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» 2000年12月15日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(16):三浦選!2000年を彩るニュース(1)〜 変わった!日本の社長 〜

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 師走である。「やっぱり、12月の原稿は今年を振り返って、印象的なニュースをズバっと切っていただくということで……」と担当のAさんからもリクエストがあったことだし、ズバっとそう快とはいかないものの、今年を振り返ってみたい。

 手帳をめくり、今年、お邪魔した記者会見、取材にどんなものがあったのか見直してみたところ、「おーっ!」と思ったのは、上半期、大手メーカーの社長交代が相次いだことだった。

 大手電機メーカーでは、ソニー、東芝、松下電器の3社の社長が交代した。もっとも、大手電機メーカーの社長交代は、任期や業績から、ある程度予測がつくものである。毎年1月初頭の新聞の経済欄では、各業界別にどの社長が交代しそうか、新社長はだれになるのか、紹介されているほどなので、3社とも、決して「予測不可能な社長交代」ではなかった。

 ソフト・メーカーでも、マイクロソフト、日本オラクルというソフト業界の両巨頭(?)の社長が交代した。こちらも、「そろそろ……」との声しきりだったから、そう驚くことはないが、やっぱり同時期にライバルメーカー同士の社長交代劇は興味深い符号の一致である。

 次々に登場した日本の社長……新社長とはどんな人物なのか、それぞれの方の人柄を示す面白い発言をピックアップしてご紹介しよう。

「確かに、他社さんからもデザインに留意したパソコンが出ましたが、仏作って魂入れずといいますか、形だけまねたにすぎなかったということで、そこが当社の競争優位の要因だと思っています」

(ソニー・安藤国威社長兼COO=2000年9月9日、VAIOシリーズ秋の新製品発表会にて)


 ソニーの安藤社長は、VAIO担当で成功をおさめ、社長に抜てきされた。それだけにVAIOシリーズへの思い入れはとにかく強い。この発表にも、突然、顔を出して、「ひとこと」ということでコメントを始めたはずなのだが、広報担当者も驚くほどに雄弁に語り始め、「社長になってからも、VAIOシリーズ成功の秘訣はという質問をよくされるが……」と前置きして、前述の「仏作って魂入れず」という例えをしてみせたのである。相当、VAIOシリーズに愛と誇りをもっていることがうかがえるので、安藤社長のある限り、ソニーのパソコン事業は安泰ではなかろうか?

「パソコン事業に関しては、3周遅れになってますなあ」

(松下電器産業・中村邦夫社長=2000年7月21日、東京での社長就任会見)


 松下の中村新社長は、社内からは「松下幸之助に似ている」という声が上がっているのだそうだ。松下内部では最高のほめ言葉とされる形容であり、中村社長への期待が高いこともうかがえる。これまで、AV機器担当だった中村社長は「ソニーは最も意識した会社」だそうだが、松下が会見の場で「当社の方がソニーよりも遅れている」と認めたということは、相当に思い切ったものであり、社外よりも社内での波紋の方が大きかったのではないか。

 パソコン事業での巻き返しを図るために登場したのが、最近盛んに宣伝しているAVノートパソコン「人」だ。はたして「人」はVAIOを追撃できるのか?中村社長の話を思い浮かべつつ、「人」をじっくり眺めていただきたい!

「(西室前社長の)改革路線を踏襲する」

(東芝・岡村正社長=2000年4月17日、社長就任発表会見)


 この言葉、非常に当たり前の言葉なんだが……。西室前社長は内外での評価も高く、改革路線を進めてきた人物であるにもかかわらず、「ホームページクレイマー事件」やら、「米国でのFDD回収問題」やら、本人にはどうにもならないような不運に次々に見舞われたことを思うと、なかなか感慨深い。岡村社長に変わってからの、東芝にとっての命題の1つは「路線は大きく変えないまま、不運から脱出する」なんじゃないだろうか……?

「その前社長、よっぽど自分のやってきたことに自信がもてないってことじゃないですか」

(日本オラクル・新宅正明社長=2000年9月21日、BCN取材にて)


 実はこの日、私は取材を終えて写真撮影をしているとき、新宅社長にこんな質問をした。「ある会社のトップだった人が、後任社長に、いい経営者になるコツは前社長のやったことをすべて否定することだっていったそうなんですけど……」

 すると、新宅社長は、シラーっと前述のように答えた。いや、実は「前任社長のすべてを否定しろ」といったのは、オラクルのライバル、マイクロソフトの成毛前社長。おそらく、新宅社長はそれをよーくご存じだったのだろう。マイクロソフトという名前をまったく出さずに、「その前社長は経営に自信がなかったんだろう」と言い切るあたり、なかなか強気で、機知に富む新宅社長の性格がとってもよく表れていると思うのだが。

「Windows MeとWindows 2000、どちらもマイクロソフトにとって大事です」

(マイクロソフト・阿多親市社長=2000年9月26日、Windows 2000データ・センター・サーバの発表会にて)


 日本オラクル・新宅社長と比較するわけではないけれど、マイクロソフトの新社長・阿多親市氏は本当にまじめな人だ。ものすごく派手な二枚目に見える外見とは違って、実はとても誠実な方で、ひとこと、ひとこと選んで発言する。社内からは、「Meよりも、2000が本命だといってくれた方がうれしい」という声もあるが、まじめな阿多社長はそうはいえないのだろう。変化球というより、直球勝負が阿多社長の信条といったところか。

追伸:ところで、前回の「パソコンを安く買う方法」で、これよりよい方法があったら、メールくださいと書いたところ、本当に何通かのメールをいただきました。ぜひ、1月には、「パソコンを安く買う方法2」を執筆しようと思います。もう少々、お待ちください!

著者紹介

三浦 優子(みうら ゆうこ)

1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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