中小企業でERP導入が急増、3カ月導入も可能に特集:ERPトレンドウォッチ(1)(1/2 ページ)

ERPが本格的にビジネスの道具として登場して、およそ10年が過ぎた。当時「BPR」「ベストプラクティス」というキーワードとともに語られていたERPは、いまどのような位置にあるのだろうか。ERPの本質を考え直してみたい

» 2004年11月05日 12時00分 公開
[大津心,@IT]

 ERPは生産、販売、在庫、調達、会計、人事などの企業内の基幹業務プロセスを統合管理することで全体での最適化を目指すソリューションだ。そのため、全社レベルの経営改革・業務改革が求められる。日本におけるERPの10年は、ERPパッケージに業務プロセスを合わせる経営改革(BPR)と自社業務プロセスにERPパッケージを適合させるためのカスタマイズに試行錯誤を繰り返した10年だった。 このERPという概念を作り出したといっていいのが、「SAP R/3」だ。R/3が実現するソリューションを説明する言葉がERPだったといってもいい。今日、R/3は日本においても大きな稼働シェアを誇り、ERPは一定の定着を見た感がある。

 今回は、日本最大のSAPシステムの導入インテグレータでもある日本アイ・ビー・エム株式会社のオンデマンド・ビジネスSAPアライアンス推進部長佐藤知成氏に、最近のERPの導入の傾向と課題についてお話を伺った。(本文中敬称略)

成功事例のテンプレートを用いた中小企業の導入が急増中

――IBMのサービス・ビジネスについて教えてください

ALT 日本アイ・ビー・エム株式会社オンデマンド・ビジネスSAPアライアンス推進部長
佐藤 知成氏

佐藤 IBMでは、現在「ソリューション」に特化している。当社は、1996年ころから「自社のアプリケーションパッケージは持たない」という方針を打ち出しているため、当社が定義する「ソリューション」とは、外部のISV(Independent Software Vender)と位置付けたパートナー企業が作成したパッケージソフトウェアを、当社の3つの事業である「サービス、ハード、ソフト」に絡めて提供することだ。そのような方針の中、SAP社は非常に重要なISVパートナーの1つである。

 SAP社との取り組みの中で、世界規模で「協業によるビジネスの最大化」を目指す組織がSAP Global Allianceだ。SAP Global Allianceは、ビジネスマネジメントという観点で、SAPビジネスに関する事業計画やマーケティング戦略案などを立案する組織となっている。

――SAP社との具体的な事業内容を教えてください

佐藤 IBM社内のさまざまな事業部内に、SAP製品の販売をミッションとする担当者が存在する。例えば、ハードウェア事業は4種類のサーバ(z、i、p、xシリーズ)とストレージに分かれているが、各事業部を統括し、SAP社を専属で担当する窓口が存在する。ソフトウェア事業でも、5つのブランド(WebSphere、DB2、Lotus、Tivoli、Rational)を統括し、SAP社との協業ビジネスを行うための専属の組織がある。

 具体的には、IBMとSAP社が共同で提案しているお客様に対しての両社の役割を、「IBMは、××日の××時に、××の話をするので、SAP社は××日の××時に、××を話す」といった具体的なことまで現場レベルで話し合っており、トップレベルでも定期的に協業状況を確認している。ここでいうトップレベルとは、SAPジャパンの藤井社長と当社の常務執行役員水谷を指している。このように、サービスと製品を統合して戦略的に販売することにより、両社は「あたかも1社であるような」体制で協業できていると考えている。

 IBMとSAP社の協業体制は、米国とドイツの両本社レベルで決定しており、世界的に行われていることだが、特に日本は両社の協業が最も進んでいるとして評価を受けている。日本では3年前より、ストラテジック・アライアンス・センター(SAC)を設立し、「お互いの共通する顧客の名前がリストアップされている」といった作業にも取り組んでいる。

――ERP導入の傾向に変化はあるのか?

佐藤 SAP製品は、一般的に製造業の会計部門で10年前より広がってきたが、まだまだ会計部門や流通部門のみでしか採用されていないなど、ERP本来のエンタープライズ・リソースを統合するといった利用はできていない印象を受ける。そういった「早い時期からSAP製品を導入している顧客」に対しては、SAP製品の機能を十分に発揮するための機能拡張を含めたコンサルティングを行っていきたいと思っている。

 従来、R/3は大企業を中心に導入されたシステムだが、昨今では中小企業において、急速に導入が広まっている。これは、すでに成功している導入事例を業種別にテンプレート化し、同業種に提供することで導入の容易さが向上しているからだ。ただ、テンプレートは、11業種60テンプレートが用意されているため、顧客自身が「最も自分に合った」テンプレートを選択することが難しい。そこで、IBMなどのSAPパートナー企業がコンサルティングを含め、顧客に最も合ったテンプレートを選択し、ユーザーに適用している。

 一方、SAP社は中小企業向けの取り組みの一環として、中小企業向けのERP「SAP Business One」を提供している。SAP Business Oneは、実質的には2次店と呼ばれるパートナー企業が販売しており、IBMではこれらの2次店を支援するための「IBM SAP Business One Center」を設立している。また、11月11日にはパートナー企業約50社を集めてコンソーシアムを設立する予定だ。

 最近の傾向としては、R/3を導入している親会社が、子会社との連携を考えてSAP Business Oneを大量に入れるケースなどが見られる。まず、SAP Business OneをERPとして導入し、その後、CRMSCMBIなどに拡大していくケースもあるだろう。

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