グループウェアとSFAの連携に見る新たな市場競争の幕開けWeekly Memo

国内導入実績でトップクラスのグループウェアとSFAの相互連携が実現した。これによって、新たなステージでの市場競争が幕を開けそうだ。

» 2014年08月11日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

「desknet's NEO」と「eセールスマネージャー」が連携

 ネオジャパン、ソフトブレーン、ジェクシードの3社が8月5日、グループウェアとSFA(営業支援システム)の相互連携を通じた企業の営業力と連携力の強化を実現するために、業務提携を結んだと発表した。

 ネオジャパンのグループウェア「desknet's NEO」とソフトブレーンのSFA「eセールスマネージャーRemix Cloud」をジェクシードのスケジュール同期ツール「GX_Sync」により連携させ、登録されたスケジュール情報のシームレスな相互連携を実現した形だ。

 これにより、営業担当者がSFAにスケジュール登録し営業活動を行うだけで、グループウェアにスケジュール情報が同期され、全社での情報共有が可能となる。また、両システムへの入力の手間が省け、営業力強化と全社での情報連携強化を図ることができるとしている。(図1)

図1 3社による連携イメージ(出典:3社による提携発表資料) 図1 3社による連携イメージ(出典:3社による提携発表資料)

 desknet's NEOは、組織内の情報共有とコミュニケーションの改善に役立つ25のアプリケーションを標準搭載したWebグループウェアである。マルチデバイスに対応しており、最近ではソーシャル機能も取り込んで一段と使いやすさを追求している。

 eセールスマネージャーRemix Cloudは、業種を問わずそれぞれの企業に合った営業プロセスを設計し、計測、改善を繰り返しながらマネジメントを行う「プロセスマネジメント」によって、組織営業力を強化するクラウド型SFAである。スマートフォンや携帯電話からのスケジュールや履歴の確認、活動報告を簡単に行えるのが特徴だ。

 GX_Syncは、グループウェアやSFAなどに登録されているスケジュールおよびToDoデータを単方向/双方向で自動同期するソフトウェアである。複数のスケジュール管理機能を持つ製品間のデータ連携を行うことにより、スケジュールの二重入力の手間や重複登録を防ぎ、業務効率を向上できるとしている。

 この提携で注目されるのは、desknet's NEOおよびeセールスマネージャーRemix Cloudが、グループウェアおよびSFAとして国内導入実績トップクラスの製品であることだ。desknet's NEOは導入社数を明らかにしていないが、290万ユーザー以上との利用者数を公表。また、eセールスマネージャーRemix Cloudは2000社以上との導入社数を公表している。それぞれ競合他社との激しいシェア争いを繰り広げているが、成功事例も多く、広く普及している製品である。

SNSを取り込んだ新たなステージでの競争へ

 どの企業にとっても営業力と連携力を強化したいというニーズは必ずある。グループウェアとSFAを相互連携させることでそうしたニーズに応えようというのが、今回の3社による提携の狙いだ。が、その背景にはこの分野におけるソフトウェア市場の新たな動きとして、企業向けSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が台頭してきたことも影響がありそうだ。

 その企業向けSNSについて、IDC Japanが先頃、興味深い調査結果を発表した。「国内ソーシャルビジネス関連市場予測」と題したその調査では、ソーシャルビジネス関連市場について、「コラボレーション」「CRM(顧客情報管理システム)」、そしてERP(統合基幹業務システム)を中心とした「ERM」のソフトウェア市場のうち、ソーシャルネットワーキング技術に関わる14の機能分類を抽出し、各分類の市場での利用状況を踏まえてそれぞれ一部を取り出して合算したコンペティティブ市場と定義している。

 つまりは、企業向けSNSは単独のソフトウェアではなく、コラボレーションやCRMなどに機能として取り込まれていくことを想定した捉え方である。ちなみに一般的な解釈では、コラボレーションにはグループウェア、CRMにはSFAがカテゴリーとして含まれる。その点でいうと、今回の3社による提携もこの調査領域と関係が深い動きと見て取れる。

 IDCによると、同社が定義した国内ソーシャルビジネス関連市場は、2013〜2018年の年間平均成長率で39.8%と高い伸びが見込まれるという。したがって、今回の3社による提携もこの高成長市場を取り込もうという思惑があるものと推測される。(図2)

図2 国内ソーシャルビジネス関連市場 2012〜2018年の売上額予測(出典:IDC Japanの発表資料) 図2 国内ソーシャルビジネス関連市場 2012〜2018年の売上額予測(出典:IDC Japanの発表資料)

 こうした今後の市場の動きが見込まれる中で、国内導入実績トップクラスのグループウェアとSFAが相互連携したことは、企業向けSNSを取り込んだ新たなステージでの市場競争において、競合にとっても脅威となるだろう。

 ただし、新たなステージでは、コラボレーションとCRM、そして企業向けSNSも併せ持つMicrosoftやSalesforce.com、SAPといった外資系大手が競合として立ちはだかる。その中で今回提携した国産3社が、これまでの顧客ベースを起点にどのように勢力を拡大させていくか。ここはひとつ、外資系大手に引けをとらず、海外展開にも打って出るような気概に期待したい。

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