センター・オブ・エクセレンス(せんたー・おぶ・えくせれんす)情報システム用語事典

CoE / center of excellence / centre of excellence

» 2006年11月15日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 先端科学やハイテクなどにおいて、特定分野に集中して高度な研究・開発活動を行い、人材および産業の創出・育成の中核となる研究拠点のこと。企業や企業グループなどで部門横断的取り組みを継続して行う際に、その活動にかかわる人材やノウハウ、ツールなどを結集した組織やグループをいう場合もある。

 一般に産学連携による産業政策に関する文脈で用いられる用語で、最高峰の研究指導者、充実した研究環境・設備・研究支援体制などを有し、世界の研究者を惹き付ける魅力のある研究機関は、後進の研究者・技術者を育成して、その研究分野の人材供給源になるとともに、技術や知識のスピルオーバー(波及効果)によって周辺でイノベーションを引き起こし、新たな事業や産業を生み出す原動力となることが期待される。このような研究機関自体、ないしはその役割のことを「センター・オブ・エクセレンス」という。日本語では、「中核的研究拠点」「卓越した研究拠点」などと訳される。

 その原型は、米国カリフォルニア州のスタンフォード大学にある。同大学の卒業生で、1946年に工学部長として戻ってきたフレデリック・E・ターマン(Frederick Emmons Terman)は当時、卒業生の多くが東海岸へ流出してしまうことを憂い、大学の地位を高める施策を開始する。

 ターマンは手始めに全米から著名な教授・スタッフ陣を招聘(しょうへい)し、大学院課程の充実を図った。結果、1950年ごろには同大学電気工学科は、全米屈指の学究拠点として知られるようになる。続く1951年、大学の広大な敷地の一部にインダストリアルパーク(後にスタンフォード・リサーチパークと改称)を建設して、電子機器関係の企業・研究所を選択的に誘致した。

 このときのターマンの行動原理は、「Steeples of excellence」という言葉で表されている。Steepleとは尖塔のことで、この場合は各研究分野におけるリーダー、すなわち世界的にも数少ないエキスパートのことである。トップレベルの研究者を結集することによって優秀な学生が集まり、その人材と技術を求めて企業が集まると、ターマンは考えたのである。

 これら施策によってスタンフォード大学周辺には、後にシリコンバレーと呼ばれる産業クラスターが出現する。これに続いて、米国ノースキャロライナ・リサーチトライアングルパーク(1959年設立)、英国ケンブリッジ・サイエンスパーク(1971年設立)などの成功もあって、1980年代からは各国の政府・自治体が産学連携による産業育成策を積極的に行うようになった。日本ではテクノポリス政策(1983〜1998年)、頭脳立地政策(1988〜1998年)、産業クラスター計画(2001年〜)が知られる。この流れの中で、米国ユタ州やカナダなどで大学・研究機関の支援制度に「センター・オブ・エクセレンス」「ネットワークセンター・オブ・エクセレンス」などの名称を冠している。

 なお、わが国では大学教育振興政策として、文部科学省が2002年から「21世紀COEプログラム」を実施している。これは大学院レベルで各分野の最高水準の教育・研究・創造的人材育成拠点(センター・オブ・エクセレンス)を目指す国公私立大学に、年間1〜5億円の補助金を交付して重点支援を行うことで、国際競争力のある個性ある大学作りを支援する政策である。同プログラムの期間は5年間で、2006年に終了するが、その基本的な考え方を継承する「グローバルCOEプログラム」が2007年度予算(平成19年度予算)の文部科学省概算要求に盛り込まれている。

 こうした政策的な活動のほかに、企業や公共団体の組織的能力・成熟度などの向上を目指して、組織内のリソースを集約するために設置される機関や部署をセンター・オブ・エクセレンスと呼ぶことがある。例えば英国では公共部門におけるプロジェクト管理能力を向上するために、中央政府の各省内にセンター・オブ・エクセレンスの設置が義務付けられている。

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