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» 2006年03月23日 12時00分 公開

目指せ!シスアドの達人(10):トラブル発生、やはり原因は人だった……(第10話) (3/4)

[大空ひろし,@IT]

上級シスアドと初級シスアドの差

  その日の就業後、坂口はいつものバーで豊若、椎名と酒を飲んでいた。話題はどうしても、プロジェクトのことになる。2人とも、新しいシステム導入の難しさは十分経験した。豊若も彼らの話を聞いて、難しさを再認識した。システムを導入するということは、新しいコンピュータやそれに付随する機械を導入するだけではない。それよりも重要なのは、それを使う人なのだ。そして、その環境がまた非常に重要なのだ。

 豊若は、坂口に対して以前の自分を重ね合わせているが、坂口はどうしても自分の枠からはみ出してしまう。そして、そここそが自分と坂口の大きな差だと感じている。坂口はそれほど強引ではないが、なぜか強引な個所があっても、周りの人間がそれを許してしまう何かがあるのだ。笑顔か、態度か……、やはり行動だろう。とにかく動き回る。

 坂口には一言でいえば、それだけでこちらのいいたいことが伝わってしまう。だから、オブザーバとしても、細かいことまでいわなくても済んだ。そして、坂口はその理解したことを、自らの動きで検証しているのだ。自分を上回る坂口には少々悔しい気もするが、こいつなら、これからも何とかできるかもしれないと思っていた。そして、坂口の顔がアルコールで程よいころ、豊若はおもむろに、語り始めた。

豊若 「旅費の精算だが……。お金の精算って、きちんとできているのか?」

坂口 「はい、やはり松下さんの影響力が大きかったですね。フォームの基本ができていたので非常にスムーズでした」

豊若 「そうか。ところで、申請した後の処理はどうしてる?」

坂口 「会計から現金が出ますので、それを本人に渡しています」

豊若 「じゃあ、今後は振り込みまで連携するシステムを考えてみたらどうだ」

坂口 「えっ? 銀行口座への振り込みですか?」

豊若 「そう、そこまでシステム化しないと、成果の出せる効率化はできないぞ」

坂口 「そういうものですか……。分かりました」

豊若 「その際に、注意する個所は想像できるか?」

坂口 「一応できますが……。自信がありません」

豊若 「特に精算した後、振り込む日にちに注意することだ」

坂口 「えっ? 振り込む日にちですか」

豊若 「そうだ。旅費などで前払いをしない場合、個人のお金を仕事に使っているので、会社はそれをすぐに返却しなければいけない。まぁ、少々遅れても法律に触れるわけではないが、指導を受ける場合もあるのでそれを想定することが大切なんだ」

椎名 「豊若さん、さすがですね〜」

豊若 「いや。上級シスアド資格保持者は、業務のシステム化だけではなく、法律関係についても気を付けなければいけない個所も多くなってくる。労働法であったり、派遣法であったりとな」

坂口 「そうなんですかぁ……」

豊若 「上級は、まさに経営にかかわってくるので、そういう自分の担当以外のことも相当な割合で関係してくるんだ。だから、試験でもそういう知識が必要なのは当然だし、また実務でも実際に使う知識でもあるんだ」

椎名 「そうか、だから上級っていうんですね!」

豊若 「法律ってものは、知らないでは済まされないしな」

坂口 「そうですね、視野をもっと広く取らないといけないですね」

 そういうと、豊若はグラスを空け、次のウイスキーを注文した。坂口と椎名もそれに続いた。

豊若 「試験という面でいえば、この辺りを含んで論文を構成することがポイントにもなるかもな」

坂口 「論文もですか……」

豊若 「そう、論文が大切なんだよ」

坂口 「午後Iの試験も大変ですけど、さらに論文も……」

豊若 「ここは、まさに実力を測るまたとない個所だ。午前の試験は、単に知識だけあれば突破できるだろ」

坂口 「はい」

豊若 「だが、論文はまさに『知識』と『スキル』がないと駄目なんだ」

坂口 「『知識』と『スキル』かぁ……」

豊若 「さらに、それを前提にして、次は自分の力を他人に理解してもらうための構成力も必要だ」

坂口 「まだあるんですか!?」

豊若 「まだまだ。そこまで持っていたとしても、設問をキチンと理解できるかどうかの力も大切だ」

坂口 「設問をキチンと理解できるかって、どういう意味ですか?」

豊若 「問題を出す人の出題意図をキチンと読み取れるかどうかということだ。ちんぷんかんぷんな論文を書いても評価されないぞ」

坂口 「そうですかぁ……。やっぱり、俺には上級なんて無理だぁ〜!!」

豊若 「いや、そんなことはないぞ。坂口君には、今回の事件がまたとない題材になっているじゃないか」

坂口 「そうですね……。でもですね」

豊若 「?」

坂口 「またとない題材があるのは、豊若さんの話でも理解できます。でも、設問が今回の件にマッチするかどうか分からないじゃないですか」

豊若 「もちろんだ。よく、そこに気が付いたな」

坂口 「えぇまぁ、周囲の人の教育のおかげです」

豊若 「君の物事に対する意識だと思うぞ。でも、良い質問だ。設問に対して、ある程度臨機応変に対応できる題材を事前に用意しておくんだ」

椎名 「えっ? そんなことできるんですか?」

豊若 「いや、できるできないではなくて、自分で準備するんだ。これは試験ばかりじゃなくて、実務でも同じだろ」

坂口 「そういうもんですかねぇ……」

豊若 「そういうものだ。臨機応変というのが、上級シスアドには大切だ。プロジェクトにしても、当所予想したとおりに進むなんてことは、実際にはまずないだろう」

坂口 「えぇ」

豊若 「まさに臨機応変の固まりだ。そして、システムが出来上がった後も、その連続だぞ」

椎名 「今回がまさにそうでしたね」

豊若 「そう、この辺りをポイントごとではなく、流れで把握しておくことが大切だ」

坂口 「流れでですか……」

椎名 「流れでかぁ……」

豊若 「そう、流れでだ。試験というものは、知識だけでできるものもあるかもしれない。しかし、スキルが大切な要因となるものも多い。理想は、両方持っていることだ。特にコンピュータ関係は、資格がなくても仕事はできる。しかし、資格を取得するために学んだ知識はスキルの基礎となるものなんだ。ここを押さえることで、試験に対する意識も変化するだろう。まぁ、試験についてはこれくらいにしておこうか」

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