戦略経営(せんりゃくけいえい)情報システム用語事典

Ansoff's Strategic management / 戦略的経営

» 2007年05月07日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 自社のあるべき姿(目的・目標)に到達するため、全体(全社)と部分(部門など)のそれぞれにおいて、その組織能力が経営システムを通じて戦略を作成し、経営プロセスの中でその戦略を実現していくというマネジメント・フレームワークのこと。

 基本的には、(1)企業は理念に基づき、戦略的目的・目標を決める、(2)競合他社や経済的社会的政治的状況、新しい技術の登場などの外部環境を評価し、同時に自社が持つ経営資源の強み/弱みなどの内部環境を分析する、(3)環境に応じた戦略を策定・実施する、(4)定期的に戦略の再評価を行う――というステップからなる。

 もともとは米国の応用数学者・経営学者 H・イゴール・アンゾフ(Harry Igor Ansoff)が、世界のいくつかの有力企業で実際に使われていた各種の意思決定手法を取り入れて体系化したもの。これは(大規模な)企業の意思決定を階層モデルでとらえるもので、最上位に戦略的意思決定を置くことを提唱する。こうした考え方はアンゾフ以後、広く拡大・普及しため、「戦略経営」という語は企業の戦略的決定問題を表す一般名詞として使われることもある。

 1950年代半ばから米国では、市場の成熟や技術の革新が加速化・累積化するなどして、企業は予期しない環境の変化に直面するようになっていた。これは日常業務(競争経営)における意思決定とは異なる、高度な意思決定が必要であることを意味していた。アンゾフは『Corporate Strategy』(1965年)を著し、「strategy」(戦略)という用語を用いてハイレベルの計画の必要性を主張、その策定方法の定式化を試みた。

 続けてアンゾフは戦略策定からその実行にまで範囲を拡張、これを1973年に米国テネシー州ナッシュビルで開催された国際会議を契機に「戦略経営」として体系化、著書『Strategic Management』(1979年)で発表した。さらに1984年の著書『Implanting Strategic Management』では、企業を取り巻く環境の変化の度合いとスピードは業界によって異なり、求められる組織能力やシステムはそれに応じて変わってくるとして、5段階からなる「乱気流水準」の考え方を取り入れた。

 これらの拡張によってアンゾフの戦略経営は、「自己/自社革新と自己/自社実現を融合するマネジメント」(戦略経営協会による定義)に発展している。

参考文献

▼『企業戦略論』 H・I・アンゾフ=著/広田寿亮=訳/産業能率大学出版部/1969年(『Corporate Storategy』の邦訳)

▼『戦略経営論』 H・I・アンゾフ=著/中村元一=訳/産業能率大学出版部/1980年1月(『Strategic Management』の邦訳)

▼『アンゾフ戦略経営論〈新訳〉』 H・イゴール・アンゾフ=著/田中英之、青木孝一、崔大竜=訳/中村元一=監訳/中央経済社/2007年7月(『Strategic Management』の邦版新訳)

▼『「戦略経営」の実践原理――21世紀企業の経営バイブル』 H・I・アンゾフ=著/中村元一、黒田哲、崔大龍=監訳/ダイヤモンド社/1994年(『Implanting Strategic Management. second edition』の邦訳)

▼『43の図表でわかる「戦略経営」』 中村元一、崔大龍、嶋田淑之=著/毎日コミュニケーションズ/2004年


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