Windows 10への移行、約半数が間に合わない? IDCが予測、このままではXPの二の舞いに

IDC Japanが、2020年1月に迎えるWindows 7の延長サポート終了に向けた市場動向について調査結果を発表した。Windows 10への移行は道半ばだ。

» 2018年03月08日 16時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

Windows 7がEOSを迎える前に早めの対応と計画を立てる必要がある

 Windows 7の延長サポート(EOS:End of Support)が、2020年1月14日に終了する――しかし、IDC Japanの調査結果によると、同時期に稼働している法人向けPCのうち、約半数しかWindows 10への移行が完了していない見込みだという。

photo Windows 7がEOSを迎える2020年上半期において、法人向けPCでWindows 10への移行が完了しているPCは51.5%にとどまるという調査結果

 2018年3月8日、IDC JapanがWindows 7の延長サポート終了に向けた市場動向について「国内企業PCのWindows 10への切り替え計画分析結果 〜2020年のWindows 7の延長サポート終了に警鐘を鳴らす〜」と題した発表会を開催した。本調査は、2017年9月に日本国内の861社から回答を得て分析を行ったもので、従業員規模が500人以上をラージ(大企業)、2人〜500人未満をSMB(中堅中小企業)、学校や政府自治体をパブリックと区分している。

photo IDC JapanのPC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 浅野浩寿氏

 同社のPC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 浅野浩寿氏は、「2020年1月に延長サポートが終了するWindows 7について、大企業やパブリックでは約80%と認識・理解が進んでいるが、SMBは約70%と10ポイント前後下がっている。SMBを細かく見ていくと、建築や土木業が比較的低い状況だった」と現状を説明。

photo Windows 7に延長サポートが終了することを把握している企業は、約8割にまで広がった

 「Windows 10への移行計画については、Windows 10の移行が完了済みと移行計画があるを合計した数値を見ていくと、2017年3月に発表(調査自体は2016年7月実施)したほぼ同様の調査結果と比較し、大企業が45.8%→62.8%と15ポイント、SMBが28.8%→49.1%と約20ポイントも改善している。全体を見ても、55.2%と半数以上で移行計画がある一方、SMBは移行計画がない、分からないが合わせて29.2%もあるのが気になる。PCベンダーによると、市場に出荷されているWindows 10搭載PCの比率は、2017年春頃は55%前後だったが、夏以降は75〜78%まで高まったことを考えると、企業でWindows 10への移行が進んでいると思われる」とし、「Windows 10への移行時期を見ていくと、大企業はEOS前の2019年上半期までに移行を計画しているが、SMBは低いままで推移しているのが分かる。大企業はWindows 10への移行を計画的に進めているが、SMBは景況感や年度末の業績によって左右される傾向があるので、中長期での計画がまばらで、パブリックもそれぞれが所属する議会で予算が承認、執行されるため、SMBと同じような形で2020年以降に切り替える予定が多いのだろう」と浅野氏は分析する。

photo Windows 10への移行計画は、大企業ほど進んでいるが、SMBは約半数が不明となっている
photo Windows 10への移行時期については、大企業がEOS前の2019年中に予定を立てている割合が高い

 このような状況は、2014年4月にEOSとなったWindows XPの時と比べてどうなのだろうか。

 浅野氏は「Windows 7がEOSとなる2020年の上半期(1月〜6月)の数値を見ると、それぞれのセグメントで移行計画が10%前後もあり、Windows XPのEOSと同じ傾向にあるのではと考えている。以前行った、なんで急にXPから7に変えたのかという調査結果では、サポートが切れてもそのまま利用できると考えていたという内容が多く、Windows 7のEOSについても2020年1月以降でもPCをそのまま使えると考えている企業が多いと思われる。そのため、XPのEOS終了以降に発生した駆け込み需要などが発生してしまう可能性があるが、サイバー攻撃は当時より格段に激しくなっており、XPの時のような同じ過ちを繰り返すのはかなりのリスクだ」と指摘する。

photo 前回の調査(2016年)に比べ、Windows 10への切り替え予定がある企業が増えているのが分かる

 IDC Japanでは、法人向けPCで稼働している台数は国内で3400万台程度とみている。「2016年の調査と比較して、Windows 7 EOSの認知度や認識は確実に上がっているが、あくまで切り替え予定のある企業が対象の話であり、稼働台数ベースではどうしても低くなってしまう。今回の調査では、Windows 7がEOSを迎える前の2019年6月〜12月(2019年2H)でWindows 10に切り替わっているのが49.3%、2020年1月〜6月(2020年1H)でも51.5%と稼働台数の半分近くが10になっていない想定だ」(浅野氏)

 調査結果を見ていくと、2020年の上半期(1月〜6月)中に、PCをWindows 10ベースに切り替える予定がある企業は大企業で約55%、SMBとパブリックは50%前後という数字にとどまる。全体で見ても、計画不明が720万台(約21%)、移行計画がないが350万台(約10%)、分からないが310万台(9%)となっており、これらの移行計画を具体化する必要があると浅野氏は語る。

photo 2020年の上半期(1月〜6月)時点で、Windows 10に切り替える計画がある企業は全体で51.5%にとどまり、約1700万台のPCがEOSを迎えてしまうという

 さらに「Windows 7のEOS以降もPCを利用できると踏んでいる企業が多いので、前倒しで移行計画を立てないとまずい状況になってしまう。XPでは総務省から切り替えの指示があったのはEOSの約半年前、日本マイクロソフトのアナウンスも約1年前だったが、市場は大きく混乱してしまった。逆算すると2019年からでは遅く、2018年中に対策を進めないと全国的な広がりは生まれないのではと想定している。OSだけでなく、普段利用しているアプリケーションの検証を早めに行わないと業務に支障をきたしてしまう」(浅野氏)

 そして「XPの時は大きなピークがきてIT予算が膨らんでしまったが、それは他のIT予算や会社の経費全体に対して大きな負担になるため望ましい形ではない。今回はそれを学習して平準化すればXPのときほど大きなピークが来ないだろうとは予測しているが、2018年の取り組み次第では変わる可能性がある。特にSMBの経営層は、なんで使えるPCを買い換える必要があるのかと考える傾向が多いかもしれない。そこで、IT管理者はセキュリティの危険性やネットワークに安全につながる必要性を経営層に提言できるかがカギになる。昨今の働き方改革は、そもそもネットワークに接続できないと成り立たないし、そういった意味でもWindows 7のEOSまでにWindows 10へPCを切り替える必要がある」と警鐘を鳴らした。

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