仕事への取り組み方は最初の数カ月で決まる!何かがおかしいIT化の進め方(7)(1/3 ページ)

前回に引き続き、情報システム部員の育成問題について考えてみる。今回は、「仕事に対する認識/取り組み方」について解説したい。

» 2004年06月19日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]

問題を認識する力とは

 “生まれてすぐの子ネコを2群に分け、一方を横縞(じま)模様だけの部屋、他方を縦縞模様だけの部屋に数十日入れておくと、横縞グループは縦の線を認識できずにテーブルやいすの脚に頭をぶつけ、縦縞グループは横線が認識できずにテーブルからテーブルへの跳び移りができず床に転げ落ちる。その後どのような環境に戻しても正常になることはなかった”

 ネコの視覚機能の形成は生後45日までになされる。その間に外界から正常な視覚の刺激を受けないと永久に視覚は正常に機能しなくなる。人間ではこの期間はもっと長く2?3年(*1)といわれているが、このような問題は視覚や聴覚(*2)など知覚・認識の基本的なところにとどまらず、脳の成育過程として“知”全般(*3)について存在する問題らしい。

 例えば、言語にかかわる能力は10歳前後に形成されるといわれている。幼少期に外国で暮らしても10歳前に帰国した人には外国語の能力は残らないし、大人になってからの外国語の修得に大変苦労するのは、こんな背景があるためらしい。


*1:この期間〜「三つ子の魂百まで」ということわざがあるが、一昔前に喧伝(けんでん)された3歳児教育の重要性への関心はいまどうなったのであろうか。人は視覚で認識したことをほかの情報と関連付けて理解していく。街を歩けば、幼児を背におんぶするより抱いている母親が多い。意味の理解や伝達をつかさどる脳の部分は、生後2年以降に損傷を受けると回復することはないといわれている。“理解”能力の基本機能もこの時期に形成されるらしい。外界を見ず、母親の顔とテレビを見て育った3歳児の脳はどんなものになっているだろう?

*2:視覚や聴覚〜異なった場所から時間差を置いて同じ音を出すと、時間差が60〜80ミリ秒以下の場合には、人は最初の発音場所から音が聞こえたと認識し、この時間より長いと別々の場所から出た音と認識する。建物の中で生活する人は、直接音のほかに数?十数メートル先の壁や天井で反射して、60〜80ミリ秒遅れて到着する音も聞きながら育っているため、聴覚はこのように形成される。アフリカの大平原や太平洋の小島など、反射音のない環境で育った人は別の感じ方をしているという。

*3:脳の成育過程〜「言語については10歳前後、音楽についてはもう少し早い5〜6歳、数学的な能力は10代後半、一般に理系の分野は時期的に早く、社会人文系の分野は少し遅い」などという話を聞いたことがある。「創造性の開発は、大学院に来てからでは手遅れ」といわれた創造的な研究業績で著名な先生がおられる。


 このような認知心理学や脳生理学の分野での知見を、社員の育成問題に投影してみるとどういうことになるであろうか。

 誤った認識のうえに積み重ねられた知識は、発想や行動のズレにつながる。能力育成の基礎は対象の正しい認識にあり、問題分野ごとの認識の形成時期やそのプロセスが大変重要な要件になるようである。日常の業務活動から意識・無意識のうちに得ている種々の情報に対する、頭の中での“情報処理”が認識の形成、能力育成の大切なプロセスともいえる。このプロセスを、外からどうコントロールするかといった観点で考えてみる。

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