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» 2005年03月13日 00時00分 UPDATE

情報システム用語辞典:バイラル・マーケティング(ばいらる・まーけてぃんぐ)

viral marketing / ウイルス・マーケティング

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 マーケティング・メッセージを広く普及させるに当たって、“紹介”や“推奨”といった形で人々の間に相互に伝え合うことを促進・奨励するマーケティング・アプローチ。いわゆる“口コミ(くちコミ)”を期待するマーケティング手法である。

 バイラルとは「ウイルス(性)の」という形容詞で、「感染していく」「伝播力が強い」という意味で使われている。人から人へ情報が伝わっていく様子をウイルス(コンピュータ・ウイルス)が増殖していくさまに重ね合わせたものだ。

 通常のマーケティングでは、広告やダイレクトメールを使ってマーケティング・メッセージを、直接的にターゲット(顧客・見込み客)に伝える。この方法は、ターゲット・セグメントがはっきりしない場合だと極めて非効率で、コストが掛かるだけでなく、本来ターゲットでない人にも“邪魔なメッセージ”を送り付けることになり、逆効果になる可能性さえある。

 バイラル・マーケティングは、メッセージ(商品の使用体験などを含む)を受け取った人が何人にメッセージを伝えるかに依存する。もし、多くの人が多くの知り合いに“紹介”や“推奨”を行えば、そのメッセージは等比級数的に伝播することになる。また通常、人が紹介や推奨を行う場合、それを受け入れそうな人に対して行うため、邪魔なメッセージにはなりにくい。また、受け手にとっても企業からの広告よりも、説得力のあるメッセージとして受け止めることになり、効果が非常に高い。

 バイラル・マーケティングの具体的事例として知られるのが、Hotmail(ホットメール)である。これは、Webベースの無料電子メールサービスで、1996年7月に商業サービスを開始してから、わずか18カ月で1200万人以上のユーザーを獲得し、世界最大の無料Webメールプロバイダに成長した(1997年末にマイクロソフトに買収され、現在はMSN Hotmailとなっている)。

 バイラル・マーケティングという用語は、米国のベンチャーキャピタル DFJ(ドレーパー・フィッシャー・ジャーベットソン)のスティーブ・ジャーベットソン(Steve Jurvetson)が、このHotmail急成長のメカニズムを説明するために、1997年に使い始めたものだ。

 同じDFJのキャピタリスト、ティム・ドレイパー(Tim Draper)は、このサービスの開発・運営会社であったHoTMaiL社(当時のつづり)に投資するに当たって、創立者に電子メールの下に「P.S. Hotmailで無料電子メールを入手しよう」というメッセージとURLを入れることを提案したという。これによって、Hotmailユーザーは送信相手に向かって、意識しないまま宣伝広告を行うことになり、急速に成長したというわけだ。

 一方、パーミッション・マーケティングの提唱者であるセス・ゴーディン(Seth Godin)は、“最初のパーミッション”をもらうための方法として『Unleashing the Ideavirus』(2000年)という著書でバイラル・マーケティングを推奨した。日本ではその訳書タイトルが「バイラルマーケティング」であったことから、この言葉と概念が広く知られるようになった。

 ゴーディンはバイラル・マーケティングの成功例は一見、偶然に見えるが、人為的に発生する可能性を飛躍的に高められると主張する。マーケティング担当者は、ブレイクしやすいメッセージ(ゴーディンはアイディアバイルス:idea virusと呼ぶ)の特性を理解し、ブレイクを誘発させる仕組みや環境を整えることが重要だという。

ゴーディンによるバイラル・マーケティングの定義(出所:『バイラルマーケティング』 セス・ゴーディン=著/大橋禅太郎=訳) 

バイラルマーケティングはアイディアバイルスの特殊ケースである。バイラルマーケティングは、バイルスを運ぶ媒体そのものが製品である形のアイディアバイルスなのだ。



 バイラル・マーケティングは、圧倒的に「画期的」「便利」「クール」「楽しい」といった商品やサービスの場合、自然発生する。ネットワーク外部性が働く商品・サービスでも同様の傾向がある。こうした情報の波及的拡大(口コミ)を人為的に起こすことを狙うのが、バズマーケティングである。

 従来の普及学/コミュニケーション論でも、「オピニオンリーダー」「インフルエンサー」「アーリーアダプター」と呼ばれる、影響力の強い人への情報提供が大切とされてきた。バイラル・マーケティングでも適切なターゲット(ゴーディンの用語ではスニーザー)に正確かつ継続的に情報を伝えることが重要視される。同時に情報が伝播しやすい仕組み――すなわち、人を紹介することでインセンティブが発生する「紹介プログラム」や、人に商品を推奨する「アフィリエイト・プログラム」もバイラル・マーケティングの有力な手法である。

 2000年代半ばになり、CGM(consumer-generated media)の概念が登場したこともあって、再び注目を集めるようになっている。

参考文献

▼『バイラルマーケティング――アイディアバイルスを解き放て!』 セス・ゴーディン=著/大橋禅太郎=訳/翔泳社/2001年2月(『Unleashing the Ideavirus』の邦訳)


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