本気の働き方改革は、“若手の本音”から始まる――企業を超えた「ミレニアルプロジェクト」を日本マイクロソフトが始めた理由「ツールではなく、企業のマインドを変えていきたい」(1/2 ページ)

日本マイクロソフトは、社内の「ミレニアル世代」を対象に、働き方やITツールについてのアイデアや本音を引き出すディスカッション型プロジェクト「ミレニアルプロジェクト」を開始した。他社にも広がり始めたその内容とは?

» 2018年11月22日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

 「仕事を指示してきた年上の同僚が複雑なExcel表を作っているのを見て『Microsoftのツールを使えばもっと簡単にできるのに』と思った。相手に遠慮して直接は言えなかったが、部署によってツールの活用に格差があるのでは」

 「プライベートのボランティア活動に集中したい時期がある。求められる成果に応じて、自分の肩書や場所、時間に縛られない働き方ができないだろうか」

 「あらゆるプロジェクトにインパクト(効果)が重視されるが、実際にやってみるまで効果が分からないようなプロジェクトにも取り組ませてほしい」

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 2018年8月、オフィス向けインテリアを扱うSteelcaseのショールームの一角に設けられたソファセットに、日本マイクロソフトの若手6人が集まっていた。カラフルなファッションの学生インターンや、入社6年目でバリバリ仕事をこなす営業部員、クールビズのスーツにビジネスバッグで参加した「普段は地方勤務」という若手社員。仕事はそれぞれ違っても、彼らには「ミレニアル世代(※)」という共通点がある。

(※)一般的に、1980年代〜1990年代生まれで、2000年以降に成人を迎える世代。幼いころからコンピュータや電子機器に親しんで育ったという特徴がある。

 「今の働き方についてどう思っているか、遠慮せずに本音をどんどん言ってほしい」と進行役の社員に声を掛けられると、最初は戸惑い気味だったものの、数分するとぽつぽつと本音を語り始めた。

 働き方の理想から現場で直面した課題まで、2時間話し合って出た話題は数十件余り。参加者の一人は、「実際に自分の出したアイデアが形になるかどうかは分からない。それでも、自分たちの意見を真剣に聞いてくれる場があるのはうれしい」と目を細めた。同僚と一緒に進行役を務めた山本築氏は、「今回は、会場を社外にすることで、皆が本音を言いやすい環境を作りたかった。社内や社外を含め、ミレニアル世代のコミュニティーを広げていきたい」と話す。

photo 話し合いの進行役を務めた、日本マイクロソフトの山本築氏

2018年に始まった「ミレニアルプロジェクト」とは?

 Steelecaseで行われた話し合いは、日本マイクロソフトが2018年7月から取り組み始めた「ミレニアルプロジェクト」の一環だ。同プロジェクトは、社内のミレニアル世代が働き方について自由に意見交換できる場を設け、新たなアイデアにつなげていく。

 同社から始まったプロジェクトは、他社のミレニアル世代も巻き込んで働き方推進を目指すコミュニティー、「MINDS(Millenial Innovation for the Next Diverse Society)」として、2019年1月に正式に発足予定だ。

 MINDSには、業種の異なる企業が名を連ねる。日本マイクロソフトと共同で運営を担う電通デジタルの他、味の素、カブドットコム証券、日本航空、コネクティッドソリューションズ(パナソニック)、JR東日本グループ、三菱自動車工業の参加が決まっている。

photo 「MINDS」に参加する各社のうち、(左から)味の素、カブドットコム証券、電通デジタル、日本マイクロソフト、日本航空、コネクティッドソリューションズ(パナソニック)から集まったリーダー役の社員たち。2019年1〜12月を区切りとして、企業の垣根を越えた働き方のディスカッションやアイデア創出に取り組むという

 ミレニアルプロジェクト自体は、日本マイクロソフト社内で始まってから常に変化を続けてきたという。企画段階から関わり、自身もミレニアル世代である石田圭志氏は、2018年8月の時点で「当初は『ミレニアル世代の働き方を世の中に発信しよう』と簡単に目標を定めていたが、実際にメンバーの意見を聞いてみると、むしろ『外のコミュニティーとつながりたい』など、自分たちの想定を越えてさまざまな意見が出てきた。

 今はむしろ、良い意味で明確なゴールや期限を設定しないことで、若手が自由に出したアイデアや意見にも柔軟に対応していきたい」と話していた。

 とはいえ、あらゆるプロジェクトに最初から明確な成果を求める外資で、あえて「ゴールを定めない」プロジェクトを始めた理由とは何なのだろうか。

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