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» 2018年02月07日 14時30分 公開

実用化は目前!?:より漆に近づき、傷に強くなったNEC「漆ブラック調バイオプラスチック」の秘密

バイオプラスチックの実用化に向けて開発を続けているNECが、より傷に強く、高度な蒔絵(まきえ)調印刷を実現した漆器調バイオプラスチックを発表した。

[田中宏昌,ITmedia]

日本の漆文化を再び世界に広める

 NECは2018年2月6日、非食用植物が原料の「セルロース樹脂」を使って漆器の色合いを表現した「漆ブラック調バイオプラスチック」の開発において、傷が付きにくく、漆特有の深さと温かさ、さらに高度な蒔絵(まきえ)調印刷を実現したと発表、京都産業大学の教授で漆芸家の下出祐太郎氏を招き、説明会を開いた。

photo 傷に強く、立体的な印刷を実現した「漆ブラック調バイオプラスチック」
photo NECが開発を続けるバイオプラスチックの歴史

 同社では、地球温暖化の要因とされるCO2排出量の抑制と、高い装飾性を両立させるべく研究を続けており、2016年にその成果として「漆ブラック調バイオプラスチック」を発表した(参考記事:ITの力で“漆黒”の質感を再現 NECは「漆プラスチック」をどう開発したか)。

 今回、そこで得たフィードバックを基にして、漆ブラックの高光沢かつ低明度といった光学特性を保ちながら、布や紙でこすっても傷が付きにくく、耐傷性を高めることに成功した。従来はガーゼなどで拭き取ると白く傷が付いてしまったプラスチックに、塗装や高硬度化ではなく、添加成分の配合率や分子構造を最適化することで摩擦を大幅に低減。ポリカーボネートに近い耐傷性を得たという。

photo 高い光沢度を維持しながら傷に強くなった
photo 添加成分を細かく調整することで、耐傷性と光学特性の両立を図った

 また、最高級の蒔絵を忠実に再現すべく、精緻かつ立体感のある蒔絵調印刷を実現した。具体的には、蒔絵をデジタル画像処理し精緻な原画を再現して、それに適したインクの組成や印刷条件を最適化することで、通常の印刷では100ミクロン程度にとどまるが、今回は250ミクロンまでなだらかな高さを再現できるようにした。さらに特殊な金属粉を利用することにより、品のある金色の表現も可能になったという。

photo 万年筆のような曲面印刷も行える。バイオ素材のインク利用は今後検討していくとのこと

 漆芸家(下出蒔絵司所三代目)で京都産業大学教授の下出祐太郎氏は、「ヨーロッパには漆のような天然素材が存在せず、漆や蒔絵漆器、びょうぶなどは東西交流で重宝されていた。漆が生み出す黒は憧れの的で、ピアノブラックのモデルとなった。しかし量産化は難しく、漆器や蒔絵の文化を今の世代にどうやって継承していくのかという大きな課題もある」とし、「漆ブラック調バイオプラスチックは、漆の国である日本オリジナルの再発信だけでなく、漆の美しさを再認識してもらえるきっかけになる」と期待を語った。

photo 漆芸家の下出祐太郎氏
photo 下出氏の漆器作品

 NEC IoTデバイス研究所 研究部長 辻正芳氏は、漆ブラック調バイオプラスチックの将来として、「より付加価値の高い製品へ広げていき、実用化に向けてさまざまなパートナーと連携したい。そして、2020年に向けて日本が持つ高度な技術や伝統芸能を世界に広め、CO2の削減などの地球温暖化対策に貢献する」と抱負を語った。

photo 高装飾性バイオプラスチックの目指す将来。高付加価値だが、一般に普及するものを作っていきたいという

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