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» 2016年04月21日 07時00分 UPDATE

日本型セキュリティの現実と理想:第21回 戦艦大和の防御構造に学ぶ効率的な守り方(後編) (1/3)

前回は、世界最大の大砲と防御力を持つ戦艦「大和」が艦隊決戦を想定した設計だったことによる悲劇について述べたが、今回は「大和」の防御思想や防御構造が現在の情報セキュリティ対策の参考になる部分について掘り下げよう。

[武田一城,ITmedia]

情報セキュリティにも有効な集中防御方式

 前回は、「大和」が世界最大の大砲を装備しながら、大砲の口径などの仕様からすると、極めて小さな構造にできたという点を述べた。この秘訣は、当時のライバル戦艦と異なり「集中防御方式」を採用したことだ。この方式は重要な部分を集中的に防御することで、致命的な箇所への被害を防ぐというのが最大の特徴であり、コンパクトにできた要因だ。

 コンパクトになれば艦自体の重量が減り、スピードが向上するし、スピードを出すための機関部も小さくできる。面積や体積が減れば、相手から的になる部分が小さくなり、攻撃を回避できるということになる。これは、情報セキュリティにもあてはまるだろう。企業はビジネスの競争力を確保するために絶えず新たなシステムを導入するが、その都度セキュリティ対策が必要になる可能性がある。セキュリティ対策のリソースは無限ではないし、既存システムでも攻撃手法の巧妙化などによって対策しなくてはならない範囲が拡大する。その拡大を何らかの手段で止められなければ、企業はコストに耐えられずに業績が沈んでしまう。

senkanyamato.jpg 戦艦「大和」(Wikipediaより

 このような状況に陥らないためには、守るべきものを明確にし、それができるだけ外部からの攻撃に晒されないようコンパクトに、守りやすく、バランスのよい構造を作る。その上で堅い防御構造を作るという、「大和」の集中防御がセキュリティ対策にも参考になる。

 「大和」は、その戦果の少なさと悲劇的な最期から“無用の長物”と揶揄されることもあるが、それは計画時に艦隊決戦を想定していて、実際にそれが起こらなかっただけに過ぎない。それこそが最重要だと言う意見ももっともだが、それは戦勝国の米国も変わらず、世界中がその想定違いをしていた。「大和」の性能だけを見ると、世界最大の18インチ砲を持ちながら、船体を非常に小さく、このような大口径の砲塔を持つ戦艦の宿命(「大和」の場合、駆逐艦1隻ほどもある重い砲塔を船体上に置く)である重心の問題も解決できた。

 決して高速ではないが、この6万4000トンの重量でありながら、空母の巡航速度について行ける27ノットという速度をもち、艦隊運動に支障のない安定した運動性能(旋回半径も小さく、全速でUターンした場合でも船体は9度しか傾かないと言われる)を持つ。高速巡航に特化したことで、全速時に主砲の発射ができないなどのバランスを崩してしまった米国のアイオワ級戦艦とは対照的だ。

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