連載
» 2006年05月13日 12時00分 UPDATE

IPv4アドレス枯渇に備える(1):アドレス枯渇はどこまで現実の問題になったか (1/2)

IPv4アドレスの枯渇は着実に進行しており、もはや遠い将来のことではなくなってきた。主要なIPv4アドレス枯渇時期予測の検討を通じ、アドレス枯渇がどこまで切迫した問題になってきているかを考える。

[近藤 邦昭(JPNIC 番号資源利用状況調査研究専門家チーム チェア),@IT]

 「IPv4アドレスの枯渇」は、一部では約10年前から問題として認識されていたものの、これまで一般にはそれほど深刻な問題とは考えられていなかった。しかし、本稿執筆時点では、IPv4アドレス全体の約75パーセントを超える割り振り率(使用率)に達し、IPv4枯渇の日がより一層現実味を帯びてきた。これにより、IPv4アドレスの配分や利用にかかわる人々にとって、何らかの対応策が求められる可能性が高くなってきたのである。

 そこで、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は、これらの状況を把握し、今後JPNICとしてどのような活動をすべきかを整理するために「番号資源利用状況調査研究専門家チーム」を構成し、検討した内容に関する報告書、「IPv4アドレス枯渇に向けた提言」(PDFファイル)を2006年4月に公開した。この報告書は、基礎資料となっている詳細な枯渇時期予測データを含めると100ページを超えるものとなっている。筆者は専門家チームのチェアを務めた。

 本連載では、提言の内容を簡潔に解説する。今回は、まずIPアドレスがどのような構造でエンドユーザーまで配られているかについて整理する。さらにこれを踏まえて、枯渇時期についてどのような予測がされているのかを解説する。

IPアドレス配分は階層構造

 IPv4に限らずIPアドレスは、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)から委託されたIANA(Internet Assigned Number Authority)が中心となってアドレス空間を管理し、各種のインターネットレジストリと呼ばれる組織が割り振り/割り当てに関するポリシーの作成や、実際の割り振り/割り当て作業を行っている。アドレスの割り振り/割り当ては階層構造となっており、下位層にいくに従って、よりエンドユーザーに近い場所での割り振り/割り当てを行う構造となっている。この様子を示したのが図1である。

ALT 図1 IPアドレスの配分は階層的に行われている

 IANAはまず地域インターネットレジストリ(RIR)と呼ばれる組織に対し、ある程度の大きさでアドレスを配分し、各RIRはこのアドレスのなかから、各国を担当する国別インターネットレジストリ(NIR)と呼ばれる組織やローカルインターネットレジストリ(LIR)と呼ばれる組織に配分する。通常、LIRに相当するのはISPである。LIRは、自分に与えられたアドレスを、エンドユーザー(企業あるいは個人)に割り当てるか、別のISPに割り振る。

 なお、IPアドレスの分配では「割り振り」と「割り当て」という2つの用語が意識的に使い分けられている。「割り振り」(allocation)という用語は、入手したアドレスを下位層のIPアドレス利用者に対してさらに配分する場合に利用し、「割り当て」(assignment)という用語は最終的な利用者に対して配分する場合に利用する。つまり、IANAからRIR、RIRからNIRまたはLIRに対するものは「割り振り」といい、LIRからエンドユーザーへの配分や、RIRやNIRからのPI(プロバイダ独立)アドレスの配分については「割り当て」と表現される。

 さて、エンドユーザー、つまりISPに接続してインターネットを利用している利用者は、通常の場合、接続しているISPが上位のレジストリから割り振られているアドレス空間からアドレスの割り当てを受ける。ISPは、エンドユーザーに割り当てるためのアドレスを、レジストリから必要量に応じてあらかじめ割り振りを受けておく。このレジストリは、日本では通常JPNICとなる。

 JPNICでは、アドレスをエンドユーザーに割り振るISPなどの業者、つまりLIRからの割り振り申請を受け、書類などの間違いのチェックや妥当性の判断を行う。妥当性といっても、ポリシーに照らし合わせて必要な量のみを申請しているかどうかを判断しているといった方がよい。これらのチェックを行い、必要な量のアドレス空間を、アジア・太平洋地域のRIRであるAPNICが持つアドレス空間から割り振る(現在、JPNICでは割り振り用のアドレス空間を持っていない)。

 ところで、JPNICは、図でも分かるようにNIRという国別レジストリという階層で業務を行っている。NIRは、アジア・太平洋地域の地域性を考慮して作られた階層で、APNIC管轄地域以外では、このような階層はない。

アドレス枯渇は段階的に発生する

 さて、このような構造から、アドレスの枯渇という現象を考えた場合、最初にアドレスの枯渇が発生するのはIANAである。次がRIRであり、NIR、LIRと続く。つまり、エンドユーザーにとって、アドレスの枯渇は突然やって来るものではなく、IANAでアドレスが枯渇してから少なくとも数カ月の時間があることになる。

 具体的に考えると、IANAは現在/8単位でRIRに割り振りを行っている。/8は、約1600万個のアドレスに相当する。各RIRがIANAに対し、1年間にどの程度の必要量を要求するかによってばらつきはあるものの、全RIRに対する割り振りを合計すると、年間で8〜10の/8に達している。

 また、RIRやNIRは、LIRに対して、現在最小で/22(アドレス個数換算で1024個)単位の割り振りを行っており、JPNICの昨年度実績では、/22単位で6186、/8換算で約0.4分だけ割り振っている計算となる。

 もちろん、これらの数字は過去の実績でしかなく、ISPやエンドユーザーがどのようなサービスを実施、利用するかによって大きく変動する。しかし、全世界的な動向としてならしてみることで、どのくらいの時期にIPv4アドレスが足りなくなるのか、RIRが保持するプールアドレスについてはどれくらいの期間で割り振りが完了するのかということがおおむね予想可能となる。

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