ジャスト・イン・タイム(じゃすと・いん・たいむ)情報マネジメント用語辞典

just-in-time / JIT / ジット

» 2006年10月30日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 製造業における部材調達・製品生産に関する思想で、「必要なものを、必要なときに、必要な数量だけ」調達・生産するという考え方。トヨタ生産方式を構成する2本柱の1つ。

 生産の工程において部材の不足・欠品は作業の停滞を意味し、計画どおりの生産が行えないのはもちろん、待ち時間の間は設備や工員が遊休化するというムダが生じる。逆に余剰に仕掛品を持つと保管コストが掛かるうえに、在庫資産を眠らせておくことになり投資効率の面でムダが生じる。そこで、生産の各工程が作業を行うタイミングに合わせて、必要なものだけが到着するようにして使い切ってしまえば、最も効率的だ。こうした考え方がジャスト・イン・タイムである。

 ヘンリー・フォード(Henry Ford)の自伝「My Life and Work」(1922年)に同様の考え方が示されていると主張する向きもあるが、通説ではトヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎が唱えたものとされる。豊田喜一郎は同社(当時は豊田自動織機製作所 自動車部)が本格生産に入ろうとしていた1936年ごろ、工場の壁に「必要なものを、必要なときに、必要な数だけつくる」と書いた紙を貼り出し、部品業者から1日に加工する分だけを毎朝納入させるよう指示した。ジャスト・イン・タイムという言葉を使い始めるのは1938年ごろからのようである。

 この活動は戦争激化のため一時中断し、社長となっていた豊田喜一郎も戦後の労働争議で辞任、後に急逝するが、その遺志を継いだ大野耐一らがかんばんを使ってより高度な仕組みとして具現化、1970年ごろにはトヨタ生産システムとして体系化された。

 以後、ジャスト・イン・タイムの考え方は製造業以外の分野でも在庫削減や作り過ぎ防止、リードタイム短縮の手段として注目されるようになった。海外でもJITで通用する。最近ではソフトウェア開発などにも応用されるようになっている。

参考文献

▼『トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして』 大野耐一=著/ダイヤモンド社/1978月5月

▼『ジャストインタイム』 小宮山洋子=著/青英舎/1989年5月

▼『寡黙な技術の帝王 豊田英二語録』 ソニー・マガジンズビジネスブック編集部=編/ソニー・マガジンズ/1996年3月

▼『豊田喜一郎伝』 和田一夫、由井常彦=著/トヨタ自動車歴史文化部=企画・編纂/名古屋大学出版会/2002年3月


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