電源条件からのデータセンター選び間違いだらけのデータセンター選択(5)(1/2 ページ)

電源がなければ、サーバもネットワーク機器も動かない。従ってデータセンター選びでは、各データセンターにおける電源供給環境の違いに留意する必要がある。今回は、データセンター選択の際に考慮すべき電源条件について解説する。

» 2006年11月25日 12時00分 公開
[近藤 邦昭,まほろば工房]

 今回は、データセンターで利用する電源に関連するお話をしていきたいと思います。

 電源はいうまでもなくデータセンターに設置する機器を動かすために必要なものです。しかし、一口に電源といってもいくつかの種類があるのをご存知でしょうか? 電源の利用方法やデータセンターで供給される電源設備に関して話を進める前に、電源の種類についてお話しておきましょう。

電源の種類を復習する

 電源には大きく分けて、「直流」と「交流」があるのはご存知だと思います。

 「直流」でイメージするのは、バッテリーや乾電池、DCアダプタなどから供給される電源で、+と−の極が固定されているものです。一方、「交流」は絶え間なく+と−の極が入れ替わっているもので、一般的に家庭やオフィスの「コンセント」から供給されるような電源です。

 電源では供給される電圧にもいくつか種類があります。下は数ミリボルトから上は数万ボルトまでさまざまですが、日本においてコンピュータやネットワーク機器で利用されるのは、48ボルト、100ボルト、200ボルトの3種類です。電圧は国によって異なるため、日本用に出荷された機器以外の場合は注意が必要です。たとえば、アメリカ国内では、一般家庭に出されている電圧は115ボルトと若干日本より高いため、日本国内用の機器を米国で利用した場合に機器が故障する可能性があります。

 さて、直流あるいは交流に、電圧が組み合わさって供給される電源となるわけですが、データセンターで多く利用されるものは、直流48ボルト(DC48V)、交流100ボルト(AC100V)、交流200ボルト(AC200V)の3種類です。それぞれ、主たる用途が若干異なりますので、以下にまとめておきます。

DC48V

 主に電話交換機などの電源として利用されている電源です。前回もお話ししたように電話会社は「キャリア」と呼ばれているわけですが、この電話会社で利用されるような信頼性が非常に高い機器は「キャリアクラス機器」と呼ばれます。このようなキャリアクラス機器やキャリアで使われることを想定した機器の場合、DC48Vで機器が駆動するように作られています。一部のネットワーク機器では、このような電源条件でも動くように、DC48V用の電源モジュールを別に用意しています。

 ちなみに、皆さんのご家庭に引かれている電話にも、電話線からDC48Vの電源が供給されているため、多くの場合DCアダプタを接続しなくとも電話としての機能だけは動作するように作られています(コードレス電話機は、無線電波を飛ばす必要があるため、駆動できません)。

AC100V

 主に家庭やオフィス用の電源として利用されている電源です。現在のデータセンターで利用されているコンピュータの多くはAC100Vを利用するように設計されています。ネットワーク機器もコンピュータと同一の環境で利用されるため、多くの機器がAC100Vの電源で駆動するように設計されています。

AC200V

 主に大型機器に供給する電源として利用されているもので、一部でエアコン用や電気コンロ用として一般家庭でも供給されています。データセンターに設置される機器でも、大型の機器であれば、機器を駆動するのに非常に大きな力が必要なため、AC200Vで駆動するように設計されているものがあります。

 直流と交流、電圧の高低で得手不得手があるため、必要に応じてこのようにいくつかの種類が使い分けられています。

 たとえば、コンピュータに使われている多くの電子デバイスは、すべて直流で駆動するように作られています。このため、本来であれば、このような機器に供給する電源は直流であることが望ましいわけですが、直流電源は、長い距離を引き回すと減衰が大きくなるため、データセンター内をぐるぐると引き回すにはちょっと気を使う必要があります。

 また、電圧の違いは駆動する機器が必要する力との関係によって変わります。例えば、AC100Vで30Aの電流を必要とする機器の場合、その仕事量はW(ワット)で表現されますが、単純には100V×30A=300W(後述しますが、本来はこれに力率という値を掛け算する必要があります)となりますが、同じ仕事量をAC200Vで得る場合、300W=200V×15Aと、電流は半分の15Aになります。

 ただし、データセンターでは、AC100Vのみが供給されている場合がほとんどです。あまり気にする必要はありませんが、ちょっと大きめの機器や電話局で利用するような特殊な機器を購入するような場合は、その機器が必要とする電源の種類を確認し、あらかじめデータセンターに確認する必要があります。

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