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» 2017年12月07日 07時00分 公開

Mostly Harmless:RPAって、非効率なシステムを温存することになったりしないのか

RPAの導入で単純作業を自動化するのは効果的だが、非効率なシステムを温存することにならないよう、業務プロセスそのものやワークフローの見直しから取り組むべきケースも少なくない。

[大越章司,ITmedia]

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。


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 先日のITソリューション塾で、今、話題のRPA(Robotics Process Automation)を取り上げたところ、その後の飲み会で、「RPAって、非効率な業務システムを生きながらえさせることになるのではないか?」という話になりました。

 RPAは、事務効率を向上させるためのオフィス向けのソリューションで、人間がPC上で行う操作を自動化して効率化しようというものです。

 ただPC上の操作を自動化するだけであれば、Excelなどで使うマクロや、アプリケーションをまたいで操作を自動化するツールなどが昔からあります。私としては、これらにAIの要素をプラスして、インテリジェントな自動化(自分で学習してプロセスを進化させていく)を図ることがRPAのキモだと思っていたのですが、どうも現状の使われ方はそうでもないようです。

 今報道されているRPA導入の成功例は、生命保険会社や銀行などでの事例が多いようです。

 この記事によると、データベースの数値をコピペするといった単純作業が果てしなく続いていたのだそうで、

例えば、さまざまなデータベースや記録にアクセスして、証跡を残さなければならない業務では、複数回のシステムへのログインや、データの移動といった手順を経なければならない。単純作業に多くの手がかかっている領域だ。

といった問題があったため、これを自動化することで、ものすごく業務の効率化になると。

 まあ、それはそうなのでしょうし、ITを使って単純作業を効率化するのは別に間違ってはいないと思うのですが……。

BPRで対応すべき案件では?

 しかし、なんだかモヤモヤします。何かおかしくないでしょうか? 記事では業務手順の詳細や目的が書かれていないのでよく分からない部分はありますが、そもそも、「データベースの値を人間がコピペする作業を延々と繰り返す」という非効率なワークフローがいまだに続いていることが驚きです。何のためにそんなことをしているのか。何か規制でもあるのでしょうか……。

 もし、規制のせいだとすれば、規制の要件を見直せばいいですし、そうでなければ業務プロセスそのものを見直して(つまりBPR)、ワークフローを根本から変えるべき案件なのではないかと思います。

 それが無理でも、DBやサービス間のデータ移動を自動化するなど、クライアント側のRPAで対処するのではなく、サービス側にRPAの仕組みを組み込むのが、まず考えるべきことなのではないでしょうか。

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 それをせずに、非効率なシステムを隠蔽(いんぺい)するかのように小手先の自動化(というとRPAかいわいの方々から怒られそうですが……)で逃げるのでは、この非効率なワークフローが、また今後何十年も手を付けられずに生き残ることにならないでしょうか? しかも、それをRPAで解決できる大手企業は効率化が進み、そうでない中小企業は相変わらず……、ということになれば、企業間の格差が広がる一方です。

 規制などは行政との絡みもあるでしょうから、システム(ITシステムではなく、処理全体)を変えるのは大変なのかもしれませんが、それにしても……。(「そんなの理想論だよ」という声も聞こえてきそうですが、)ペーパーレスとか、行政が推進する効率化とか、何十年も前から言われているのに、全く進んでいないということですよね(そして、これからも進むことはないというか、その気がないというか……)。

 こちらの事例も同じです。「紙をなくせないのでOCRとRPAで何とかしました」、ということです。

 そうではなく、紙をなくすことを考えないと! まあ、それができないから、このようにやっているのでしょうが。現場は大変そうです。

アメリカのRPAは狙いが違う?

 銀行や生保の例は、「問題先送り」「現場合わせ」という、まことに日本的な解決ということもできそうです。多くの人が単純作業から解放されるのはよいことですし、こういう自動化なら、「職を奪われる」という不安を煽ることなく、「非人間的な仕事をITがやってくれる」という構図になります。

 アメリカのRPAの会社のプロモーションビデオで面白いものを見つけました。彼の地でも似たようなことをやっているようです。

 ただ、アメリカの雇用形態は日本と異なり、採用時点で業務内容が決まっているので、この人たちが単純作業から開放された結果、他の職種に就けるかどうかは保証の限りではないでしょう。この動画は、「自動化することでクビを切りましょう」という、経営者向けのアメリカ的なアピールなのかもしれません。

著者プロフィール:大越章司

外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら


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