連載
» 2006年09月27日 12時00分 UPDATE

事業継続に真剣に取り組む(1):事業継続をどのように考えればいいか (1/2)

事業継続に関する日本企業の取り組みは、全般的にいってまだ不十分な状況だ。連載の第1回として、事業継続計画やその管理体系につき、基本的な考え方を紹介する。

[喜入 博,KPMGビジネスアシュアランス株式会社 常勤顧問]

企業活動をめぐる状況と事業継続の必要性

 近年、企業活動では、顧客に対するサービスを継続的に提供することが求められるようになっています。企業間はもとより社会や個人の生活、活動は、企業などが生産する商品、サービスの提供を前提として行われています。また、企業を取り巻くステークホルダー(顧客、投資家、取引先、従業員など)からは、単に収益を上げるためだけではなく、社会の一員として企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)を果たすことが求められています。そして機関投資家を中心とした投資家、株主においては、投資対象となる企業が継続的に事業活動を維持できるか、が重要な評価ポイントとなってきました。

 一方、企業においても、事業活動の複雑化と脅威の増加により、事業活動の維持に対して脆弱(ぜいじゃく)な面が多くなってきています。事業活動の継続性や安定性を妨げる脅威として、災害や事故などが従来もありましたが、近年は情報システムの進展に伴うIT事故(不正アクセス、情報漏えい、機器の障害やソフトウェアのバグおよび誤操作などによる非意図的障害など)の発生の可能性とその影響範囲の増加、SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザの発生、地域紛争など国際的な事件・事故の影響の増加が挙げられます。

 これまで「天災と戦争」は、企業活動、企業責任の免責事項でした。しかしながら、近年では地震や風水害に対しての事前の対策、地域紛争の勃発に備えた現地法人などの生産活動の維持や撤退の判断のプロセス、あるいは現地企業からの原材料などの確保計画や代替策などの策定が求められてきています。

 企業の事業活動が社内外に与える影響を整理し、「いざ」という場合に備えた適切な、効果的な対応が必要になってきました。その対応を行うプロセスが事業継続計画の策定と維持になります。今回を含めて全6回の連載で、事業継続計画(BCP)とその管理体系(BCM)について整理していきます。

BCPとBCMの関係

 まず、本連載で使用する用語を整理しましょう。BCP(Business Continuity Plan : 事業継続計画)とBCM(Business Continuity Management : 事業継続管理)の英国規格協会による定義は、表1のとおりです。

BCP 潜在的損失によるインパクトの認識を行い実行可能な継続戦略の策定と実施、事故発生時の事業継続を確実にする継続計画。事故発生時に備えて開発、編成、維持されている手順および情報を文書化した事業継続の成果物
BCM 組織を脅かす潜在的なインパクトを認識し、利害関係者の利益、名声、ブランドおよび価値創造活動を守るため、復旧力および対応力を構築するための有効な対応を行うフレームワーク、包括的なマネジメントプロセス
表1 BCPとBCMの定義

 BCPとBCMは、混同して使用されることがありますが、事業活動を阻害する要因、例えば、取引先から調達している主要部品がその取引先の工場災害で入荷できない事態の代替計画がBCPとなります。BCMは、個々のBCP間の整合性を図り、策定、準備、導入、維持などを行い、PDCAのサイクルで管理する体系を指します。

 策定されたBCPには、企業活動のさまざまな資源(人、もの・設備、原材料など)の代替物、バックアップ設備などを必要とするものがあります。それらの計画を統合的に取りまとめた「リソースバックアップ計画」も、効果的な資源確保の観点から重要です。

 またBCPの策定および導入(BCPで策定された計画を実現するための施設の確保、代替手段の準備など)には、人、もの、資金などのコストが必要です。企業活動の維持のためにどの程度、どの範囲までBCPを策定し、そしてBCMの構築に投資するかは、経営方針・事業戦略として策定されます。

ALT 図1 事業継続管理(BCM)の構成要素

 図1は、BCMの4つの基本要素です。経営方針・事業戦略により対応すべき事象や目標復旧時間(不測の事態が発生し事業活動が停止した場合、事業活動を再開するまでの時間)などの方針が決められ、それに基づくBCPの策定とリソースバックアップ計画の策定、およびそれらの維持管理を実施することでBCMが構築されます。

 これまでの企業活動では、「緊急時対応計画」「コンティンジェンシー・プラン」「危機管理計画」などが存在し、「いざ」という場合にその機能を発揮してきたと思います。これまでのこれらの計画・プランとBCP/BCMが異なる点は、(1)さまざまな企業活動の阻害要因を体系的に整理し、その事態が発生した場合の影響度を分析して対応策(BCP)を策定する(2)策定した対応策を、社内外の環境の変化、重要性の変化に対応して維持、管理していく、の2点です。1990年代後半に、情報システムにおける正常な日付管理方法に対する危惧から「西暦2000年問題」がいわれ、多くの企業が対応しました。この2000年問題への対応は、特定項目・事象に対してBCPを策定したものといえるでしょう。

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