Lotus Spring Forum 2009:今こそコラボレーションの将来ビジョンを描く好機

未曾有の経済危機の中、企業は改めてIT資産の棚卸と再構築が迫られている。しかし、何世代にもわたって構築してきた既存資産は、単純な置き換えでは済まないし、コラボレーションの領域では、「LotusLive」のような新しい提供形態も登場している。景気後退期こそ、既存の資産をフルに活用しながら、新たなビジョンをじっくりと作り上げる好機だろう。


 長いトンネルを抜け、力強い成長に向けて積極投資に踏み出した日本企業も、あっと言う間に世界金融危機と市場縮小の波に飲み込まれてしまった。過剰な設備を抱えてしまった製造業は、拠点の統廃合をはじめとする固定費の圧縮を迫られている。経営との一体化を志向してきたITも例外ではない。事業部門の声を重視するあまり、効率の悪いレガシーシステムや、重複したシステムを使い続けてきた企業は、改めてIT資産の棚卸と再構築が急務だ。

 しかし、中長期の計画に沿って多額の投資を行ってきた企業のIT資産は、実に複雑で多岐にわたる。AをBに置き換えれば事が足りる、というものはむしろ少ないだろう。何世代にもわたって積み重ねてきたコンピューティングアーキテクチャーを一気にWebやSaaSに移行できるわけでもない。先ずは、既存のIT資産を有効に活用する道を探らなければならない。

morishima01.jpg Lotusのプロダクトマーケティングを統括する森島氏

 日本アイ・ビー・エムでLotusのプロダクトマーケティングを担当する森島秀明部長は、「Lotus/Dominoも8.5という新バージョンがリリースされたばかりだが、こうした経済環境においては単に目先の変わった話をしているだけではなかなか受け入れられない。むしろ、企業が既存のIT資産を有効に活用しながら、直近のコスト削減に加えて長期的なビジョンを構築するための材料をわれわれは提供しなければならない」と話す。同社は3月上旬、東京と大阪で「Lotus Spring Forum 2009」の開催を控えている。

 今年20周年を祝ったコラボレーションソフトウェアの老舗、「Lotus Notes」は、社員が協調して働くことに慣れている日本企業では、実は他の国や地域以上に受け入れられ、巨大なインストールベースがある。それだけに古いバージョンを使い続けてきたユーザー企業も多く、見直しの対象となったり、競合製品の標的となりやすい。

 1月中旬、フロリダ州オーランドで開催された年次カンファレンス「Lotusphere 2009」でも、厳しい景気後退を反映し、直接コスト削減につながるソリューションを問う声が大きかった。長らくLotus Notes/Dominoの開発を統括し、昨年からLotus Notes/Domino全体の責任を負うことになったケビン・キャバナー副社長は、Lotus Domino 8.5がサーバ数で30%、CPU使用率で40%、I/Oバンド幅の消費であれば50%をそれぞれ削減できるとし、先ずはコスト削減を迫られているユーザー企業の情報システム部門を意識せざるを得なかった。

notes20th.jpg Lotusphereで基調講演に登場したキャバナー氏

 「クライアントはそのまま、Dominoサーバを最新バージョンに移行させるだけで、ストレージが節約できたり、運用に掛かるコストを削減できる。しかし、Lotusが得意とする、よりリッチなコラボレーション環境の実現は、社員の能力をフルに引き出し、さらに大きなコスト効果を生むはずだ。企業を取り巻く経済環境が厳しいときこそ、皮肉だが、Lotusのコラボレーション事業を拡大する好機とみている」(キャバナー氏)

LotusLiveが企業に新たな選択肢をもたらす

 Lotus Notes/Dominoの最新バージョンでは、「iNotes」と呼ばれるようになったWebクライアント環境も大きく進化を遂げ、Notesクライアントとそん色のない使い勝手を実現しつつある。

 また、Lotusphere 2009では、同社初となるクラウドサービス、「LotusLive」(コードネーム:Bluehouse)も詳細が明らかにされた。

 LotusLiveは、同社がオンプレミス型を前提として販売する一連のコラボレーション製品をパッケージし直し、オンデマンド型で提供するもの。Webミーティングにコラボレーション機能を組み合わせた「LotusLive Engage」のほか、ファイル共有やアクティビティ管理、オンラインチャット、音声/ビデオカンファレンスなど、Lotus製品の各種機能が順次提供されるという。

 森島氏は、「既存のIT資産を活用しつつ、将来どうしたいのか? これまでの選択肢は、“Notesクライアントか、WebクライアントのiNotesか”というオンプレミス型の2軸だったが、LotusLiveは“SaaS”という新しい軸を提供する。IT資産を3次元で考え、フルに活用できるようになる」と話す。

 SaaSという新しい軸が加わることで、Lotus Notes/Dominoを導入していないユーザー企業も、LotusLiveによって、既存IT資産を生かしつつ、企業や組織の境界を超えた、パートナーや顧客とのコラボレーションも比較的容易に実現できるだろう。

 また、このIT業界では、システムインテグレーターやISVのようなパートナーが、ユーザー企業に対して大きな役割を果たす。日本IBMは、SaaSという新たな選択肢の提供に際しては、LotusLiveがこれまでのオンプレミス型と競合するものではなく、顧客にとって最適なコラボレーション環境を構築できる仕掛けであることを彼らにも理解してもらう必要がある。今年のLotus Spring Forumでは、パートナー向けカンファレンスも開催し、膝を交えた議論を行うという。

 「クラウドの潮流が一気に押し寄せたとしても、LotusLiveの仕掛けを利用すれば、パートナーは既存のソリューションをサービスとして提供することもできる」と森島氏。

 既存資産の活用という点では、ユーザー企業もパートナーも変わらない。景気後退期こそ、既存の資産をフルに活用しながら、新たなビジョンをじっくりと作り上げる好機となるだろう。

 



提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年3月2日