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» 2005年02月24日 00時00分 UPDATE

情報マネジメント用語辞典:IR(あいあーる)

investor relations / 財務広報 / 投資家向け広報 / アイアール / インベスター・リレーションズ

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業(株式・社債などの発行体)が、投資家や金融機関など資金の出し手が求める情報を自発的に開示する活動のこと。

 ここでいう投資家とは既存の株主・社債保有者だけでなく、潜在的な株式・社債の買い手、およびアナリストや格付け機関などの情報仲介者も対象となる。単に法律などで決められた制度的開示(制度会計やディスクロージャー)を行うだけではなく、さまざまなIR対象者とコミュニケーションを取りながら、その求める情報を提供するもの。提供する情報としては、自社の理念や経営戦略、業績、財務内容・戦略、配当政策、投資政策などが挙げられる。

 IRの目的は、資本市場において自社の企業価値が正当に評価され、それに応じたマーケット・バリューを獲得して望ましい株価を形成し、資金調達コスト低減などの効果を得ることであり、広報活動というよりも財務もしくはトップマネジメントが積極的に取り組むべき活動である。また、投資家やアナリストなどとコミュニケートすることにより、その意見を経営や開示情報にフィードバックすることで、経営の質を高めていくことも期待される。

 全米IR協会(NIRI:National Investor Relations Institute)は、インベスター・リレーションズを「企業と金融界およびそのほかの顧客層との間で最も効果的な双方向コミュニケーションが行われるように、ファイナンス、コミュニケーション、マーケティングおよび証券法のコンプライアンスを統合した戦略的経営責任である。最終的には、企業の有価証券の公正な評価の達成に寄与する」(2003年)と定義している。また、日本インベスター・リレーションズ協議会(JIRA)では、「企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な企業情報を、適時、公平、継続して提供する活動」としている。

 インベスター・リレーションズという概念には、長い変遷の歴史がある。言葉としては、1953年に米国GE社が株主とのリレーションシップの専任組織としてIR部(Investor Relations Services Department)を設置したことに由来する。

 米国では1950年代から個人株主が増加し、富裕層からなる従来の株主とは異なる対応が求められるようになった。GEでは、「株主総会対応」「投資アドバイザーやアナリストなどへの“教育”」「年次報告書などの発行」「コミュニケーションの効果測定や株主数統計や態度調査」「株主の考えや要望に基づいての経営陣へ情報伝達、助言」といった活動を軸に、IRという概念を作り出した。ただ、初期のIRは、PR(企業広報)活動の一部と見なされることが多かった。

 1970年代になると、IRは勃興してきた機関投資家対策という側面を強めていく。機関投資家の主力である企業年金は、当時ウォールストリート・ルール(Wall Street Rule)と呼ばれる、企業の業績に応じて比較的短期に売買を行う投機的な資産運用を行っていた。そこで、この時期のIRは、機関投資家の売買行動に大きな影響を与えるアナリストとの面談・説明会に力点が置かれるようになる。

 1980年代になると、企業年金の規模が巨大になり、自身の売りで値が下げり、買いで値が上がってしまうため、有利な売買ができなくなり、ポートフォリオ理論に基づいた長期分散投資が主流になった。しかし、長期保有の投資家が増えると株価の動きが乏しくなり、市場の評価が経営者に伝わらず、株主利益を損なう経営が目立つようになった。加えて1980年代にはM&A(合併と買収)が急増し、経営者が敵対的買収から企業を防衛するためにポイズンピルなどの手段を用いるようになるが、これに対しても投資家は批判的でだった。そのため、株主が何を望んでいるのかを知る手段としてIRが重視されるようになる。

 続く1990年代、1988年のエイボン・レター(米国連邦労働省の通達)をきっかけに、議決権を行使する機関投資家が増え、社外取締役を取締役会に送り込むといった株主行動を取るようになった。1990年代半ばには、インターネット経由で売買を繰り返す個人投資家が増え、さらにストックオプションを付与された従業員投資家が登場するなど、投資家の幅が広がった。

 さらに直接的な利益以外にも社会的・倫理的基準を考慮して投資活動したり、企業の社会的責任を求めて提案を行う株主が増加、SRI(社会的責任投資)の概念が登場する。こうした中、IR活動に対する取り組み姿勢そのものが投資判断の材料とされるようにもなる。

 1980〜90年代のIRは、商品としての企業を投資家に売り込む“マーケティング活動”と見なされていた(NIRIによる1988年時の定義)。しかし、2000年代になると、エンロン事件、ワールドコム事件を受けて2002年に成立したサーベンス・オクスリー法の影響からコンプライアンスを重視したものへと舵を切った。

 日本においては海外での資金調達を行う企業では1970年代ごろから、年次報告書の発行や投資家向け会社説明会の開催などが行われるようになり、1980年代後半にはIR担当部署が設置する企業が増え始め、1993年には日本IR協議会が設立されている。

 理想的なIR活動は、情報利用者ごとに最適化された情報を、最適な(通常は素早い)タイミングで提供することだといえる。1990年代半ば以降、この役割を果たすメディアとして、インターネットの活用が注目されるようになった。1990年代後半には多くの企業でWebサイトにIRページが用意されるようになっている。

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