迷惑メール時代から見た「メッセージF」の可能性神尾寿の時事日想

» 2005年03月22日 10時34分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 B2C企業の活動にとって、携帯電話の存在感は日増しに大きくなっている。いわゆる“ケータイ”は究極のパーソナルメディアであり、ユーザー同士で口コミ情報を加速度的に広めるP2Pコミュニケーションツールだ。若年層や女性を中心に「ケータイから入ってきた情報」の影響力は大きくなってきている。単純な広告に限らず、企業と消費者のコミュニケーションにケータイは欠かせない。

 しかし今、ケータイは企業のマーケティングやコミュニケーションにとって使いづらい状況にある。原因は迷惑メールだ。

 2002年頃から社会問題化した携帯電話向け迷惑メールは、携帯電話キャリアの対策にもかかわらず、下火になる気配が見えない。キャリアの対策と迷惑メール業者の手口の巧妙化は「いたちごっこ」で、結果として、ドメイン指定受信をはじめ各種メール受信制限の利用をユーザーは余儀なくされている。

 問題はこれら迷惑メール向けの受信制限機能が、まっとうなマーケティングやコミュニケーション用のメールまで「受信拒否」してしまうことだ。

 例えば筆者も、おサイフケータイで「GEO」の会員サービスを受けようとした時にドメイン指定受信を切り忘れ、「登録手続きメールが届かない」と戸惑った経験がある。GEOではビデオの返却予定日やキャンペーンの案内をメールで送ってくれるサービスもあるのだが、これらを利用するにはGEOのアドレスをドメイン指定受信に加えなければならない。迷惑メールを防ぐための機能が、まっとうなサービスの“使いやすさ”を損なうのだ。

 このような状況下で注目なのがNTTドコモの「メッセージF(フリー)」だ。メッセージFは通常のメールシステムとは切り離されており、端末側でもメールボックスが分離している。また、この形式で迷惑メールが送られることはない。ディーツーコミュニケーションズによると、「メッセージF」の登録者が急増しているという。これは多くの企業が、迷惑メール対策の余波を受ける通常のメールサービスよりも、メッセージFの方に広告マーケティングの活路を見いだし、注力し始めた結果だろう。

 もうひとつ、ドコモには優れたメッセージシステムがある。それが「メッセージリクエスト」だ。これは公式コンテンツのメールマガジンなどに使える仕組みで、こちらも通常のメールシステムから分離しており、迷惑メール混入の心配がない。さらにメッセージリクエストでは、迷惑メール対策などでメールアドレスを変更した場合、自動的に配信先アドレスが切り替わるため、個々の公式サイトで登録メールアドレスを変更していく必要がないというメリットもある。

 迷惑メール問題がなくならない以上、通常のメールシステムから分離し、キャリアの審査を受けた公式コンテンツ事業者のみ使える「安全なメッセージシステム」は必要だ。ドコモはiモード初期からメッセージFやメッセージリクエストでこれらの仕組みを実現していたわけだが、これは先見の明があったといえる。ドコモ、そして公式コンテンツ事業者は、メッセージFやメッセージリクエストを積極的に活用して欲しい。

 一方、auとボーダフォンは、ドコモのメッセージFやメッセージリクエストのように、公式コンテンツ専用の「通常メールから分離したメッセージシステム」を用意していない。迷惑メールの増加と携帯電話のメディア価値の増大を鑑みれば、これはあまりに不調法だ。両社の早急な対応に期待したい。

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