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» 2014年06月16日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:EMCが推進する独自のクラウド戦略とは?

ストレージベンダーからIT総合ベンダーへと転身を図りつつあるEMC。先週来日した米国本社幹部に取材する機会を得たので、特にクラウド戦略について筆者の疑問をぶつけてみた。

[松岡功,ITmedia]

協業パートナーとのエコシステムに注力

 まず、EMCのクラウド戦略に対する筆者の疑問を述べておこう。それは、同社自身がクラウドを重点戦略事業と位置付けているにもかかわらず、競合するIT総合ベンダーの名が並ぶクラウド事業の売上高ランキングなどに顔を出したケースを見かけないことだ。

米EMCのデビッド・ウェブスター シニアバイスプレジデント(左)とEMCジャパンの山野修社長 米EMCのデビッド・ウェブスター シニアバイスプレジデント(左)とEMCジャパンの山野修社長

 とはいえ、メディアなどで見るクラウド事業の売上高ランキングは、クラウドサービスを対象にしているケースが多いので、EMCの事業戦略とは“土俵”が違うのかもしれない。が、EMCは最近、クラウドサービスで先行するAmazon Web Services(AWS)が最大のライバルだと公言している。ならば、EMCはなぜクラウドサービスを手掛けないのか。

 こんな疑問に対し、先週来日した米EMCのアジアパシフィック/日本地域を担当するデビッド・ウェブスター シニアバイスプレジデントが、EMCジャパンの山野修社長とともに取材に応じて答えてくれた。

 ウェブスター氏はまず、EMCのクラウド戦略における競合他社との違いについてこう説明した。

 「EMCのクラウド事業は、当社が開発した技術や製品を、協業パートナーであるクラウドサービスプロバイダーを通じてユーザーに提供するのが基本的な戦略だ。EMC自身がクラウドサービスプロバイダーになることはない。あくまでもクラウドサービスに適用する技術や製品の提供に徹するのが当社のスタンスだ。そのため、クラウドサービスを主体とした売上高ランキングに社名が出てくることはないが、そのランキングに名を連ねているクラウドサービスプロバイダーの多くに、当社の技術や製品が採用されている」

 さらにウェブスター氏は、クラウドの中でもハイブリッドクラウドの構築に注力していることを強調した。

 「EMCは今後、ハイブリッドクラウドが企業のIT環境の中心になっていくと見ている。クラウドと言うと、AWSをはじめとしたパブリッククラウドが注目されがちだが、企業の多くが自らのIT環境を全てパブリッククラウドに移行するのは難しいと感じている。現実的には、これまで投資を続けてきたオンプレミスのシステムと、自社で運営するプライベートクラウド、そしてパブリッククラウドを効果的に組み合わせてハイブリッドクラウドを構築するのが、多くの企業にとって最適解だ。EMCはそうしたハイブリッドクラウドの構築に向けて、柔軟性と選択肢を提供していけるベンダーでありたいと考えている」

幅広い選択肢を提供する水平協業展開

 ここまでのEMCのクラウド戦略におけるウェブスター氏の説明は明快だ。だが、ここからが筆者の疑問の核心である。EMCと同様のIT総合ベンダーであるIBMやHP、Oracle、富士通などは、クラウド向けに技術や製品を提供するとともに、クラウドサービスにも注力している。ソフトウェア大手のMicrosoftやSAPも然りだ。各社がこぞってクラウドサービスに注力するのは、サービスこそがクラウド市場の主導権を握る最大のポイントだと考えているからだ。

 ウェブスター氏は先に「EMC自身がクラウドサービスプロバイダーになることはない」と語ったが、果たして今後もクラウドサービスを手掛けることはないのか。それでクラウド市場の主導権を獲得していけると考えているのか。同氏はおもむろにこう答えた。

 「ユーザーがクラウドを利用する上で、いかに柔軟性と選択肢を提供できるかが、EMCのクラウド戦略の根本だ。そのためのビジネスモデルとして当社が推進しているのが、協業パートナーとのエコシステムをベースとした水平協業展開だ。自らクラウドサービスを手掛ける競合他社のビジネスモデルは垂直統合展開で、これでは真の柔軟性と選択肢を提供することはできない。真の柔軟性と選択肢は、多くのクラウドサービスプロバイダーと協業することで提供できるものだと私たちは確信している」

 山野氏が続けて、こんな話をしてくれた。

 「特にパブリッククラウドサービスでAWSが先行していると言われるが、協業パートナーであるクラウドサービスプロバイダー各社に話を聞くと、どこもAWSのサービスを研究し尽くしており、対抗する部分と信頼性やサポートで差別化を図る部分を詳細に決めてサービスメニューに反映させている。これからは群雄割拠のクラウドサービス市場になるのではないか。EMCはそうした最新の動きを取り入れながら、水平協業展開によってユーザーに真の柔軟性と選択肢を提供できる唯一のベンダーだと自負している。これこそがEMCのクラウド戦略における最大の差別化ポイントだと考えている」

 EMCのクラウド戦略の事業展開におけるキーワードは「水平協業」と言えそうだ。これまで触れてこなかったが、VMwareやPivotalといった有力なグループ企業もその核となる。水平協業を推し進めることで、ユーザーに幅広い選択肢を提供しようという戦略は、既に多くの協業パートナーに支持されている。

 ただ、この戦略を今後も引き続き推進していくためには、EMCが常に最新のクラウドに適用できる洗練された技術や製品を提供していくことが絶対条件となる。そのレベルが落ちれば、水平協業はたちまち立ち行かなくなる可能性がある。EMCならではの独自の戦略が果たして大きな成功につながるか、注目しておきたい。

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