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» 2014年06月09日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:激戦区IaaS市場の行方

クラウドサービスをめぐって有力ベンダー同士の協業の発表がこのところ相次いでいる。そこから見えてくるものとは――。

[松岡功,ITmedia]

GartnerのリサーチによるIaaS市場の現状

 米Gartnerが先頃、パブリッククラウドのIaaS市場における上位15社を取り上げた「マジック・クアドラント2014年版」を発表した。

 マジック・クアドラントはGartner独自のリサーチ手法で、リーダー、チャレンジャー、ニッチプレーヤー(特定市場指向型)、ビジョナリー(概念先行型)の4象限からなる図に、対象となる市場で競合するベンダーの相対的な位置付けを示したものである。ちなみに、縦軸が「実行能力」、横軸が「ビジョンの完全性」を表しており、右上に位置付けられるほど評価が高いことを意味している。

IaaS市場を対象にした「マジック・クアドラント2014年版」(出典:Gartnerの資料) IaaS市場を対象にした「マジック・クアドラント2014年版」(出典:Gartnerの資料)

 図に示したのが、IaaS市場を対象にしたマジック・クアドラント2014年版である。ご覧の通り、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoftがリーダーの位置にあり、他の競合をリードしている。ただ、AWSとMicrosoftの間も特に実行能力においてまだまだ差があることを示している。

 この2社を追いかける第2集団には、ビジョナリーに位置付けられたGoogle、IBMが名を連ねている。また、同じ第2集団のCenturyLink、CSC、Verizon Terremarkは、従来から米国を中心にデータセンター関連サービスを手掛けてきたベンダーである。

 IaaS市場はAWSが先行し、MicrosoftやGoogleがAWSの独走を阻止しようと昨年来、注力し始めた経緯がある。さらにIBMがSoftLayerを買収して本格参戦し、今後はこの4社を軸に激戦が繰り広げられると見られている。

 ちなみに、マジック・クアドラント2013年版では、AWSの位置は2014年版と変わらないが、Microsoftはビジョナリー、IBMはニッチプレーヤー、Googleは上位15社に入っていなかった。それからすると、AWSに対抗する3社はこの1年でかなり追撃態勢を整えてきたといえよう。

 中でも最近、活発な協業戦略を展開しているのが、MicrosoftとIBMだ。以下に筆者が注目した動きをいくつか挙げておこう。

IBM、Microsoftが協業戦略を積極展開

 まずは、IBMが6月2日(米国時間)に発表したSAPとの協業だ。内容は、IBMのIaaSであるSoftLayer上でSAPのソフトウェア製品を利用できるようにしたというものだ。具体的には、インメモリデータベース「SAP HANAプラットフォーム」や「SAP HANA ONEサービス」、「SAP Business Suite」や「SAP BnsinessObjects」などの各種アプリケーションが対象となっている。

 SAPとの協業については、IBMに先駆けてMicrosoftも5月19日(米国時間)に発表した。内容はIBMのケースとほぼ同じく、MicrosotのIaaS/PaaSである「Microsoft Azure」上でSAPのソフトウェア製品を利用できるようにした形だ。具体的には、SAP HANAプラットフォームや「SAP Mobileプラットフォーム」、そしてSAP Business Suiteや「SAP Business All-in-One」などの各種アプリケーションが対象となっている。

 この2つの協業は、SAPの動きとしても興味深い。同社は自社ソフトウェア製品のクラウドサービス展開において、かねてより自社のデータセンターから提供するだけでなく、グローバルな地域や業種・業態などの特性を踏まえた形で、パートナー企業のデータセンターにもサービスの運営を委託してビジネスを広げていく協業形態をとっている。SAPからすれば、IBMやMicrosoftとの協業もその方針に沿ったものである。

 さらにもう1つ注目すべき動きを挙げておくと、Microsoftがクラウドサービス専業大手のSalesforce.comと5月29日(米国時間)に発表した協業だ。「戦略的提携」と銘打った両社の協業では、Salesforce.comのCRMアプリケーションおよびプラットフォームとMicrosoft OfficeおよびWindowsが統合され、ユーザーの生産性向上に貢献できるとしている。

 ちなみに、Microsoftは2013年夏にOracleとも戦略的提携を発表し、Microsoft Azure上でOracleのソフトウェア製品を利用できるようにしている。これによってMicrosoftは、ソフトウェア製品やSaaS/PaaSの有力ベンダーであるOracle、SAP、Salesforce.comと協業を進め、クラウドビジネスにおけるエコシステムをさらに強力に推進しようとしている。

 その意味ではおそらくIBMも今回のSAPとの協業を皮切りに、他の有力ベンダーともパートナーシップを広げていこうと考えているだろう。クラウドビジネスは、パートナーとの強固なエコシステムをどれだけ広げていけるかが成功の鍵を握るといわれる中で、今後さらにダイナミックな合従連衡の動きが巻き起こる可能性もありそうだ。

 加えて、IaaS市場が今後どう変化していくのかも注目される。というのは、「これからはPaaSとIaaSが融合してクラウドプラットフォームといわれるようになる」と見る向きも少なくないからだ。そうなると、Gartnerのマジック・クアドラントの顔ぶれも変わってくるかもしれない。

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