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» 2005年03月03日 12時00分 UPDATE

特別企画:要求開発方法論のススメ:ビジネス要求に基づく“役立つシステム”の実現手法 (1/2)

なぜ、“役に立たない”システムが作られてしまうのか──それは、ユーザーから集めたあいまいな要求を基に、プロジェクトがスタートするからだという。要求をロジカルな手法で開発することを目指す「要求開発」とは?

[山岸 耕二,@IT]

 いま、ユーザー企業におけるIT関連部門の悩みは深い。

 日本の企業のIT投資額合計はIDC Japanの最新の予測では、11兆5000億円に上り、当面堅調に増加する傾向とされている。

 しかし、これだけの金額を毎年投資しながらも、多くの企業は、その投資効果について確信を持てないままである。実際にどのようなシステムを構築するべきか、根拠があいまいなままに導入を進め、結果としてあまり役に立たないシステム、場当たり的なシステムが散らかってしまっている状況にある。

課題は「どのように作るか?」から、「何を作るか?」へ

 情報化における投資対効果──ROIの議論をするときに取りあえず目が向けられるのは、システム開発におけるコスト削減である。特に開発まで自社もしくはシステム子会社で行っている企業にとっては、開発コストを下げるとその効果は大きい。

 このために、各社とも開発プロセスの標準化、開発ツールの導入、フレームワークやコンポーネント技術のような新規技術の採用などの手段を通じて生産性の向上を図ってきた。また、近ごろは、労働集約的な開発部分を、インド、中国、アジア諸国でのオフショア開発で行うことでより直接的にコスト削減を図る動きも顕著である。つまりは、「どのように作るか」というところに多くの改善努力を払ってきたといえる。

 この分野についての試みは、生産性向上などの名の下に長きにわたって不断の努力が積み重ねられ、技術面で行うべきことはかなりのレベルにまで達しているという実感が筆者にはある。こうした技術を生かすには、開発者の意識改革や組織面の問題など技術以外の要素がまだ多く残されているが、いま以上の改善──60点を70点に引き上げるのはなかなかにつらい、というぐらいの状況になっているのではないだろうか。

 しかし、システム化のそもそもの目的は、ビジネス要求の実現にあるのだから、プロジェクトの成否は、予定どおりシステムができたかではなく、ビジネス上の要求がどの程度満たされたかという観点から評価されなければならない。

 システムへの要求がビジネス上の要求を正しく反映したものでなければ、いかに生産性が高く低コストでシステム開発を行っても、それは「間違ったものを正しく作ってしまった」ということであり、投資は結局無駄に終わったことになる。つまりは、「どのように作るか」以前に「何を作るか」にもっと注力しなければならないということになる。

システム要求にロジカルな手法を

 こうした「ビジネス上の要求を満たすためにどんなシステムを作るのか」という課題について、開発生産性に対する取り組みのような掘り下げたアプローチを行ってきただろうか。

 システム要求を決めるプロセスとして実際によく見かけるのは、関係者が招集されて延々と議論しながらも確信ある結論が出せず、結局、時間切れになってしまうというパターンである。そのため、多数決で決めたようなユーザー要求を基に開発がスタートしてしまい、プロジェクトが迷走したり、ビジネス上の効果が出ないシステムが出来上がったりしてしまう。ここでのやり方は、正しい(妥当性のある)システム要求なのかどうかを裏付けるロジックがなく、かつ各社ともまちまちで、試行錯誤の域を出ていない。

ALT 図1 プロジェクトの全体像(画像拡大

 ここに、理論に裏打ちされた標準的な手法を確立すれば、その効用は甚大であり、多くの迷えるユーザー企業が、確かな地図をもってITに立ち向かえるようになるだろう。その効用は、ユーザー企業ばかりでなく、システム開発に携わるソフトウェア企業にも福音をもたらす。確かなシステム要求に基づいてシステム開発に臨めば、あいまいな要求に振り回されて泥沼化する開発現場をいくばくかは救えるのではないだろうか。

 感覚的な表現だが、この辺りは100点満点でいえばまだ10点ぐらいしか取れていない領域である。ここにメスを入れて、システマティックなアプローチを導入すれば、40点ぐらいまで引き上げるのは比較的容易であろう。

 そこで筆者らは、ビジネス上の要求に基づき、システム要求を導き出すこの過程を「要求開発」と呼んで、「システム開発」以上に重みのあるもう1つの「開発」ととらえて活動を行っている。

 従来的な「要求定義」と明確に呼び方を区別しているのは、「要求定義」というと、あたかも要求というものがどこかにすでにあって、それを文書化するだけの、システム開発の前座のような印象を受けるからである。

 確かに、ユーザーにヒアリングをすれば、それなりに要求は出てくる。しかし、ユーザーが出した要求は、そのユーザーが個人の視野で、また個人の理屈で作り出したものであり、業務全体を見る観点が抜けていることが多い。すなわち属人的であり、場当たり的、直感的である。それをそのままシステム化しても業務が全体で最適化されるとは限らない。

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 システム要求は、ビジネス要求を基に個人によらないロジカルな手法で開発されるべきものなのである。

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