、cybozu.comのユーザーのうち約25%は社外の人にもゲストスペースなどのIDを付与して利用しているという。

 例えば、国内のある介護サービス企業では、スタッフだけでなく患者とその家族にもcybozu.comのIDを付与。スタッフと患者の家族が一体となって、介護状況などに関する情報共有を行っているとのことだ。

 「この会社では、1人の利用者を助けたいという思いのもとで、サービスを提供する側と受ける側の区別なく協力し合っている。これは従来のパッケージソフトでは思いもよらなかった使い方だ。クラウドによって企業と顧客の境目がなくなりつつある」

photo 青野社長も使っているという米国製のウェアラブルデバイス「UP」。歩数や睡眠時間などを記録してクラウド(kintone)に送ればスマートフォンアプリで閲覧できるため、医療・介護現場などでの情報共有促進が見込まれるという

 また、いわゆる「M2M」(Machine to Machine)の分野でcybozu.comを利用する顧客も現れつつあるという。例えば太陽光発電システムの運営を手掛ける横浜環境デザイン(横浜市)では、ソーラーパネルのセンサーで取得した各種データをkintone上に集約。これを設備管理スタッフ間で共有し、日々のメンテナンス業務に役立てているとのことだ。

 「センサーデバイスの低価格化が進み、世界中のあらゆるデータをクラウドに集められる時代になりつつある。これを使っていかにいい仕事をするかが焦点になっている。普通のITベンダーがやろうとしているのは『センサーデータのデータベース化』までだが、サイボウズが得意なのは集めたデータをチームで共有してワークフロー化するところ。いわばM2Mの先にある『M2M2H』(Hはヒューマン)を実現していく」

価格改定でさらにすそ野を拡大へ

 同社は2014年4月にkintoneの価格改定を予定している。現行の月額880円プランを廃止し、kintoneの基本機能を使える「Light版」(月額780円)と、APIを利用した高度なカスタマイズができる「Standard版」(月額1500円)の2つを提供していく。

 この価格改定を通じ、cybozu.comの顧客のすそ野をさらに広げる考えだ。青野社長は「今も約9割の顧客はAPIを使わずシンプルな使い方をしているので、そうした顧客にとっては無条件に安くなる。一方、Standard版はSIパートナー企業での取り扱いを想定しているため、より進んだ使い方をしたい残り1割の顧客も結果的に今より安く使えるようになるだろう」と説明する。

 同社がクラウド事業に費やした累積投資額は約50億円に及ぶというが、今後もしばらくクラウド事業単体での黒字化は目指さない方針。「いま投資を控えめにして黒字化するのは簡単だが、クラウド市場ではAmazonやsalesforce.comのように黒字を出さずに走り続けている(巨額の投資を行っている)プレイヤーもいる。クラウドは始まったばかりで今まさに普及期なので、これくらいの額では満足しない覚悟で投資していく」(青野社長)

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