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» 2006年07月27日 12時00分 UPDATE

上司のためのストレージ・ネットワーキング (3):ストレージ・ネットワークの導入 (1/2)

管理するデータの価値や性質に応じて、導入するストレージやネットワークの形態は異なる。今回は、ストレージ・ネットワーク導入における考慮ポイントと、これをより上手に使っていくための勘所を説明する

[辻 哲也,ブロケードコミュニケーションズシステムズ]

 前回は「ストレージ・ネットワークの技術」と題して、DAS、SAN、NASの違いや、SANで使用されるプロトコルなどを解説した。

 今回は「ストレージ・ネットワークの導入」という非常に漠然としたテーマであるが、ストレージ・ネットワークの導入にあたり本質的な意味で検討しておくべきこと、さらに導入したストレージ・ネットワークをより上手に使っていくための勘所を説明していきたい。

ネットワークストレージ導入の前提

 「ネットワークストレージを導入する」とはどういうことなのだろうか。この問いに答えるため、ネットワークストレージの導入における筆者の考えるフローを図1のようにまとめてみた。ここではこの図に従って説明していきたい。

ALT 図1 ネットワークストレージ導入のフロー

 ストレージの導入において何にも増して大切なことは、そこに格納されるデータを定義することである(図1の1)。ストレージはであり、ストレージ・ネットワークはそこへ至るための通路に過ぎない。「誰が」「いつ」「何のために」「どのように」使用するデータなのかを確認し、そのデータが持つ価値を再認識することが、ネットワークストレージ導入の出発点となる。

 自分たちが格納しようとしているデータについて知ることができれば、そこへ至る経路(ネットワーク)器(ストレージ)は自ずと選定できる。データ定義はそのデータが持つ価値を理解していなければ行えないため、そのデータを使用しているユーザーでなければ実施できない、業務に直結した作業である。以下ではこのデータ定義について、より詳しく触れていこう。

 データを定義する際には、サービスレベルとパフォーマンスという2つの指標で考えるとよい。

 サービスレベル指標とは、そのデータが関わる業務の耐障害性に関する指標で、「RTO」(Recovery Time Objective:目標回復時間)と「RPO」(Recovery Point Objective:目標回復ポイント)に代表される。RTOとRPOは短ければ短いほど望ましいが、その分コストがかかる。したがって両者のバランスを考える必要がある(図2)。またRTOとRPOを規定しておけば、「DR」(Disaster Recovery:障害復旧)システムを導入する際の要件定義にも直結する。

ALT 図2 RTOとRPO

 一方、パフォーマンス指標とはストレージ・ネットワークも含めた業務システム全体のパフォーマンスに関する指標で、システムのレスポンスタイムやストレージのIOPS (単位時間当たり入出力:Input/Output per second)に代表される。ここでは通常時だけでなく、縮退時のパフォーマンスも検討しておくとよい。縮退時には通常時より低いパフォーマンスでも許容されることが多く、通常時と縮退時でインフラのレベルを変えることができるからである。

 データ定義においては、そのデータが持つ「価値」だけではなく「リスク」に関する検討も必要だ。「データを持つ」ということは企業の競争力を高める上で必須の要件であるが、一方で価値があるが故にそのデータを奪われるリスクも存在する。データを持つことのメリットと、データを持つが故に引き受けなければならないリスクを比較したうえで、リスクの方が大きいという結論に至れば、そのデータは廃棄すべきということになる(図1の2)。このようにデータを中心に考えることで、不必要なインフラ投資を抑えることも可能である。

 また、データ定義に際してはデータの瞬間的な価値だけでなく、時間経過に伴う価値の「変化」も併せて検討することが望ましい。データには新鮮さが求められることが多く、データの価値は時間の経過と反比例の関係にあるのが一般的だ。従って、時間経過によるデータ価値の変化に応じて、適切なストレージに格納するとよい。

 データ定義の結果、データを保持しておくべきという結論が得られれば、それを格納するストレージとそこへ至るネットワークの選定作業に入る。既存ストレージが存在し、データ定義の結果そこへ格納すればよいというケースもあるが、今回この部分は省略する。まず検討すべきは、「DASにするか、それともネットワークストレージにするか」という点だ(図1の3)。DASのメリットとデメリットは前回紹介したのでここでは省略するが、データ定義の結果、データ格納先としてDASが望ましいのであれば、それも1つの解である。

 DASが選択されない場合にはネットワークストレージが選ばれるわけだが、ストレージおよびネットワークは必ずしも新規に必要となるわけではない(図1の4)。既存でネットワークインフラが存在するならば、できる限りそれを使うべきだろう。既存ネットワークでも新規ネットワークでもその後の手順に違いはないため、新規ネットワークを導入する前提で話を先に進める。

 前回紹介したように、ストレージ・ネットワークは大きく「ブロック」アクセスと「ファイル」アクセスに分けられる(図1の5)。ファイルアクセスのストレージ・ネットワークを選んだ場合、「(新規)LAN+NAS」という結論に至る。例えば、格納するデータがオフィス文書系のドキュメント中心で、それらをファイルレベルで共有したいという場合は、LANとWANを使用してデータをNASに格納するという選択が有効だ。

 ブロックアクセスが求められる場合はSAN導入を検討することになるが(SANの定義は前回の説明に従う)、ここでは「ファイバチャネル(FC-SAN)かiSCSI(IP-SAN、実際にはLAN)か」という選択になる(図1の6)。ここでも既述のデータ定義の結果に従い、格納するデータに求められる信頼性、アクセス速度や頻度、コストなどの兼ね合いで決定する。

ALT 図3 ネットワークストレージのランニングコスト

 再度確認しておくが、ここでいう「コスト」とは初期コストだけではなく、ランニングコストも含めたトータルコストのことだ。初期コストはいうまでもないが、ランニングコストの一例を挙げると図3のようになる。トータルコストとはあくまでも「イニシャルコスト+ランニングコスト」であり、第1回で説明したように、ランニングコストの比重が圧倒的に大きいケースがほとんどである。

 最終的に導入に至るストレージ・インフラがNASであろうとFC-SANであろうと、データを中心に検討を行うことが本質的には重要である。近年よくいわれる「ILM」(InformationLifecycle Management)や既述のDRも、データを定義することから出発するという点では変わりない。「データ」からアプローチすることで、より上手にストレージ・ネットワークと向き合うことができる。

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