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» 2015年04月03日 08時00分 UPDATE

テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」:第8回 その依頼、「少し雑」ですよ

日本の担当者は「丸投げ」?── すべてを委ねられるSIベンダーが多く、日本特有のSI構造である事情はあるが、ともあれ欧米企業との大きな違いはどこにあるのか。その経緯と理由、対策を考えてみる。

[小川大地(日本HP),ITmedia]
photo 悪循環を断ち切っていきましょう

 前回ご紹介したサーバのECOモードですが、私の感覚では日本で稼働しているかなりの数のサーバがデフォルトのまま、つまりリミッターがかかったままの状態なように思います。

 もちろん、すべての環境で性能が大幅低下するとは限りません。理解した上で有効にしているのであればよいのですが、「知らなかった」「損をしていた」とショックを受けるユーザーの声をいまだ耳にします。ECOモードを適切に使ってもらうよう、メーカー各社は様々な努力をしているのですが、まだまだといったところです。

 管理者はこういった機能の存在にどうして気づかないのでしょう? 欧米の場合を想像しながら、理由と対策を考えてみました。


その依頼、少し「雑」ではありませんか?

 理由の1つとして考えられるのは、システム構築を担当者自身で行わず、他人に頼んだということです。サーバのBIOS設定などはシステム構築を請け負ったSIベンダーも自身では作業せず、“ハードウェア”というくくりでケーブル配線やラッキングとともに力作業として別の業者に委託してしまうことがあります。伝言ゲームのような日本特有のSI構造が災いしているようにも思えますが、「他人に頼む(アウトソースする)」ということ自体は万国共通です。欧米企業は確かに自社で構築しますが、BIOS設定からアプリケーションまですべての構築作業を1人で担当するわけではありません。

 では、欧米企業との違いはどこにあるのでしょう。欧米企業では、他人に依頼する際に(意外にも)BIOS設定といった部分まで細かく指示します。一般的には日本人の方が細かい性格とされるにも関わらず、実際の指示内容は“丸投げ”……。そう揶揄される通り、雑に依頼してしまうことが多いのです。

 これは、採用した製品の機能を顧客担当者が知らなすぎることにあるでしょう。厳しい言い方ですが、OSの標準機能でどこまでできるかよく知らない、ハードウェアでどのような調整ができるかも知らない。機能の存在を知らなければ指示はできませんし、SIベンダーも依頼されていない作業を勝手に実施することはありません。

ならば、製品知識を身につけるにはどうすればいい?

 欧米企業では、ハードウェアやソフトウェアといった製品を調達する際に「ナントカAdministration」といったシステム管理者向けの製品トレーニングを受講するのが一般的です。

 同様の有償研修は日本でも行われています。しかし、管理者向けコースにも関わらず受講生の大半はSIベンダーの構築担当者という不思議な状況になっているそうです。確かに日本には多数のSIベンダーがあり、資格取得のために必要なのかもしれません。しかしながら、本来受講すべきエンドユーザーが製品トレーニングを満足に受けていないのが現状のようです。

 これらのトレーニングは有償であり、決して安価でもありません。しかし、前回の例のように、リミッターに気づかずCPU 1個あたり20万円も無駄にしてしまうのならば、その差額で運用管理者がトレーニングを受けた方が人材育成の面でも価値があるのではないでしょうか。

photo ITインフラ担当者の好循環

 もっとも、研修費用を工面しにくい事情や状況もあるでしょう。それでしたら、メーカー主催の無償セミナーやイベントに参加してみるのはいかがでしょう。技術系セッションは第1回で紹介したプリセールスが講師を務めるケースが多いです。プリセールスは非常にたくさんのお客様に接する職種なので、この経験を生かした事例やベストプラクティスを教えてもらえるかもしれません。また、実商談がないとなかなか表れない“レアキャラ”と「市場動向」など商売抜きの話もできますし、よい機会だと思います。

 「セミナーに参加している時間なんてない!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。だからこそ、以前紹介した「機械化」で進めて悪循環から抜け出す必要があります。

 日本でITインフラの技術者向けイベントやセミナーを開催すると、参加者の6〜7割がSIベンダーになりますが、米国ではエンドユーザーが約7割を占めるそうです。米国にSIベンダーが少ないというだけではここまでの差にはなりません。

 機械化の促進で時間に余裕ができ、製品知識を習得することで正しい判断と指示出しが可能になる。これによって無駄なコストが削減される。さらなる前向きなIT投資が可能になるはずです。

 これからは、Software-Definedやクラウドが増えていくのは明白です。新しい知識を習得するのは大変ですが、悪循環を好循環に変えて乗り切っていきましょう。


小川大地(おがわ・だいち)

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日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション



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