本格化が予想されるスマートスピーカー市場に後発で切り込んだAppleの「HomePod」。独自なアプローチに関心が集まる一方、サービス支配論理で見るとAppleが直面する課題が見えてきます。
この記事は山崎秀夫氏のブログ「インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング」より転載、編集しています。
いよいよスマートスピーカーがキャズムを超えて、市場が立ち上がり始めているようです。
この記事によると、米国では対話型のAI「Alexa」を搭載した「Amazon Echo」の販売が好調で、2016年末まで販売台数は累計1000万台を突破。「Google Assistant」搭載の「Google Home」も参入し、この市場に注目が集まっています。
スマートスピーカー市場は2017年6月時点で、Amazon、Googleの2社がシェア95%をおさえているとのこと。さらに、Microsoftも「Cortana」搭載の「Invoke」を携えて参入しています。
国内でも、2017年内にAIスピーカーの発表を目指すというソフトバンクや、この夏にスマートスピーカー「WAVE」を発売予定とするLINEが参入。また、NTTドコモも、NTTグループの粋を集めて開発したAI技術を搭載した「petoco(ペトコ)」の開発を発表し、シャープも家電の音声操作システムで参入予定となっています。
そうした中、AppleがWWDC 2017で「HomePod」を発表しました。その特徴は、ライバル商品の2〜7倍にあたる349ドルという価格と、音質の良さを前面に出すアプローチです。
ただし音楽は、現状ではApple Musicだけを対象とし、「Spotify」などの音楽配信サービスのアプリの品ぞろえは欠いています(多分、将来的には、アプリ開発をサードパーティーに開放するのでしょうけども……)。そのため、いわゆる「サービス支配論理」でいうと、Amazon Echoなどに劣っているといえます。
米国のStone Temple Consultingが、Appleの「Siri」、AmazonのAlexa、GoogleのGoogle Assistant、MicrosoftのCortanaを比較したところ、Google Assistantが圧倒的に優れていたという結果を発表しています。5000種類の質問に対して、Google Assistantは約68%に応答し、内容正解率は約90%でした。一方、Siriは、約21%にしか応答できず、正しく反応できたのは約62%。Siriの正解率は、Cortanaより劣る結果となっています。
アプリの品ぞろえが少ない、音声応答のAIアシスタントのサービス品質が劣る、その上でハードウェアの価格が2〜7倍高いというHomePodのアプローチは、一昔前の国産メーカーのスマートテレビやスマートフォンのアプローチによく似ています。そのアプローチは、明らかに「モノ支配論理」であり、「iTunes Store」などのアプリの充実でリードしていた頃のiPhoneのサービス支配論理とは全く逆のアプローチです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.