会計ソフトの選び方 [メジャー製品編]会計ソフト大研究(1)(2/2 ページ)

» 2007年03月29日 12時00分 公開
[松波 竜太(浦和税理士法人),@IT]
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拡張性

ネットワーク(LAN)対応

 ネットワーク対応というのは、LANを使って1つの会社データに対して、複数のパソコンから同時に入力できる機能をいいます。3製品ともネットワーク対応版をそろえていますが、クライアント数(パソコン数)をどこまで増やせるか、すなわち想定している拡張の規模に違いがあります。これは価格にも表れます。

3ライセンス/3ユーザー(DBMS非搭載)版の価格
勘定奉行21Ver.IV LANPACK BroadBand Edition(type A) 92万4000円
PCA会計8 V.2 for SQL 60万9000円
弥生会計 07 ネットワーク for SQL 50万4000円

 上の表からは読み取りにくいですが、勘定奉行/PCA会計は大規模ネットワーク指向です。サーバの処理能力によりますが、両ソフトとも理論的には100以上のクライアントを設定することが可能です。また、VPNなどを介して遠隔地にある拠点同士を接続するソリューションが用意されています。

■関連ソフトとの連携

 今回取り上げた会計ソフトは、関連する業務ソフト(販売・購買・給与など)が発売されており、それぞれが会計ソフトを中心に連携できるように作られています。つまり、販売・購買・給与の処理結果を、そのまま財務会計のデータとして使用できるわけです。

 最も完成度が高いのが、PCA会計です。PCA会計では会計・給与・商魂(販売管理)・商管(在庫管理)でデータベースを共有する方式となっています。そのほかのソフトでは、業務ソフト側でテキストファイルを作成して、会計ソフトがそれを読み込む方式です。PCA会計の方法はERPパッケージによく見られる設計で、業務ソフトでの処理がそのまま共通データベースに格納され、会計側にもリニアに反映されます。

 これに対して勘定奉行と弥生会計は、仕訳データ作成やデータ読込機能を使って、テキストデータを介して仕訳データを生成します。この場合、データ変換作業を行うまで関連ソフトでの結果は反映しないという欠点があります。また、元データに変更があった際に、変更のあった伝票をいちいちチェックしながら変更を手修正しなくてはなりません。従って、請求管理ソフトで売上の単価変更などが請求後に発生した場合に大変な思いをすることになります。これを回避するには、「元データの修正をしてはいけない」といった人的ルールによる以外に方法がありません(ユーザーの権限設定で、伝票修正する人を限定することは可能です)。

 なお、勘定奉行については伝票に「他ソフト作成」という属性が付くので、期間を指定して、該当伝票を一括削除した後、再度、元ソフトから伝票を生成し直すということが可能です。また、ボタン1つで「元ソフトでの伝票作成→受入先ソフトでの受入」が可能なので、ある程度人的ルールが確立されていれば、ERPのような感覚で操作できるようです。

■カスタマイズへの対応

 会計ソフトという視点では、ソフトウェアのカスタマイズが問題になることはほとんどありません。しかし、会計システムと外部システムを連携させて、業務フローの変更を行いたいといったニーズが皆無とはいえません。カスタマイズへの対応は、下表のようになっています。

カスタマイズできる 奉行新ERPシリーズ
PCA Dream21
カスタマイズできない 弥生会計

 会計ソフトのメーカーで、最も早くカスタマイズに本格的に取り組み出したのは、OBCの奉行新ERPシリーズです。ただし、「会計ソフト」というカテゴリの中では高価な製品(カスタマイズ作業込みで100万円を超えてしまう可能性が高いでしょう)ですので、熟慮が必要です。もっとも、一般的なERP/統合業務ソフトと比較した場合は、格安の部類に入ります(具体的な金額は、どのようなシステムを構築するかによって大きく変わります)。奉行シリーズからステップアップするには、適したソリューションといえるでしょう。

 奉行新ERPは勘定奉行の1モデルという位置付けですが、上の表に挙げた「PCA Dream21」は、PCA会計とは異なるシステムアーキテクチャを持つ別製品です。ERPにカテゴライズされるソフトウェアで、財務会計以外にさまざまなモジュール(業務処理機能)が用意されています。Webサービスによる連携が可能なので、外部システムがWebサービスのインターフェイスを持っていれば、極めて柔軟にシステム連携を行うことが可能です。

 私見ながら、現在は安定性やユーザー数の多さなどの面から奉行シリーズがお勧めです。

著者紹介

▼松波 竜太(まつなみ りょうた)

税理士(関東信越税理士会所属)

神奈川大学経済学部卒。大手OA機器商社・会計事務所勤務を経て、現在 浦和税理士法人 代表社員(埼玉県さいたま市)。本業の決算、税務申告・相談を行う傍ら、会計データの統計解析法を研究する。帰納的アプローチにより企業の経営課題を分析し、成果をクライアントである中小企業にフィードバックしている。「多くの中小企業がデータもツールもそろっているのに、それを分析して経営に生かす方法を知らないのは残念。中小企業はもっと生産効率を高めていける」と考えている。「お役立ち会計事務所全国100選 2004年度版(三和書籍、実務経営サービス編)」に選出される。

ブログ:http://www.maznami.biz/


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