連載
» 2006年11月09日 12時00分 UPDATE

情報活用の新・お作法(1):いま、求められる新たな「情報作法」 (1/2)

この10年でオフィスにおけるITの状況は、大きく変わった。それに対してユーザーの情報に対する扱い方・考え方は変わっていない。解決のカギは、かつてオフィスにあった“仕事のお作法”をIT時代に合わせて再生することにある。この連載では「読み書きパソコン」の時代に求められるオフィスワークの“新・お作法”について解説する。

[村田聡一郎,リアルコム]

本稿は、リアルコムが発行するホワイトペーパー「VISION」の『情報活用の「新・お作法」がワークスタイルを革新する』に加筆・修正を加えたものを、許可を得て転載したものです。



放置されてきたIT化の弊害

 この10年で、オフィスの風景はすっかり変わった。

 PCが1人1台ずつ支給され、派遣社員から役員まで、全員の机上にモニタが鎮座している。それぞれのPCは完全にネットワーク化され、われわれが物理的にはどこにあるのか知らない「サーバ」なるものとデータをやりとりしている。あらゆる業務連絡が電子メールで行われ、メールアドレスの記載がない名刺もほとんど見掛けなくなった。しかし振り返ってみると、新卒社員の採用活動で「当社はPCは1人1台環境です!」などとうたっていたのは、ほんの7〜8年前のことだ。まさに隔世の感がある。

 急速に進んだオフィスのIT化は、オフィスワーカーの生産性向上に大きく貢献した。クリック1つでどんな情報にでもアクセスできるようになったし、キーワード検索で求める情報が一発で手に入ることも多く、とても便利になった実感もある。しかし、急激なIT化による弊害はないのだろうか?

 いま、下記のような問題に悩まされている企業が多い。御社ではこのチェックリストの9項目のうち、いくつ当てはまるだろうか。

  • 「ナレッジマネジメント」「情報共有」の掛け声の下、イントラネット上に膨大な情報が蓄積されてきているが、実際にはほとんど活用されていない
  • ファイルサーバが「ファイルの墓場」と化しており、もはや誰も管理できない/していない
  • 個人PCやファイルサーバに、顧客情報・新製品情報などの「機密情報」が一般情報と一緒にされて保管されている。機密の管理は社員個々人の意識任せになっている
  • 社内資料なのに、必要以上の時間と手間を掛けてきれいなものを作る傾向がある
  • 資料の「使い回し」が効果的に行われず、似たような提案書や資料を一から作っている社員が多い
  • メールの量が増加の一途をたどっており、業務に支障を来している
  • 細かいPCの操作技術を知らない社員が多く、作業効率が上がらない。例えば[Ctrl]+[C]でコピー、[Ctrl]+[V]でペーストできると知らず、マウス・クリックを繰り返している社員が目に付く
  • PCの前に座っていることが仕事と勘違いしている社員が増えているように感じる。ITを使いこなしている社員が必ずしも業績が良いとは限らないのだが
  • 相変わらず会議が多い。1日の半分が会議に費やされている

図表1 情報関連業務 9つのチェックリスト

 これらの問題は、最後の「会議」を除くといずれも10年前には存在しなかった。つまり、オフィスワークのIT化に伴って発生してきた「IT化の弊害」である。そして、会議ともども「現在まで有効な対策がほとんど取られないままに放置されている問題」という点で共通している。

紙の時代からPCの時代へ

 振り返ってみると、「紙の時代」にはどの企業にも年数を経て蓄積された“仕事のお作法”があった。

 例えば、「情報取扱規程」「文書作成の手引」「書類の整理・更新・廃棄ルール」「社内連絡ガイドライン」といったものだ。公式に制定され印刷・配布されたものもあれば、職場内での「暗黙のルール」として通用していたものもあるが、職場に配属された新人は先輩からこれを真っ先にたたき込まれ、誰もがこの“仕事のお作法”にのっとって仕事をしていた。

 しかしこの10年、急激に進んだオフィスワークのIT化で、仕事の進め方は劇的に変わった。紙はWordとExcelに、書架はファイルサーバに、通達文書は電子メールになった。ところが“仕事のお作法”がこのPCの時代にまだ対応できておらず、現在のオフィスはいわば無法地帯となってしまっているのだ。

アクション 過去(「紙」の時代)   現在(「PC」の時代)
情報を探す
「情報」とはイコール「紙の束」のことであり、それを使うにはしかるべき部署に頼んでもらってくる必要があった
→
「データベース」がイントラネット上に作られ、いつでもアクセスできる状態にはなったが、その中の情報が最新かどうか信頼できない
情報(文書)を作る
完成した文書には何らかの印鑑が押されるため、作成途中の「仕掛り」との違いが明確であった
→
バージョン管理は作成者任せ。同じような名前のファイルが複数あると、作成日を頼りに「これが最終だろう」と判断するしかない
 
資料は手書きかワープロ打ち、図表も手書きだったので、必要以上の飾りを作ることはあまりできなかった
→
カラフルな色やイラストが簡単に使えるようになったため、社内資料でも必要以上に凝って時間をかけ過ぎており、しかもそれを「仕事」だと勘違いしている社員が多い
情報(書類)を整理・保管する
ファイリングルールがきちんと決まっており、分類体系や色分けなど、「後から誰が見ても分かりやすいように保存する」という意識があった
→
ファイリング体系もネーミングもバージョン管理も、個人任せになってしまっている
 
年末ごとに課の全員で大掃除を行って不要な書類を捨て、書架スペースをメンテナンスしていた
→
ファイルサーバは目に見えないので「大掃除」の習慣もなく、「ファイルの墓場」となってしまっている
情報を送る
通信(特に国際通信)はコスト高だったため、紙文書(社内便)、郵便、電話、ファクス、テレックスなどの使い分けが明確に定められていた
→
電子メールは事実上「無料・無制限」となったため、何でもメールで送る傾向がある
 
通信料削減のため、簡略化が常に奨励され、「タイトル」「本文」などの定型フォーマットが決められていた
→
電子メールでは簡略化の縛りがなくなり、かつ本数が激増したため、タイトル・本文等も適当に書いていることが多い
情報を扱う
会社の書類を万一電車内に置き忘れた場合、被害はその書類のみで済んだ
→
ノートPCを紛失した場合、HDDに入っているデータすべてと、そのPCからアクセスできる社内外のデータすべてが危険にさらされる
 
オフィスワーカーにはコンピュータの知識は必要なかった(情報システム部がすべて管理していた)
→
PC利用スキルが業務生産性に直結するようになっており、セキュリティ関連の知識・意識を含めたいわゆる「ITリテラシ」がオフィスワーカーの必須スキルとなっている
図表2 オフィスのお作法

 オフィスワークのIT化に伴い、オフィスワーカーにはITリテラシが必須スキルとして求められるようになってきた。いまや「読み書きソロバン」ならぬ「読み書きパソコン」の時代なのである。しかしそれを理解して、社員にPC操作の技術を基本からきちんと習得させている企業はまだ多くない。最近のPCはクリックだけでほとんど操作でき、見よう見まねでも何とかなってしまうので、余計に本人任せの傾向が強いのだ。

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