IoTや人工知能といった先端技術を使って、どのように新ビジネスを生み出すのか。ヤマハと富士通の共創プロジェクトから、この難題に対するヒントが見えてくるかもしれない。
「落ち込んでいるときにポジティブな音楽が流れる」「10年ぶりに訪れた観光地で、10年前に聞いていた音楽が鳴り、昔の記憶がよみがえる」
利用者がおかれた状況を理解し、その状況に最適な音をフィードバックする“知性を持った音”が人に新たな感動を与えてくれる――これがIoTや人工知能を活用した新たなサービスとして、ヤマハが富士通と共同で生み出した次世代の製品コンセプト「Sound Intelligence」だ。イヤフォンやマイク、スピーカーなど、コンセプトを実現するためのプロダクトも提言している。
技術の進歩が激しいIoT時代に、人々に受け入れられる新たなビジネスを作り出すにはどうすればいいのか。この数年、プロジェクトを通じてヤマハはこの問題に向き合ってきたという。2017年5月に行われた富士通フォーラムで、その道のりと方法論が語られた。
教育現場向けボーカロイド、外国人向け自動翻訳アプリなど、さまざまな新規事業を展開しているヤマハ。今回、富士通と手を組んだのも、楽器や音響機器にITを組み合わせ、未来の「音」の可能性を探るという狙いが大きい。新規事業の可能性を探る「Future Sound & Music」プロジェクトでリーダーを務める多田幸生氏は、次のように話す。
「MIDIの時代から、楽器や音楽がデータ化され、今では楽器がインターネットにつながるようになりました。私たちはそれだけではなく、楽器のWoT(Web of Things)、つまり楽器がWebというプロトコルを通じて、あらゆるモノとつながる可能性を検討しています」(多田氏)
Future Sound & Musicプロジェクトでは、ドローンレースのイベントで、ドローンの動きを音に変換して会場に流したり、靴のインソールに埋め込んだセンサーを使って、人の動きを音に変換したりと、さまざまな“実験”を行ってきた。実験を重視するのは、時代とともに、新たなサービスを世に広めるアプローチが変わってきたためだ。
「MIDIの例でいえば、これまでは規格が決まってからプラットフォーム(楽器)や事例などが生まれてきたわけですが、今はデジタル化によって、ソフトウェアアップデートで新たな規格へ対応できますし、ハードウェア開発のハードルも下がっています。これからは、いろいろな事例にチャレンジする中で、プラットフォームや規格が生まれてくると考えています」(多田氏)
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