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» 2005年08月05日 00時00分 UPDATE

情報システム用語事典:WBS(だぶりゅーびーえす)

work breakdown structure / ワーク・ブレークダウンストラクチャ / 作業分解図 / 作業分割構成 / 作業の詳細構造

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 プロジェクトマネジメントの計画フェイズにおける主要なツールで、プロジェクトの成果物あるいは仕事(work)を詳細区分(breakdown)して階層構造(structure)化した図表、あるいはその図表によってプロジェクトのスコープ全体とその中で作られる成果物ないしは作業の関係を体系的に集約・把握する手法のこと。

 WBS作成はプロジェクト計画の初期に行う作業で、プロジェクトで実施されなければならないすべての作業を洗い出し、同時にプロジェクトマネジメントにおけるコントロール単位を明確化するものとなる。WBSはその後のプロジェクト工数の見積もり、日程計画(ネットワーク図など)、調達管理(外注化判断)、資源配分計画(役割分担表など)、予算/コスト管理(EVMSなど)、リスク管理といったフェイズのベースとなるもので、プロジェクトマネジメント全体の基盤となる。

 WBSの基本的な作り方は、まずプロジェクトの目的を定め、最終的な成果物(製品、サービス、結果など)を具体的に決定する。次にその成果物を要素や中間成果物に分割・定義していく。その方法は、関係者が集まってボトムアップに要素を洗い出していくアプローチ、上位の最終成果物からトップダウンに分割していくアプローチ、その併用アプローチなどがある。プロジェクト開始段階では要素が不確定である場合は、大まかな分割・分類だけを定義しておき、プロジェクトが進行するに従って細分化する。

 分類・整理の切り口は、対象となる成果物(製品など)の構成要素ごとに分けるやり方、目的と手段で整理するやり方、手順や作業フローに沿って作業を展開するやり方などがある。各枝の深さは一様でなくてもよいが、1つの分岐点における分解基準は統一されていなければならない。

 WBS各枝の最下層レベルのWBS要素は、しばしばワークパッケージと呼ばれる。ワークパッケージは、プロジェクトを実施する際のコントロール単位であるため、それぞれ細分化の粒度、意味がそろっていることが望ましい。ワークパッケージは成果物を示す場合もあれば、作業(タスクやアクティビティ)だとされる場合もある(後述)。

 WBSが完成すると、すべてのアクティビティ(実際に行わなければならない作業)が定義されたことになる。これがすべて実施されれば、プロジェクトは完了となる。それぞれのアクティビティには、所要時間/コスト/資源などが割り当てられるので、プロジェクトを定量的に管理することが可能になる。

 WBSは図表表現されるが、これを作成することで要素/作業の抜けや重複を防ぐとともに、プロジェクト関係者の間で認識のズレを解消することができる。図表には、一般に表形式あるいはツリー図(ロジックツリー)が使われるが、インデントした個条書き(アウトライン)、マインドマップなどで作成することもできる。なお、WBS図ではWBS要素を短い名称で表すが、それだけでは不十分な場合はWBS辞書を整備する。

 WBSという手法は、1959年に発表された初期のPERT手法に関する論文に原型を見ることができる。PERTは米海軍のミサイル開発に由来し、この中に開発対象――潜水艦発射型弾道ミサイル・システム――を階層的詳細化して管理するという方法が採用されていた。この考えを受け継ぎ、1968年に軍調達品のWBS基準として策定された軍規格MIL-STD-881(1998年にMIL-HDBK-881へ改定)では、例えば「船」は「船体構造」「推進室」「電気室」「監視・指揮」「装備・備品」……というように定義されている。つまり、ここでいうワーク(work)は「作品」「製品」を意味すると考えられ、今日製造業で使われるBOM概念に相当するものだといえよう。

 より汎用性の高いPMBOKでもMIL規格ほど明示的ではないが、WBS最下層単位のワークパッケージは成果物を表し、それにアクティビティを割り当てる(複数アクティビティの割り当てもあり)形態を想定している。

 一方、日本ではWBSを「作業の詳細構造」「作業分解図」と訳すなど、ワークを「作業」と見なす傾向にある(生産管理系の文献では「構成要因分類表」という訳も見える)。プロジェクトマネジメントの国際規格ISO 10006でも明確な定義は示されていないものの、本文にworkをactivityと見なせる個所がある。一部にはWBSを“作業”の構造を示すものとし、これと分離して“成果物”の構造を示すPBS(product breakdown structure)を生成する方法が提唱されている。こうした点で、成果物か作業かについては若干の混乱がある。

 なおPMBOKにおいては、2000年版ではプロジェクトスコープ・マネジメント知識エリアの「スコープ定義プロセス」における成果物としてWBSが挙げられていたが、第3版では同知識エリアに「WBS作成プロセス」が独立して設けられた。これは、WBSをプロジェクトをコントロールする基本要件の1つだと明確に位置付けたことを意味する。

 WBS同様、段階的詳細化の考え方を用いてプロジェクトメンバーの組織を階層構造を示すOBS(organization breakdown structure)、プロジェクトのコスト構造を示すCBS(cost breakdown structure)があり、WBSと合わせてプロジェクトマネジメントを構成する三大要素とされる。OBS、CBS、PBSなどはWBSとマトリクス状に交差させて関連付け、成果物(作業)と、組織(担当責任者)やコストを2次元あるいは多次元的に把握するという方法もよく知られている。

参考文献

▼『実務で役立つWBS(Work Breakdown Structures)入門』 グレゴリー・ホーガン=著/伊藤衡=監訳/翔泳社/2005年3月(『Effective Work Breakdown Structures』の邦訳)


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