バランスト・スコアカード(ばらんすと・すこあかーど)情報システム用語事典

バランス・スコアカード / BSC / balanced scorecard

» 2003年08月26日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業や組織のビジョンと戦略を、4つの視点から具体的なアクションへと変換して計画・管理し、戦略の立案と実行を支援するとともに戦略そのものも市場や環境の変化に合わせて柔軟に適合させるための経営戦略立案・実行評価のフレームワーク。またはこのフレームワークで利用される達成目標と評価指標を記載したカードのこと。

 バランスト・スコアカード(BSC)は、「財務の視点(過去)」「顧客の視点(外部)」「内部業務プロセスの視点(内部)」「イノベーションと学習の視点(将来)」の“4つの視点”を用いる。これらの視点から戦略に適合した個人や部門ごとの個別の実施項目(CSF)数値目標(KGI)評価指標(KPI)を設定し、PDCAサイクルを回してこれらをモニタリングすることによって、社内のプロセス改善や各個人のスキルアップを促し、企業変革を推進するという形を取る。

 これら4つの視点はそれぞれ独立ではなく、各指標間の因果関係に基づいて設定されることが求められる。そのことにより、短期的利益と長期的利益、全社目標と部門目標、株主・顧客・従業員などのスタークホルダー(利害関係者)間のバランスを取りながら、統一的な戦略策定とその戦略と整合性のある実践が行われるようになる。2000年には、4つの視点間で一貫性のある戦略を策定するためのツールとして、戦略マップが提唱された。

 この手法の起源は1990年、情報化社会に適合した新たな業績評価システムを検討するため、米国コンサルティングファーム KPMGのリサーチ部門であるノーラン・ノートン研究所で行われた研究プロジェクトにある。この研究に参加した米ハーバード大学のロバート・S・キャプラン教授(Robert S. Kaplan)は、経営コンサルタントのデビッド・P・ノートン博士(David P. Norton)とともに研究成果をまとめ、1992年に「ハーバード・ビジネスレビュー」誌上に発表した。これによりバランスト・スコアカードが知られるようになった。

 この研究は、従来の財務的業績指標に偏った業績管理の限界を打破すべく、広い範囲の評価基準を策定し、そこから顧客の満足度や従業員のやる気など、評価の難しい無形資産の価値を明確化することを目指した。そこで財務的業績評価指標と非財務的業績評価指標を併用することによって、企業の将来、現在、過去の活動が適正かどうかを判断するというのが基本の考え方になる。

 BSCの基本には“財務(過去)重視経営を超える”というコンセプトがある。当初は業績評価ツールとして登場したが、1990年代の半ばには第2世代の「戦略的マネジメントシステム」、2001年以降は第3世代の「戦略志向にするマネジメントシステム」に進化したとされる。

参考文献

▼『バランス・スコアカード――新しい経営指標による企業変革』 ロバート・S・キャプラン、デビッド・P・ノートン=著/吉川武男=訳/生産性出版/1997年11月(『The Balanced Scorecard: Translating Strategy into Action』の邦訳)

▼『経営革命大全』 ジョセフ・H・ボイエット、ジミー・T・ボイエット=著/金井壽宏=監訳/大川修二=訳/日本経済新聞社/1999年2月(『The Guru Guide to Entrepreneurship : A Concise Guide to the Best Ideas from the World's Top Entrepreneurs』の邦訳)

▼『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』 ロバート・S・キャプラン、デビッド・P・ノートン=著/櫻井通晴=監訳/ 東洋経済新報社/2001年9月(『The Strategy-Focused Organization: How Balanced Scorecard Companies Thrive in the New Business Environment』の邦訳)


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